18歳未満の携帯電話契約者に対して有害サイトへのアクセスを制限するフィルタリングサービスが始まっています。親権者が「不要」と申し出ない限り、どのキャリアでも青少年の携帯電話にはフィルタリングサービスが設定されてしまいます。
本コラムでも何度も取り上げてきた話題ですが、このフィルタリングサービスには様々な問題がありました。例えば塾やスポーツクラブのサイト、友達のサイトやブログ、政党のサイトなど個人が有害ではないと判断しているサイトまで閲覧できなくなります。今のところ個人の判断でサイトの閲覧有無を選択できません。
フィルタリングサービスには2方式あり、キャリアが選択した公式サイトのみ閲覧可能のホワイトリスト方式とフィルタリング会社のカテゴリー基準によって閲覧サイトが決まるブラックリスト方式があります。特にホワイトリスト方式では一般サイトが全く閲覧できません。
これら政府や通信キャリアのフィルタリング強化に対して業界団体は、閲覧制限をされるべきサイトとそれ以外のサイトを区別する基準を自ら構築しモバイルインターネットサービスの利便性を損なうことのないように第三者機関を設立しました。この団体がモバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)です。
EMAは07年12月末に設立準備委員会が立ち上がり、その後わずか4カ月で法人化しました。それなので実効性があるのかどうか、国、通信キャリアが注目していました。しかし法人化された後も、コミュニティーサイト運用管理体制認定制度、特定分類アクセス制限方式制限対象カテゴリー選択基準、啓発・教育プログラムなど、多岐に渡る部会を設置し、献身的に活動しています。
特に7月にはフィルタリングサービス下では閲覧できないコミュニティーサイトを対象に審査申請受付を開始し、8月末に1回目の健全サイトを認定しました。
認定されたのは、「大集合NEO」「gumi」「GREE」「MySpace モバイル」「魔法のi らんど」の5サイトです。さらに9月16日に「en 高校生」「モバゲータウン」の2サイトが認定されました。
認定されるには22の要求項目をクリアしなければなりません。認定後も十分なサイト運用管理体制が維持されているか否かについて定期的に監視を実施し、注意・警告・認定取消を含む適切な対処がとられるようです。
これらEMAの敏速な活動が功を奏したのでしょうか。通信キャリアは09年1月以降を目途にフィルタリングサービスの方式をブラックリスト方式に一本化すると発表しました。またEMAが認定したサイトについても09年1月以降、閲覧可能にするとのことです。
何かと社会に流されてしまいそうな世の中で、国や通信キャリアに頼らず、自らの手で健全化を図り、モバイルコンテンツ産業を推進する取組みには頭が下がります。
こういう地道な活動が、必ずやモバイルコンテンツ産業全体の発展に繋がることでしょう。
◇ライタプロフィール
戸口功一(とぐち こういち)
1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発・綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より主席研究員。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆、編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。
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