億万長者投資家のCarl Icahn氏は、ほぼ2週間前に、米Yahooの現取締会役員の交代を要求し、新たな取締会役員候補を送り込む計画を明らかにしたが、その後は比較的平静を保っている。
物言う株主であり、企業合併の立役者でもあるIcahn氏は、もはやMicrosoftが、Yahooの完全買収を目指して交渉を再開することはないとの確信を抱き始めているのであろうか?この件で投資家は懸念を抱くべきであろうか?
機関投資家向けの影響力ある投資顧問会社のRiskMetrics Groupで、M&A調査担当ディレクターであるChris Young氏は「もしYahooが(年次株主)総会を開く2〜3週間前になっても、Icahn氏がなんら過激なアクションを起こそうとしないならば、株主は事の成り行きをいぶかしく思うようになるだろう」と語った。
Icahn氏は、Microsoftが一方的に1株当たり33ドルへとYahooの買収提示額を引き上げたものの、それを撤回するに至った直後に、Yahooの委任状争奪戦に関する詳細を明らかにしたが、現在はトーンダウンしているようであると、この件に詳しい関係者は伝えている。いまやYahooは、当初は7月3日に予定されていた株主総会を、7月下旬の別の日に延期することを発表した。
投資顧問会社のOkapi Partnersの最高経営責任者(CEO)であるBruce Goldfarb氏は「年次株主総会の日付が決定していない現在、Icahn氏としては、特に行動を起こすべき理由がない。すでにIcahn氏は、自分の要求をかなり明白にしており、Yahooの出方を静観する十分の時間がある」と述べている。
Icahn氏が委任状争奪戦への突入を明らかにした直後、MicrosoftとYahooは交渉を再開した。しかしながら、MicrosoftのCEOのSteve Ballmer氏は、現時点でもMicrosoftが、Yahooに「再度買収額を提示することはない」と語っている。
米国時間5月27日に行われた、第6回「D: All Things Digital」カンファレンスのプレゼンテーションの席上で、Ballmer氏は「3カ月に渡る交渉の末、買収提示額は取り消された。提示額と要求額の間には隔たりがあったのだ。われわれとしては、交渉を取りまとめられると考えていたのだが、交渉の席を立つことを選んでしまった。現在は他のアイデアを持ち出して、交渉を進めるに至っているが、われわれはYahooに再度買収額を提示することはしていない。現在の交渉の内容に関しては、コメントを控えたい」と述べた。
もしMicrosoftが、投資筋に対して、7月中旬までにYahoo買収の意思を示さないのであれば、Icahn氏が提示した10名の取締会役員候補全員をYahooの現取締役と交代させる案は、縮小される可能性もあると、Young氏は予測する。
「すべての取締会役員候補を送り込むことを断念することはないと思うが、取締役会で小規模の代表者獲得を目指す路線へと、Icahn氏の案は縮小される可能性がある」と、Young氏は語っている。
Yahooは、委任状争奪戦を前に米証券取引委員会(SEC)へと提出した資料の中で、9名から成る現在の取締会役員を支持し、Icahn氏の提唱する取締会役員候補は無視するように、投資家らに呼びかけている。
年金ファンド、ミューチュアルファンド、アセットマネージャー向けに大規模投資顧問業を営む複数の会社関係者によれば、いまだIcahn氏は、予備段階の委任状争奪戦を正式に開始し、投資顧問会社向けの派手なプレゼンテーションを実施する正確な日程も定めていないという。
投資顧問会社のGlass Lewis & Co.で、M&Aおよび定量分折担当マネージングディレクターであるWarren Chen氏は「いまだにIcahn氏が、(投資顧問会社との)会合の日付を設定していないという現状は、それほど憂慮すべき事態ではない。もしIcahn氏が、株主総会の日付の2〜3週間前になっても何ら行動を起こさないならば、その時に初めて、われわれのほうから意向を尋ねることになるだろう」と述べた。
Icahn氏は、取締会役員候補を送り込むことを明らかにした時点で、すでに5900万株のYahoo株式とオプションを保有しており、米連邦取引委員会(FTC)に対して、さらに追加で25億ドル相当のYahoo株式の取得を許可するように求めていることも公表した。
Chen氏とYoung氏はともに、まだ7月末までにおよそ2カ月という時間があることを考えると、Icahn氏が現時点で、委任状争奪戦を総力戦とも呼ぶべき段階へと持ち込んではいないのも、それほど驚くべきことではないとコメントしている。
「通常は株主総会の1カ月前に、数多くの抗議アクションが展開されることになる」と、Chen氏は語っている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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