ビジネスモデルやモバイル対応を模索する国内動画検索サービスのプレーヤーたち

 動画検索サービスは今後、技術、そしてビジネスとしてどのように進化していくのか。楽しいTVの未来を考える研究会が5月20日に開催したイベント「テレビとネットの近未来カンファレンス」。第11回目となる同イベントは「動画検索ビジネス最前線!〜ネット動画の検索に挑むベンチャー、その展望と戦略〜」をテーマに開催された。カンファレンスで使われた資料はサイトで公開されている。

神田敏晶氏 KandaNewsNetwork代表の神田敏晶氏

 イベントのモデレーターは、KandaNewsNetwork代表の神田敏晶氏とメタキャスト取締役チーフ・エバンジェリストでデータセクション代表取締役CEOの橋本大也氏が担当した。そしてオモロ動画検索視聴サービス「サグールテレビ」を提供するチームラボ代表取締役の猪子寿之氏、動画検索エンジン「Fooooo」を提供するバンク・オブ・イノベーション取締役の富島寛氏、みんなで作る動画検索「SAGURI」を提供するメタキャストの取締役チーフ・ビジョナリーである井上大輔氏が登壇した。

 まずは、橋本氏がいくつかの動画サイトや、注目している動画関連サービスを紹介した。動画投稿サイトである「iBeatYou」は、投稿合戦によっておもしろい動画が集まるサイトだが、タレント発掘にも活用されており、次世代プロダクションの姿が見える。

橋本大也氏 メタキャスト取締役チーフ・エバンジェリストでデータセクション代表取締役CEOの橋本大也氏

 また、仮想世界サービス「Second Life」内でメンバーを集めて役割分担し、CG動画を制作する「マシニマ」が一部で注目を集めていることなども紹介された。さらに、映像の動きをマウスでコントロールできるFlashコンテンツ「Neon Bible interactive video」など、映像を使ったインタラクティブコンテンツが増えてきたことなどが語られた。そのほか低年齢層向けの動画共有サイト「TOTLOL」が人気を集めるといった動向も紹介した。

 一方神田氏は、動画をクリックすることで広告を表示する「VideoClix」を紹介。動画での広告ビジネスの新潮流を紹介したほか、YouTubeの動画統計ツール「YouTube Insight」によってユーザー数をはじめとした各種の統計がわかるようになったことなどが紹介された。

 続けて、動画検索サービスを提供する3社がそれぞれプレゼンテーションを実施した。チームラボのサグールテレビは、経産省の情報大航海プロジェクトの実証実験サイトだ。Flashのインターフェース上では、サムネイル表示された検索結果をクリックするだけで動画を再生できるほか、プレイリストを利用した連続再生に対応する。

 また、検索キーワードをもとに、動画のレコメンドをするほか、各国語での検索結果を確認することも可能だ。さまざまな機能が盛り込まれているが、すべてFlashのフレームワーク上で作成されており、修正が容易だという。フレームワークはオープンにしているため「今後はユーザーがアルゴリズムを追加できるようにしていきたい」(猪子氏)という。

 バンク・オブ・イノベーションの提供するFoooooは、世界120の動画サイトを横断検索するサービスで、1億3000万のインデックスがある。最大の特長はサムネイル上で動画の一部を再生する「動くサムネイル」を採用していることになる。これによりサーバ負荷は大きくなるが、ユーザーに好評だっただめ続けている。また、Fooooは12カ国語のインターフェースを用意しているが、利用の割合としては日本語圏が40%、フランス語圏が10%、英語圏が5%になっているという。

 メタキャストは、もともとはテレビ番組のメタデータをテキストとして提供することからサービスが始まり、それが動画管理ソフト「TAGIRI」、動画ダウンローダー「TAGIRIツールバー」へと発展したのだという。ツールバーは年間110万件ダウンロードされており、そのログを集めている。この蓄積したログの情報をつかってSAGURIのサービスが開始されたという。

 ツールバーの利用ログをもとにしているため、動画検索のインデックス生成にクローラーを使用していない。どんな動画が人気なのかは、ユーザーが教えてくれるというわけだ。5サイト約700万の動画を検索対象としている。今後はユーザーのコメントやタグも検索対象にしたり、Twitterとの連携も考えているという。

 イベント後半には、登壇者らによるフリーディスカッションが開催された。中国では、もはやテレビよりもネットで動画を見る時間の方が長い。日本ではまだまだテレビが主流だが、逆に言えば動画の市場はこれからともいえる。その点で「見たいものを探せる」動画検索サービスは注目されてくる。神田氏は「ぼーっと見るならサグールテレビ、海外のものを見るならFooooo、流行のものを見るならSAGURIと、個性があっていいのでは」と語る。

 また、ビジネスモデルの可能性としては、「検索連動をつけていたが、クリック率は悪かった。バナーよりはいいが、動画検索の場合は購買につながるキーワードがほとんどなかった」(富島氏)と、検索連動型広告の難しさが語られた。また、著作権については、あくまで検索サービスなので「(権利者や動画投稿サイトとは)立場が違う」という認識を全員が示した。「何をやったら(法的に)アウトなのか、その基準がサイトや動画によって異なり、あいまいであるのが現状」(井上氏)

 携帯電話向けの動画検索サービスについては、「ぜひやりたい」(猪子氏)としながらも、「携帯電話では動画を見る環境がまだ整っておらず、横断検索も難しい」(富島氏)「携帯電話で動画を見続けるということ自体、なかなか定着しないのでは」(橋本氏)といった意見が出た。一方で「これからは携帯電話やパソコンのウェブカメラで動画を撮り、それを身内で見せ合うといった使い方に移行していくかも知れない。Facebookにも動画用のアプリケーションが多いし、Twitterもパーソナル向けの機能取り入れる試みをしてる」(神田氏)という意見も出た。

猪子寿之氏、富島寛氏、井上大輔氏 左からチームラボ代表取締役の猪子寿之氏、バンク・オブ・イノベーション取締役の富島寛氏、メタキャスト取締役チーフ・ビジョナリーの井上大輔氏

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