MicroDisplay、格安リアプロテレビで成功を目指す

文:Erica Ogg(CNET News.com) 翻訳校正:向井朋子、大熊あつ子、福岡洋一2007年04月10日 10時06分

 カリフォルニア州フリーモントに拠点を置く新興企業MicroDisplayは、消費者ができるだけ安い値段で大型テレビを購入したがっている--そしてその大型テレビが現在主流のフラットパネル型でなくても、やはり需要があるだろう--と考え、大きな賭けに出ようとしている。

 MicroDisplayは2007年の夏、「LCOS」(liquid-crystal on silicon)チップを搭載した56インチのリアプロジェクションテレビ(RPTV)の製造を開始する。発売はその数カ月後で、価格は1300〜1500ドルとなる見込みだ。

 LCOSはいわゆるマイクロディスプレイ技術の一種で、シリコンチップを液晶で覆う構造になっている。LCOSチップの反射した光がプロジェクタを通過し、テレビの画面に映像として投射される。MicroDisplayの計画では、「Liquid Fidelity」と名付けた同社独自のLCOSチップをリアプロテレビに搭載し、AkaiやMemorexといったマス市場向けブランドに出荷する予定だ。

 MicroDisplayが採用したチップは、1990年代末にマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちによって開発された。当初の意図は、バーチャルリアリティのゴーグルにこの技術を応用し、軍用として販売するというものだった。しかし、バーチャルリアリティの計画がうまく進まなかったため、MicroDisplayは2001年、テレビの分野に取り組むことを決定した。

 MicroDisplayがRPTV分野に参入したことについて、時代遅れの奇妙な選択、という見方もあるかもしれない。テレビの技術で最も活気があるのは、高精細(HD)フラットパネルディスプレイの分野だ。北米では2006年に小売業者に、前年比136%増となる1720万台のフラットパネルディスプレイが出荷された。一方、北米におけるRPTVの出荷は2006年の240万台がピークで、2007年には190万台に減少すると、DisplaySearchは予測している。

 それでは、なぜこの時期、どういう理由でMicroDisplayはテレビ分野に参入するのだろうか。同社の幹部は、成熟した市場への参入に伴うさまざまな制約を十分に認識しているが、いくつかの要因により、同様に自信も持っていると話す。幹部たちは、金額は明かしていないが3回にわたってベンチャー資金調達に成功しており、RPTVの製造を軌道に乗せるために、次の資金調達でさらに2000万ドルから3000万ドルを獲得したいと考えている。

 MicroDisplayは、同社独自のLCOSチップ、意外なほどすっきりした外観のテレビ、従業員数45人という費用効率の高さ、中国での部品購入とメキシコでの組み立て作業により、既存ブランドよりも安い価格で販売できると考え、成功に賭けたのだ。

 たしかに、いきなり参入するには厳しい市場だ。市場調査会社iSuppliでディスプレイ調査担当バイスプレジデントを務めるPaul Semenza氏は、次のように語る。「フラットパネル型が大画面になって価格も下がったことにより、RPTVの市場全体が、プラズマおよびLCDのフラットパネル型に人気を奪われた形になっている。ともかくもRPTVが有利になる大きなポイントは、比較的安く大画面のテレビが買えるということだ。ところが新しいフラットパネル工場が稼働を始め、フラットパネル型テレビの価格も低下するという現象が起きている」

 しかし、MicroDisplayが第3四半期に発売する予定の56インチテレビの価格はおよそ1500ドルで、同程度のサイズのLCDテレビ(5496ドル)、プラスマテレビ(3298ドル)の平均価格を大幅に下回る。

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