連邦判事が米国時間8月17日、ブッシュ政権が認可した令状なしのインターネットおよび電話盗聴プログラムは米国憲法に違反しており、ただちに中止されるべきものだとする裁定を下した。
デトロイト連邦地方裁判所のAnna Diggs Taylor判事が下した今回の判決は、一時は秘匿されていた国家安全保障局(NSA)のプログラムに対し、初めて否定的な見解を示すものとなった。ブッシュ政権に対し訴訟を提起していたのはAmerican Civil Liberties Union(ACLU)で、同プログラムは米国市民の憲法上の権利を「踏みつけて」おり、連邦盗聴法に抵触しているというのが同団体の主張だった。
刑事弁護士やジャーナリスト、イスラム系アメリカ人や教育関係者らの組織が参加するACLUに大勝利をもたらした判決の中で、Taylor判事は、2005年12月に「New York Times」が計画の存在を暴露して以来、ブッシュ政権がプログラムを維持するために唱えてきた法律的主張の主立った部分を覆した。
Taylor判事が著した43ページにおよぶ判決文(PDFファイル)には、「この問題においては、原告の勝訴により公共の利益が守られることは明白である。判決はわれわれの憲法に従うものだ」と記されていた。
今回の判決を受けた米司法省は、「テロとの戦争のただ中にいる情報機関にとって、『Terrorist Surveillance Program』は不可欠な対策である」とする声明を発表し、ただちに控訴した。またブッシュ政権は、控訴手続きが終了するまで判事の裁定を保留するよう要請している。
関係者も、政府が申し立てた判決延期要請に関する公聴会が開かれる米国時間9月7日まで同裁定を一時保留し、監視プログラムを続行することに賛同した。
Taylor判事の判決によれば、対テロリスト監視プログラムは、米国憲法修正第1項によって保障される言論の自由と、同第4項によって保障されるプライバシー権に抵触し、不当捜査から身を守る権利を侵すものだという。また判決文には、同プログラムは「Foreign Intelligence Surveillance Act(FISA)」と呼ばれる1978年に規定された電子盗聴法に違反し、大統領権限の乱用に当たるとも記されている。
Taylor判事は「米国には生まれながらにしての王はいない。あらゆる権利は憲法によって規定される」と述べ、令状を必要としない捜査活動は戦時下の最高司令官としての大統領権限に含まれるという、ブッシュ政権の主張を一蹴した。
Taylor判事は、ブッシュ政権が要請していた、「国家機密特権」に基づく訴訟の却下も退けた。ブッシュ政権は、軍事機密の公開につながる訴訟の提起を抑制する権利を求めていた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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