通信機器市場における企業統合が進むなか、Cisco Systemsは新技術や市場への先行投資が功を奏し、他社がうらやむような地位を手にしている。
欧州時間6月19日、携帯電話メーカーのNokiaと通信機器メーカーのSiemensは合弁企業を設立し、電話会社に販売する製品ラインを統合する計画を発表した。新会社の社名はNokia Siemens Networksで、総資産は300億ドルを超える見込みだ。
通信機器メーカーの間では統合に向けた大きな動きが相次いでおり、NokiaとSiemensの合弁もこれに続くものといえる。4月には、AlcatelとLucent Technologiesが合併計画を発表し、これにより世界最大級の無線および有線通信機器のサプライヤーが誕生することになった。また、2005年10月には、Nokiaの主要なライバル企業であるEricssonが、英国のMarconiから通信事業関連の資産の大半を買収すると発表している。
こうした機器メーカーの提携は、通信キャリアにおける同様に大がかりな統合の動きに続くもので、ウォール街や業界関係者の多くは、次はどの企業かと憶測している。Nortel NetworksとMotorolaが統合による規模拡大を検討している可能性が高いという声もある。
では、ネットワーク機器大手のCisco Systemsはどうだろう? 電話会社がネットワークの高機能化を進め、インターネットプロトコル(IP)ベースのサービス、たとえばIPTVなどに手を広げる中で、今後数年間のうちに大きな利益を得る企業を考えた場合、通信機器市場ではどちらかと言えば新顔のCisco Systemsは、従来の通信機器メーカーよりも有利な立場にあるだろう--こう予測するアナリストは、少なくとも1人はいる。
世界の大手電話会社はすでに、音声通信のトラフィックをIPデータネットワークに乗せ始めた。そして今後まもなく、AT&TやBT、Deutsche Telekomといった大手キャリアの多くは、自社のIPネットワークで映像の伝送も始めるだろう。そうなれば、IP関連機器やIPネットワークソリューションに対する非常に大きな需要が生まれる。
CiscoはIP機器市場で圧倒的優位を保っているが、これはIPルータおよびイーサネットスイッチの大企業向け販売実績によるところが大きい。同社の最も売れ筋の商品といえばスイッチの「Cisco Catalyst 6500」だが、同製品は過去2年間で80億ドルの売上高を上げており、過去6年間では200億ドルにのぼる。
また、Ciscoはここ数年、電話会社やケーブル事業者への売上を増やしている。2006年第3四半期、Ciscoのサービスプロバイダ市場向けの売上は、前年同期比で10%台後半の伸びを示した。
CiscoがIPセクターで他社以上の強みを発揮したのは単なる偶然ではない。過去5年のあいだ、NortelやLucentなどの大手ライバル企業が会計不祥事や売上の伸び悩みに苦しむ中、Ciscoは企業を次々と買収し、将来に向けて基盤を固めていた。その中には同社の事業にとって鍵となる案件もいくつかあった。
また、Ciscoは複数の新たな市場や、同社が「Advanced Technologies」と呼ぶ事業分野に集中的に取り組んできた。Advanced Technologiesには、デジタルビデオ、デジタルホーム、セキュリティ、光ネットワーク、ストレージエリアネットワーク(SAN)、ワイヤレス、小規模企業向けのホステッドサービス、IPテレフォニーなどが含まれる。Ciscoでは新技術のうち、5年から7年のうちに10億ドル規模の年間売上が見込まれると判断したものを、Advanced Technologiesのカテゴリーに入れている。
現在のところ、Advanced Technologiesグループが創出する売上は、同社の年間売上である200億ドルのほんの一部だが、これは最も成長著しい事業分野の1つでもある。Ciscoは今後数年間における同社全体の売上の伸び率について、年10%ないし15%を目標として掲げているが、Advanced Technologiesグループがこの目標達成に貢献する可能性もある。Ciscoによると、Advanced Technologiesグループは2006年第3四半期、売上を前年同期比で20%増加させたという。
Ciscoの最高経営責任者(CEO)、John Chambers氏は、次のように話している。「市場の傾向を正しく把握することは重要だ。われわれは3年ないし5年前、他社がまだ業界の動向をはっきりと掴んでいなかったころから、投資を重ねてきた」
たとえば、ホームネットワーキングや映像といった新市場は、Ciscoの従来の市場とはまったく異なるものだ。だがその取り組みを見ると、Ciscoの戦略の進化がはっきりとわかる。同社は単にネットワークにインフラ機器を供給するだけでなく、さらにその先まで事業を展開したのだと、Chambers氏は説明する。そして今、Ciscoはネットワークの利用率と需要をともに上昇させるような企業および消費者向けの製品を開発している。
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