ヘスターCTOに聞く--AMDの今後

文:Tom Krazit(CNET News.com) 翻訳校正:尾本香里(編集部)2006年06月15日 08時00分

 Advanced Micro Devices(AMD)が年内にチップの製造方法を大幅に変更することはなさそうだ。それでも、Phil Hester氏には考えるべきことが山ほどある。

 Hester氏は2005年、Newisysを経てAMDの最高技術責任者(CTO)に就任した。NewisysはAMDのOpteronプロセッサを採用した最初のサーバメーカーの1つである。Hester氏は現在、AMDのチップ設計戦略全般を指揮しているが、ここにはサーバやPCから、まだ初期の構想段階にある新型デバイスまで、あらゆる製品が含まれている。

 AMDは米国時間6月1日、カリフォルニア州サニーベールにある本社でアナリスト向けの会合を開く。会合は半日にわたって行われ、同社のロードマップと今後の方向性に関する最新情報が発表される予定だ。AMDの動向は注目を集めているので、何であれ、発表の内容は厳密に分析されることになるだろう。AMDは2007年に新しいアーキテクチャを発表することになっており、2006年はDDR2メモリのサポートといった軽微な変更しか発表していない。

 AMDはわずか数年で、主にゲーマーの間でしか知られていないニッチプレーヤーから、世界の大企業を顧客に持つ大手サプライヤーに変貌した。5月初旬にはAMDチップの採用を長年しぶってきたDellも、サーバ製品にOpteronチップを搭載することを発表した。2005年と比べると個人PC市場でのシェアも伸びており、米国ではIntelを抜いたこともある。しかし、Intelは復活を宣言しており、まもなく電力効率の高いアーキテクチャに基づいた新型プロセッサを投入する予定だ。

 Hester氏は先日カリフォルニア州コロナドで開催された「Future in Review」カンファレンスでCNET News.comのインタビューに応じ、ソフトウェア業界のマルチコア化においてAMDが果たす役割を説明するとともに、カンファレンスの注目テーマである開発途上国のコンピューティングについて、自身の意見を明らかにした。

--業界はマルチコア時代に移行しつつあります。クライアントソフトウェアの領域では、AMDはどのような役割を果たすのでしょうか。

 現在はエンドユーザーのシナリオ、たとえば将来はどのようなアプリケーションが利用されるのか、ソフトウェア面の要件は何かといった問題に多くの時間を費やしています。

 今日のサーバアプリケーションは多かれ少なかれ、マルチプロセッシング環境に対応したものになっていると思います。マルチコアは単なるパッケージングの違いであり、マルチコア環境でもサーバソフトウェアは問題なく動作するはずです。

 クライアントソフトウェアではそうはいきません。ハイエンドのワークステーションやデュアルプロセッサ関連のものを除くと、この20年強の間、PCやクライアントアプリケーションは常にプロセッサのシングルスレッド性能の向上から利益を得てきたからです。

 しかし、これからは違います。サーバサイドの状況を見てください。企業はJavaやXML等を高速に処理するための専用アクセラレータを開発しています。こうしたカスタマイズされた処理ブロックを、デュアルパーパスのコアプロセッサに簡単に追加できるようにすることが非常に重要だと思います。この点にはさらに取り組んでいくつもりです。

--(IBMの)Cellプロセッサについてはどう思いますか。IBMはプロセッサコアにサブプロセッサを多数搭載することで、負荷の高い作業を処理するという考え方を採用しています。

 この考え方に適した用途もあると思います。ここでも、多様なワークロードにどう対応するかが問題です。

 画像処理にはCellモデルは向いていると思います。しかし、すべての用途に適しているわけではありません。ソフトウェアの開発も困難です。PLAYSTATION 3の状況を見てください。PLAYSTATION 3の問題の多くは、ソフトウェアの複雑さに起因しているのではないでしょうか。

 これは難しいプログラミングモデルです。正しく処理できれば、大きなメリットがあります。(AMDが検討しようとしているモデルは、)効率のよい汎用プロセッサに、特定ワークロードに特化した軽量のコプロセッサを追加していくというものです。現在のクライアントまたはサーバ環境では、システムを特定のワークロードに最適化しようとすると、他のワークロードの性能が落ちてしまいます。多くの企業にとって、これは重大な問題です。

 どのワークロードも快適に処理できるようにしなければなりません。他のワークロードに影響を及ぼす恐れがないなら、企業は特定のワークロードやアプリケーションを高速化したいと考えるでしょう。まずは業務の効率と関わるワークロードの高速化から始めるつもりです。その後、特定用途向けのコプロセッサをCPUに外付けします。将来的には、コプロセッサはCPUに統合したいと考えていますが、そのためには誰もが追加コストを払ってもよいと思えるような、普遍的なワークロードの登場を待つ必要があります。

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