New Industry Leaders Summit 2005 Autumnのセッション「IP革命−コミュニケーション市場の展望」では、シスコシステムズ 執行役員 CTOでありVoIP推進協議会 会長代理をも務める大和敏彦 氏、スカイウェイブ 代表取締役社長のロバート・ケリー氏、Skype Technologies S.A. 日本市場担当取締役であるビンス・ショーティノ氏を招き、日本におけるIP市場の現状と展開などについて意見が交わされた。
これまでの市場を取り仕切ってきた通信事業者とはまったく違う論理とアプローチで、通信市場、ひいては業界全体に革命を起こそうとしている3社。IPはコミュニケーションをどのように変えていくのだろうか。
期待が大きいVoIP市場の現状
VoIP(Voice Over IP)は現在、基本的にはプロトコルの1つであるSIP(Session Initiation Protocol)をスタンダードにしようという動きになっている。伝送路としてはデータと音声のネットワークを1つにまとめられるほか、アプリケーションとの組み合わせでユーザーのニーズに合わせたものが自由に作れる。その1つとして電話をIPにするという手段があるのが特徴だ。
例えば、米国のISPはVoIPを提供する企業へと進化を遂げ、アプリケーションレイヤーではどうVoIPを加えられるか、どんなアプリケーションに取り込めるかといった取り組みが顕著だ。
コスト安だけを訴えても駄目だと主張するスカイウェブのケリー氏 |
ケリー氏は、スカイウェイブがメインで取り組んでいるPBX市場について、「通信費を除いても約5兆円の市場であり、企業向けVoIP市場で一番大きいだろう」と明言した。今後規模が縮小されていくとしても、リース切れのタイミングである5〜7年に1度は数兆円の市場が生まれる。IP PBXが本格的に動くのは、戦後最大級のオフィス棟が出来上がり、企業が一斉に移動する2007年からだろうとにらむ。それに伴って「IP PBXのシェアが15%を超えればIPへの移行が加速されるのではないか」というのが、ケリー氏の予測だ。
個人市場ではYahoo! BBのBBフォンを皮切りにして、Skypeが普及し始めた。マイクロソフトも動き出せば、通信費を入れて兆円規模の市場であるという見通しだ。
ただ、「VoIPを取り入れるならばアプリケーションと組ませて柔軟な使い方をさせなければ意味がない」とケリー氏は考える。スカイウェイブでは、2005年末よりAPIを公開し、プラグインとして企業や個人を問わずに、幅広い業界へと浸透させる考えだ。
シスコシステムズの大和氏も、VoIPの普及率についてはケリー氏と同じで「ある程度の普及後は急激な伸びが見込めるだろう」との考えだ。大和氏はVoIPの現状と今後についてを語った。
普及への3つの課題を挙げたシスコシステムズの大和氏 |
VoIPを使った電話として挙げられるのは、(1)インターネット電話(Skypeがこれにあたる)、(2)IP電話(品質基準あり)、(3)0ABJ(03や06といった番号を持つ固定電話)の3種類だ。(2)のIP電話にも品質基準があり、クラスAが固定電話並み、クラスBが携帯電話並み、クラスCがそれ以下に分けられる。「050」の番号を持つIP電話はクラスCに分類されており、「固定電話を補う」という位置づけだった。しかし現在、(3)の0ABJ、かつクラスAに相当する品質を持つIP電話が登場しているほか、NTTやKDDIといった大手通信キャリアもネットワークのオールIP化に取り組んでいる。
あくまでも固定電話の補佐的な役割だったIP電話が固定電話とクオリティの上でも同等のレベルに達し、主流へと踊り出そうとしているのだ。また、今後はインターネット電話のクオリティも向上し、「050」を利用しなくても無料でインターネット電話を使う層が増えるだろうと大和氏は予測する。
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