eBayが、売上拡大と、消費者へのシームレスな音声通信提供を狙った動きのなかで、インターネット電話プロバイダーのSkype(本社:ルクセンブルク)を買収する計画を発表した。
eBayの幹部らは米国時間12日、Skypeに対し、13億ドルの現金の支払いと、13億ドルの株式交換を行う用意があることを明らかにした。さらにeBayは、Skypeが2008年までに一定の財務目標を達成した場合、買収金額を15億ドルを上乗せすることにも同意しており、合計買収額は40億ドルを上回ることになる。同社は12日午前に投資家向けに行ったプレゼンテーションのなかでこの計画を明らかにした。
Skypeの買収は第4四半期末までに完了すると見られている。これは、eBayにとって10年の歴史のなかで最大規模の買収となる。同社はほかにも大規模な買収を行っており、2002年にはオンライン支払技術会社のPayPalを約15億ドルで獲得、さらに最近ではShopping.comを6億2000万ドルの現金で傘下に収めている。
2002年創業のSkypeは、VoIPを使ってコンピュータユーザー同士が無料で通話できるサービスを提供しており、また同社のサービスを使えばコンピュータから固定/携帯電話へも低価格で電話がかけられる。同社のプレスリリースによると、同社はビジネスを展開する225カ国のほぼすべての国や地域で市場をリードしているという。Skypeの関係者は12日、同社が今年は6000万ドル、2006年には2億ドル以上の売上高を見込んでいることを認めた。ある幹部がReutersに明らかにしたところによると、Skypeはまだ黒字転換を果たしていないという。
Skypeは、売上高の約半分を欧州、約4分の1をアジア、そして8分の1を北米で上げている。急成長を続ける同社は、すでに5400万人の加入者を獲得しており、ユーザーは毎日15万人ずつ増えている。また、eBayの投資家向けに行われたプレゼンテーションによると、現在SkypeとeBayのユーザーは約1%しかオーバーラップしていないという。
eBayの最高経営責任者(CEO)Meg Whitmanは、投資家向けの電話会議のなかで、eBayとPaypalにSkypeを組み合わせれば、「売り手と買い手との間にある摩擦点を排除し、他に比肩するもののないeコマース/通信エンジンを提供できる」と語った。
「コミュニケーションは、コミュニティとeコマースの核心をなす部分であり、SkypeはeBayにとって最適なパートナーだ」(Whitman)
eBayでは、買収完了時にSkypeのサービスを自社のオークションビジネスと統合し、売り手と買い手がVoIPを使ってコミュニケーションをとれるようにしたいと考えている。同オークションサイトとしては、顧客がSkypeで連絡を取るたびに売り手側から料金を徴収する形か、もしくは売り手のSkype情報へのリンクを製品ページに表示して、固定料金を請求する形も考えられると、eBayの広報担当Hani Durzyは説明している。
プレゼンテーションで公開されたサンプルスクリーンショットには、Skypeの利用を申し込んだ売り手のユーザー名に、ユーザーのオンライン状況が示されていた。買い手側がその名前をクリックすれば、eBayサイトを離れることなく売り手に連絡をとれる。また、どちらもプライベートな電話番号を明らかにする必要がないと、Whitmanは述べた。今のところ、オークションにおける売り手と買い手のコミュニケーションでは電子メールが主な手段となっている。eBayによると、同社のユーザーは毎日約500万通のメッセージを送信しているという。
Whitmanは、問い合わせの多い自動車や業務/産業機器、コレクターズアイテムなどのカテゴリーで、このサービスが売上拡大につながることを期待していると語った。
「たとえば、Audi Quattroを探していて、修理の履歴など質問したいことがたくさんあるけれど、あと3時間でオークションが締め切られてしまうとしよう。こうした場合には、電子メールで問い合わせている余裕はない。Skypeでやりとりできたらよいと思わないだろうか」(Whitman)
Skypeの広報担当Kelly Larabeeによると、eBayは、今年中にリリースされる予定の新しいビデオ会議機能など、Skypeのスタンドアロン製品も残しておく計画だという。
一方、業界アナリストらはこの合併の真意をつかみかねている。
Standard & Poor'sアナリストのScott Kesslerは、「私はこの合併にかなり懐疑的で、驚いており、株の購入は勧めていない」と語り、ユーザーがすでに電子メールで満足している状況でeBayがインターネット電話サービス、特にSkypeの追加を考えた理由がわからないと付け加えた。
Kesslerは、eBayがここ12〜18カ月の間に過去8〜9年間より多くの買収を実施しているが、多くの場合、これは成長の鈍化を示す兆候だと指摘した。Kesslerは2002年のPayPal買収を支持したが、eBayが自社のサービスに音声機能を追加するだけで、PayPalのときと同じように売上を伸ばせるかどうかは疑問だと述べている。
「この買収のニュースを聞いて、インターネットバブルの頃を思い出した」とForrester ResearchアナリストのMaribel Lopezはいう。「微々たる売上しかない企業を26億ドルも出して買うものが、今時どこにいるだろうか」(Lopez)
Lopezは、競合各社がひしめくVoIP市場で、eBayがあえてSkypeを選んだ理由と、さらにはこの買収によって同社がどれだけの売上拡大を実現できるかという点について疑問を呈した。
一方、ペンシルバニア大学ウォートンビジネススクールの教授であるSaikat Chaudhuriは別の見方をしている。同氏によれば、Googleが「Google Talk」をリリースしたり、YahooやMicrosoftがそれぞれVoIP関連の新興企業を買収するなど、この分野で最近動きが活発化していることを考えた場合、eBayの動きは少しも驚くにあたらないという。
「この買収によって、eBayは強力なシグナルを市場に送ったことになる。それは、同社がもはやある特定のドメインに安住していることを望んでいない、ということだ。ただし、実際のところ、同社にはあまり選択の余地がない。つまり、大規模な買収を実施して大金をつぎ込むか、さもなければ黙って立ち去るしかない、ということだ」(Chaudhuri)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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