Dellにはこの1年、さまざまな変化があった。しかし製造戦略の要となるノートPCの製造においては伝統を守っている。
言うまでもなく、Dellは、直販モデルを強力に推進し、見込数ではなく実際の注文数をもとにコンピュータを製造する手法で急成長を遂げた。
単純な戦略だと思うかもしれないが、デスクトップPCがノートPCより圧倒的に人気があった時代に、Dellはこのやり方にこだわってPCの最大手メーカーになったのである。しかしノートPCが全盛となった今、経費節減に熱心なPCメーカーの大半は、台湾や中国の委託製造業者がすべて組み立てたノートPCを自社製品として購入している。
だが、Dellは違う。Dellは、ノートPCのかなりの部分を自社の工場で組み立てている。これは同社が長年デスクトップPCでとってきた手法だ。
問題は、かつてその有効性が実証された「Dell流」が、ノートPC時代にも通用するかどうかである。 Dellは、流れのまったく異なるノートPC業界にデスクトップ製造モデルを無理やり当てはめようとしているのだろうか。あるいは、ノートPCがデスクトップ同様簡単に製造できる段階が来ることを予測して、今回も新しい道を切り開こうとしているのだろうか。
PC業界では将来、ノートPCが主流になるだろう。すなわち、ノートPC製造の手法を正しく判断できるかで、同社の将来が決まる。調査企業IDCのデータによると、2006年、ノートPCの出荷数は24%成長するが、デスクトップの出荷数は4%の伸びに留まると予想されている。
市場がモバイル性を重視する中で、テキサス州ラウンドロックに本社を置くDellはいくつかの重大な問題に取り組んでいる。同社はPC市場でトップの座を失い、家電製品業界で史上最悪のリコールを経験した。そして、顧客からの不満の声を受け、サービスサポート部門の全面的な見直しを図った。
デスクトップPCとノートPCで実行できる作業に違いはないだろう。しかし製造プロセスに関して言えば、両者はまったく異なる。デスクトップPCの組み立てはとても簡単だ。筐体となるプラスチックの型のサイズは標準化され、マザーボードも規格化されており、各パーツも大型電器店などで簡単に購入できる。技術的な知識があまりない人でも組み立てられる。
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