DVD販売の低迷がもたらした危機感
これまで、違法コピー流通を促進させるという懸念から、メジャースタジオをはじめ米国映画会社各社はインターネットを用いた作品配信には否定的だった。
にもかかわらず、「ブロークバック・マウンテン」や「キングコング」など、そこそこの興行成績を収めた作品のブロードバンド配信を決めた背景には、これまで映画興行よりも重要な収益源となったDVD販売が急速に低迷し始めたという事情がある。
米国でコミュニケーションやメディア経営などを教える大学などでは常識的に教えられているように、あるいはエド・エプスタインの全米でベストセラーとなったビジネスノンフィクション「ビッグ・ピクチャー―ハリウッドを動かす金と権力の新論理」にあるように、映画は様々な「窓」を通じて配給され、何度も収益機会を映画会社にもたらす。もはや新作映画にとって最初の「窓」である劇場興行だけでは制作費の回収すらままならず、実質作品全体売上の6割を占めるようになったのが、ペイパービューなどのテレビを通じた有料放送に続く第三の「窓」、DVD販売だった。
しかし、昨年から、DVDの販売額が急速に低迷し始めた。しかもややこしいことに、販売数は以前よりも増している作品すらあるというにもかかわらず、だ。すなわち、単価が急速に低下していることになる。
これは、ウォルマートに代表されるメガリテーラーの台頭と、Amazon.comのようなオンライン・リテーラーの成長が大いに影響している。共に、再販制度のない米国で製品の販売価格をほぼ決定しているといっていいほどに力を持っており、彼らがDVDの販売価格を急速に下げてきている。僕のハリウッドでの交渉でも、昨年までは24.99ドルでの予価であったものが、今年になって実質取引額を参照して販売単価を14.99ドルに下げているほどだ。
米国でのダウンロード販売に先行して、3月23日、英国でUniversal Picturesがダウンロード販売の開始を発表している。やはり欧州でも全く同じDVDの価格低下が進行しているためだ。
ここまで価格が低迷すると、DVD販売だけに頼る「窓」の構造を見直す必要がでてくる。そこで、これまでは本格化してきていなかったオンライン配信に何らかの形でチャレンジすることになったに違いない。
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