最終更新時刻:2008年7月24日(木) 23時08分

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モバイルフィルタリング問題をめぐる関係者の思惑--これまでの経緯を振り返る

永井美智子(編集部)

2008/03/31 12:37  

携帯電話事業者の「自主努力」からの方向転換

 総務省はこれまでも携帯電話事業者に対して、フィルタリングサービスの普及促進に取り組むように伝えてきた。2006年11月には自主的取り組みを強化するよう「要請」、2007年2月には警察庁、文部科学省と合同で、啓発活動を進めるよう「依頼」している。

 これらの声に、携帯電話事業者が何もしてこなかったわけではない。特に力を入れてきたのは「e−ネットキャラバン」という、保護者や教職員向けにインターネットを安全に利用する方法を伝える活動だ。講師を無償で派遣し、起こりうるトラブルの例やフィルタリングサービスの使い方などを伝えてきた。

 また、月々の請求書に同梱するパンフレットなどでフィルタリングサービスを告知し、周知活動をしてきた。

 ただし総務省はいままで、フィルタリングサービスは携帯電話事業者が自主的に取り組むべきこと、としてきた。携帯電話事業が許認可事業とはいえ、一介の事業者に国が多大なコスト負担を強いるような施策はできない。要請を通じて、携帯電話事業者の自主努力を促そう――それが総務省の基本姿勢だった。

 既存契約者と新規契約者で、フィルタリングサービスに加入させる年齢が異なるのも、携帯電話事業者の負担をできるだけ減らそうという考えに基づくものだ。総務省としては中高生が携帯電話を通じて犯罪被害に巻き込まれることを問題視し、18歳未満はフィルタリングサービスを原則的に利用するよう求めた。

 ただし携帯電話事業者では、未成年が新規契約する場合に、親権者の同意書を必要としていた。この同意書にフィルタリングサービスの利用意思を確認する文言を付け加えるだけなら既存の運営に大きな変更を加えずに済む。こういった理由から、新規契約者は20歳未満、既存契約者は18歳未満と差が生まれている。

総務省を後押しした警察庁の危機感

 総務省が突然、青少年への原則加入という強い施策を打ち出した背景には、警察庁や政治家からの働きかけがあったと言われている。警察庁は、青少年が出会い系サイトを通じて性犯罪などに巻き込まれる件数が増加していることに強い危機感を抱いている。警察庁の発表によれば、出会い系サイトを利用して犯罪に巻き込まれた青少年のほとんどが携帯電話からサイトを利用していること、被害の多い出会い系サイトのほとんどで18歳未満の利用を禁止しているにもかかわらず犯罪が起きていることから、青少年がアクセスできないようにすることが肝心だと考えたようだ。

 実際、1月17日に公開された警察庁の「出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止研究会」の報告書案「出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止の在り方について」では、犯罪防止のためにフィルタリングを普及させるべきとの提言が明記されている。

 「現行法では、出会い系サイトを利用する際の年齢確認の方法として自主申告方式を認めていることから、児童が容易に出会い系サイトを利用できる実態にあり、また、仮に年齢確認が強化されても、対面による確認ではない以上、児童の利用を完全には排除できないことから、児童が使用する携帯電話等から出会い系サイトにアクセス出来ないようにするフィルタリングは、児童の犯罪被害防止に有効である」(警察庁報告書「出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止の在り方について」より抜粋)

 また、この提言では「法に保護者及び携帯電話事業者の責務(努力義務)を規定することが適当である」とも述べられており、警察庁の強い意志がうかがえる。

 政治的な動きとしては、解散総選挙を求める声が一部で上がる中、「子どもの安心、安全を守る」ということが有権者へのアピールになるという考えがあったようだ。自民党、民主党ともに有害コンテンツの規制に向けて動き出しており、自民党では青少年特別委員会内において、民主党では違法・有害サイト対策プロジェクトチーム内において法案を作成している段階だ。

 そしてこれらの動きを受けたものが、2007年12月の携帯電話事業者への要請ということになる。

 この突然の要請に驚いたのが携帯電話向けのコンテンツプロバイダーだ。それ以前からフィルタリングの強化に対する動きはあったものの、総務省はコンテンツプロバイダーの代表などと共同で、青少年がインターネットを通じて犯罪に巻き込まれるのを防ぐための方策を議論する「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第1回会合を11月26日に開催したばかり。これから議論を進めていこうとした矢先の、まさに寝耳に水の出来事だった。

 携帯電話はもともと10代〜20代の若年層の利用者が多く、これらの若い層が熱心に使い込むことで「ケータイ文化」と呼ばれる独自の世界が作られていった。多くの利用者が集まるディー・エヌ・エーのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「モバゲータウン」や、多くの人気携帯小説を生み出した魔法のiらんどのモバイルサイト作成サービス「魔法のiらんど」などは、その筆頭といえる。そしてこれらのサービスはいずれも、フィルタリングサービスによってアクセスできなくなるのだ。

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