麻倉怜士氏が選ぶ2019年A＆V機器ベストテン--映画スマホから唯一無二のカメラまで - 5/10

第6位：最強のソニー技術を結集して作ったすばらしい「映画スマホ」／ソニーモバイルコミュニケーションズ「Xperia1」（スマートフォン）

　スマートフォンは各社独自の切り口で発売しているが、ソニーモバイルの「Xperia1」は、完全に映画を見るための「映画スマホ」だ。画角は21対9のシネスコサイズ（正確には2.33対1）で、映画を再生するのに理想的なサイズだ。

　ディスプレイは有機ELで、画質設計にはソニー厚木テクノロジーセンター（ソニー厚木）の技術を投入している。ソニー厚木が手掛けるプロフェッショナルモニター「BVM-X300」は、グレーディング（色づくり）モニターの神様的存在。それを受け継いだXperia1の画質は大変美しい。

　スマホの映像は、ハイコントラストのものがほとんどだが、Xperia1は実に落ち着いたトーンを採用。穏当で目に優しく、かつてのフィルムを思い出させる。約6.5型とテレビに比べると小さな画面だが、21対9＋映画画調は想像以上に「映画を観る愉しみ」を与えてくれる。ぜひ周囲を暗くして鑑賞してほしい。動画撮影にもソニー厚木の技術がいかされている。シネマ撮影専用機能「Cinema Pro」は、ソニー厚木の技術者が開発に参加。デジタルシネマカメラの「VENICE」の質感を、24コマの4K HDR撮影で再現する。

　Xperia1も確かに「コンピュテーショナルフォト」的な技術は採用しているが、それとともに光学レンズの性能を最大限に引き出す処理を使うことによって、独自の画質を再現する。違いは肌や髪の毛などの人物の表現力。肌の質感や階調が自然に再現され、誇張感もない。グーグルのPixel4が、どうだこれば凄いぞという、はっきりくっきりした画質だとすると、Xperia1は輪郭の強調感もなくすべらかな仕上がり。どちらも甲乙つけがたいが、ナチュラルさではXperia1に軍配があがる。

　Xperia1は、これまでのカメラとディスプレイの開発に「α」「ブラビア」の技術を投入し、差別化を図っていたが、今回はソニー厚木の技術者までを動員。最強の部門を結集させ、すばらしい「映画スマホ」を作り上げた。