一方でデメリットもある。とりわけ、買った本が読めなくなる危険性はたびたび指摘される問題だ。ひとつはストア側にまつわるもので、ストアの閉鎖・終息などにともない、購入済みの本であっても再ダウンロードができなくなるというもの。つい先日も、楽天が運営する電子書籍ストア「Raboo」が閉鎖されるにあたり、他ストアへの引き継ぎといった対応が取られずに批判を浴びるケースがあったばかりだ。
現在の電子書籍ストアの多くは電子書籍データにDRMをかけており、買った本を他のストアで読むことはできず、印刷して控えをとっておくこともできない。そのため先のRabooの場合は、すでにダウンロード済の端末が破損した場合、購入済みの本を二度と読めなくなってしまうわけだ。このほか、ストアの閉鎖を伴わなくても、本にダウンロード期限が設けられており、これを超えると再ダウンロードできなくなるケースは少なくない(ただし、最近はこの制限をなくすサイトも増えつつある。喜ばしい限りだ)。
もうひとつ、端末の買い替えやOSのバージョンアップで読めなくなる危険もある。最近の電子書籍ストアの多くは購入済みの書籍一覧をクラウドで管理しているため、単純な機種変更だけで購入履歴が消えてなくなる可能性は低いが、たとえばAndroid端末からiPhoneに機種変更したところ、その事業者がiOS向けのアプリをリリースしていなかったため、結果的に読めなくなってしまったということはある。このあたりは、さきのストア閉鎖時の対応もそうだが、ユーザー個人が電子書籍ストアの信頼度を見極めるしかない。
そのため、こうした制限を嫌う一部ユーザーは、紙の本を裁断してスキャンすることで電子書籍として扱う、いわゆる「自炊」での蔵書化に取り組んでいる。DRMのかかっていないPDFデータであれば、コピーをとって残しておくのも自由というわけだ。文字サイズの変更など電子書籍ならではのメリットは享受できないが、これもひとつの方法ではある。
これよりカジュアルな問題としては、単純に端末のバッテリが消耗するなどの理由で一時的に読めなくなる可能性や、冒頭に書いた旅行や出張での持ち運びの際、飛行機の離着陸時に利用が制限されるといった問題がある。厳密な意味での「読めなくなる」とは異なるが、シチュエーションを問わずに読める紙の本では起こり得ない問題であることに変わりはない。
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