運と機会を味方に「1人でも企業を変えられる」--出井氏が贈る起業家へのメッセージ

尾本香里(編集部)2007年08月01日 08時00分

 米Red Herringが京都で7月23日から2日間開催した「Red Herring 2007 Insights Japan」にて、ソニーの前会長兼グループ最高経営責任者(CEO)で、コンサルティング会社クオンタムリープの代表取締役を務める出井伸之氏が7月24日に登壇し、Red Herring会長兼発行人Alex Vieux氏によるインタビューに応じた。その内容はソニーのCEO職を退いてから感じることから、日本の起業環境の問題点、起業家たちへのアドバイスにいたるまで多岐に及んだ。インタビューはすべて英語で行われた。

――Vieux氏:とても大きな企業から、1人1人のスキルは高いけれども規模は小さいという特徴をもった企業に移られて8カ月が経ちますね。この間に学んだことを教えてください。

出井氏:大企業はマインドセットを変えることで、生産性を大きく向上させられるということです。

 例えばハリウッドに行っても、ソニーが所有するような配給会社もありますし、Steven Spielberg氏のような独立系の映画プロデューサー、映画監督もいます。もちろんこの辺りには俳優もたくさん住んでますね。

 ハリウッドのSpielberg監督を見ていても、彼が興味深いテーマの映画やプロジェクトに取り組み始めると、みんなが集まってきます。いいアイデアには人が集まってくるものなのです。

出井伸之氏

 ソニーは厳格にバーティカルな組織や工程に縛られています。すべてを自分たちで作り上げようとしているのです。大企業はこうしたマインドセットを変えることで、生産性を大きく向上させられるのではないでしょうか。

――Vieux氏:クオンタムリープが開催したイベントで水平方向の動きと垂直方向の動きという概念に言及されていましたが、これらはどういう意味なのでしょう?

出井氏:垂直型の業界に挙げられるのは、自動車業界です。

 これに対してIT業界では、TSMC (Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)などが水平方向の展開をしています。世界最大のEMS台湾企業Foxconnでは、生産だけに3万5000人もの従業員が従事しています。その上のレイヤでは、日本のナレッジが台湾に流れ込んでいるわけです。

 デジタルの世界ではスケールがものを言いますから、垂直と水平方向の業務をどう組み合わせるかがとても重要です。特に大企業にとっては重要な問題だと思います。

――Vieux氏:世界中の起業家と接しておられますが、日本の起業家が直面する、日本の社会ならではの問題として、どんなものがありますか。

出井氏:すべての事柄を政府や大企業がコントロールし過ぎていることが挙げられます。ワイヤレス通信のWiMAXやWi-Fiもそうです。

 WiMAXの開発に貢献する企業は世界中にたくさんありますが、日本企業はわずかです。これが日本の弱点です。

 経済産業省は今もすべての産業のあらゆるセクターをコントロールできると思っているようですが、それは間違っています。すべての技術を管理するなど、不可能です。(経済産業省は)主だった技術をコントロール下に置くことはできても、ロングテールの部分に属する技術を管理することはできないと、考えています。

Vieux氏(左)と出井氏

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