スマホのAIはまだ期待外れ、2025年は実用性に期待

Lisa Eadicicco (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2024年12月04日 07時30分

 サムスン、Google、Appleといったスマートフォンメーカーの発言が信じるに足るとすれば、人工知能(AI)によって私たちのモバイルデバイスの使い方は変わろうとしている。問題は、それがいつになるかだ。

スマートフォンに人差し指を置いた様子 提供:Qi Yang/Getty Images
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 2024年は、AI機能がスマートフォンに搭載される年となり、メッセージアプリから離れることなく、文章の練り直しや翻訳をしてもらうことが可能になった。生成AIのおかげで、何回かスワイプするだけで写真から不要なものを消去できるし、簡単なプロンプトや自分で描いたシンプルなスケッチに基づいて完成度の高い画像を生成できる。

 こうしたアップデートで、確かにスマートフォンの利便性は向上するだろうが、筆者にはテクノロジー大手各社が主張するほど画期的とは感じられない。AI中心で動くスマートフォン機能の第一段階は、用途がかなり限定的なのだ。実際、限定的すぎて使うのを忘れてしまうことが多い。Googleの「かこって検索」やAppleの「ビジュアルインテリジェンス」など、特に有望そうに感じられる新機能を使うには、今までと違った操作が必要になる。それだけでも、ひとつの障壁になっている。

 もちろんテクノロジー企業側も、これは、数年に及ぶモバイルソフトウェアの進化の始まりだということを明確に示している。その進化を正しく進めていくことが、極めて重要となる。生成AIによって、インターネットの未来と、私たちが情報にアクセスする方法が決まるという考えがあるからだ。セントルイス連邦準備銀行が9月に発表した経済調査報告によると、米国では生成AIの採用が、PCやインターネットの普及より短期間で進むという。生成AIをデバイスに組み込まなければ、テクノロジー企業は他社に後れをとりかねない。ちょうど、2000年代のはじめにスマートフォンへのシフト乗り遅れた企業のように。

 これまでのところ、スマートフォンのソフトウェアが向かう未来を示す手がかりは見られ、アプリに依存しすぎないインターフェースや、ユーザーに代わって機能するAIエージェントなど、新しいアイデアが出現しつつある。今のところ、そのアイデアに限りはあるものの、スマートフォンをそうした方向に進める進歩が2025年には見えてくることを、筆者は期待している。

2024年のAI機能は小手先どまり

 生成AI、つまりプロンプトに応じてコンテンツを生成したり応答したりするAIは、「ChatGPT」のおかげで、2023年に世界中から注目を浴びた。一方、2024年はスマートフォンメーカーがAIに本腰を入れる年となった。サムスンが1月に「Galaxy AI」を発表したのを皮切りに、Appleは10月のリリースより数カ月も早い6月に「Apple Intelligence」を発表。Googleは、2024年を通じて散発的にAIの進化を公表した。「Gemini Live」に始まり、5月の「Google I/O」ではスマートフォンの画面に映った内容を理解する「Gemini」の機能、また8月には「Pixel 9」シリーズの新しい画像生成ツールが、それぞれ告知されている。

Apple Intelligenceの作文ツール Apple Intelligenceの作文ツール
提供:James Martin/CNET

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 こうした初期の機能には問題解決を目指すものも多いが、筆者から見ると、そこに問題を修正する必要性はあまり感じられない。例えば、テキストメッセージをよりプロらしく、あるいはフレンドリーな調子に書き直すことが必要な状況は、個人的にはほとんどない。筆者がメッセージを送る相手は、ほとんどが親しい友人か家族で、言葉づかいや口調にそれほど気を使うことはないからである。まれに、仕事関係の相手にメッセージを送ることもあるが、その場合も近く予定されているミーティングやイベントに関する短いリマインダー的な内容がほとんどだ。

 それ以外のAI機能は、面白いことも印象的なこともあるが、長期的な有用性を示せていない。「Galaxy Z Fold6」および「Galaxy Z Flip6」のリリース時に発表されたサムスンの「ポートレートスタジオ」も、その一例だ。AIを使って、水彩画や漫画といった各種のアートスタイルを写真の被写体に適用する。

 7月にGalaxy Z Fold6の実機を試用したときには、自撮り写真や友人の写真をいろいろと試し、サムスンの新しい画像処理機能を存分に楽しんだ。しかし、目新しさはすぐに薄れてしまった。それ以来、その機能は触っておらず、3カ月後に再度Galaxy Z Fold6を手に取ったときでさえ、ポートレートスタジオ機能を使ったことは一度もなかった。

ポートレートスタジオ機能を試す筆者 提供:Numi Prasarn/CNET
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 他の画像生成アプリや、プロンプトに基づいて画像を作成できるPixel 9の「Pixel Studio」などの機能についても、印象は変わらない。ラフスケッチから細密な画像を生成できるサムスンの「スケッチアシスト(AIスケッチ)」でも同じだ。確かに、こうしたクリエイティブなツールで遊び、その実力を目の当たりにするのが、ある程度まで楽しいことは間違いない。それでも、何カ月か経って、そうした機能が日常生活の一部になったりはしていないのである。

 Appleも「iOS 18.2」のベータ版で、独自の画像作成アプリ「Image Playground」のプレビュー版を提供している。こちらについては、印象をお伝えできるほど使い込んではいないものの、大きく違うと感じることはなさそうだ。

 筆者の体験が万人の意見を反映するものでないことは言うまでもない。人によっては、こうしたAIツールに大きな価値を見いだす可能性もある。対人関係が苦手で、テキストメッセージを書くときでも何かサポートを必要とする人などなら、そうだろう。あるいは、自分のプロジェクトのために大急ぎで画像を作成しなければならないクリエイターにも向いている。筆者が言いたいポイントはまさにここだ。これらの機能は、モバイル体験を前進させる大規模な変化ではなく、限定的な状況しか想定されていないように感じるのである。

特に有望な、未来につながる機能

 新しいAI機能の大部分が取るに足らない印象である一方、現実的な可能性を感じる機能もある。その一例といえるのが、Googleのかこって検索だ。スマートフォンの画面に映っているものならほぼ何でも、線で囲むだけでGoogle検索を実行できる。「iPhone 16」シリーズで使えるAppleのビジュアルインテリジェンス、そしてメッセージや通知を要約するApple Intelligenceの機能もこの部類に入る。

 こうした有望な機能が、前述した他の機能と大きく違うのは、個々のアプリに埋め込まれているのではなく、システムレベルで統合されていると感じられる点だ。だがそれより重要なのは、今はまだその意欲的な目標を十分に達成できていないとはいえ、私たちがスマートフォンを使うときに遭遇する問題を大きな視野で解決しようとしている、という点である。

 かこって検索とビジュアルインテリジェンスは、そうした有望性が感じられる強力な2例だ。表面的には全く違うように見える。かこって検索が画面に映っているものを利用するのに対して、ビジュアルインテリジェンスではiPhone 16シリーズのカメラを使って周囲をスキャンしなければならない。しかし、この2つには共通点がある。アプリを開いて、Google検索を起動する、あるいはChatGPTにプロンプトを入力し、そのうえで情報を得るという一連の中間段階を省こうとしている点だ。どちらも、テクノロジー企業大手がスマートフォンの操作性をもっとよくできると考えている証といえる。

 Apple Intelligenceのメッセージや通知を要約できる機能も、ユーザーによる複数の操作が不要で、純粋に便利だと感じられることもあるAI機能の例として突出している。かこって検索やビジュアルインテリジェンスと同じく、とてもよくある問題の解決を狙った全面的な変化のように思える。つまり、私たちのモバイルデバイスに流れ込んでくる大量の情報に対処するということだ。

かこって検索 かこって検索
提供:John Kim/CNET

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 だが、このような機能でさえ完璧にはほど遠く、道のりはまだ長い。Appleの要約機能は、テキストのスレッドについて概要をつかむのに十分なこともあるが、重要な文脈を落とすことが多い。ビジュアルインテリジェンスは、iOS 18.2ベータ版の一環としてまだプレビュー段階であり、その有用性については、筆者もまだ把握しようとしている最中だ。

 それ以外にも、ビジュアルインテリジェンスとかこって検索は同じ難題を抱えている。長年にわたり、タップ、スワイプ、スクロールという操作が当たり前になってきたため、スマートフォンでの新しい操作方法の習得は、そうすんなりとは進まないということだ。注目に値する有望な機能である理由が、同時にその定着を妨げうる要因にもなっている。Googleを開く代わりに画面上の何かを丸で囲む、iPhoneのカメラを起動するという操作は、どちらもまだ直感になじんでいない。いつになったら慣れるのか、そもそも慣れる日が来るのかも定かではない。

 2024年に明らかになったのは、まだAIがスマートフォンでの用途を明確に示さなければならない段階にあるということだ。AIが秘めた能力は形になり始めており、特にスマートフォンがどう変わりうるかをめぐる飛躍的なアイデアが登場しつつある。その一例が、Google I/Oで披露された「Project Astra」のデモ、あるいはユーザーによる操作を代行しようとするQualcommのコンセプト、必要に応じてインターフェースを生成できるスマートフォンというBrain.aiの構想だ。スマートフォンをもっと直感的にする試みは、すでにいくつも進んでいる。例えば、GoogleのGemini拡張機能ではGeminiを他のアプリと連携でき、Appleの「Siri」もアップグレードされて、よりパーソナルな状況を理解できるようになる。

 AIの進化を受けて、私たちがアプリを使わなくなったり、仮想アシスタントを利用して日常的なタスクをこなすようになったりするのか、その答えは分からない。だが、筆者が2025年に期待するのは、そういう世界ではない。当面は、これまでに実現している以上に広い意味で実用的で便利、そして画期的と感じられる機能の登場を期待したい。

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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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