2023年は折りたたみスマートフォン業界にとって節目の年となった。新たに参入したGoogleとOnePlusは自社初の折り曲げられるスマートフォンを発売。Motorolaとサムスンはフリップフォンを強化し、外部ディスプレイを大型化することで利便性を高めた。Motorolaが発売した2023年版の「razr」は、折りたたみスマートフォンは高すぎて手が出ないというイメージを覆すべく、700ドル(約10万6000円)という控えめな価格となっている。
2023年の折りたたみスマートフォン市場は、出荷台数の数字自体はIDCの予想を下回ったものの、予想外のにぎわいを見せた。2023年と比べると、2024年は静かな年となりそうだ。サムスンからは順当に「Galaxy Z Flip」と「Galaxy Z Fold」の新バージョンが出るだろう。Googleから第2世代の「Pixel Fold」が登場するといううわさもある。しかし、これらの新作はデザインや性能など、主要な点を想定可能な範囲で強化したもので、折りたたみスマートフォンの可能性を飛躍的に高めるような大規模なアップデートにはならないとみられている。
これは必ずしも悪い話ではない。2023年に大きな進化を遂げたフリップフォンは、2024年は過去の成果に磨きをかける時期に入るだろう。しかし、筆者がサムスンなどの企業に期待しているのは、現在の折りたたみスマートフォンが直面している2つの大きな課題、すなわち「価格の高さ」と「魅力的なソフトウェアの不足」を解決することだ。
2024年は、すでに栄耀(Honor)、Vivo、ZTEの「Nubia」といったブランドから新型折りたたみスマートフォンが発売されたが、サムスンやGoogle、Motorolaは例年、1年の後半に新機種を発表する。具体的な中身は各社の正式発表を待つ必要があるが、うわさやリーク、過去の製品発表をもとに現時点で推測できる情報をまとめた(製品名は仮)。
2024年に登場する折りたたみスマートフォンの中身は、実際に発売されるまで分からない。しかしリーク情報やスマートフォン業界全体のトレンドから推測すると、価格の引き下げ、デザインの改善、ハードウェアの強化が優先課題となりそうだ。2024年の折りたたみスマートフォンは、折りたたみ式ではない、通常のハイエンド機種のスペックに近づくだろう。
各社が折りたたみスマートフォンの価格を抑えようとしていることを示す証拠はすでにある。例えば、ZTEがモバイル見本市「Mobile World Congress(MWC)」で発表したフリップフォン「Nubia Flip 5G」の価格は600ドル(約9万円)だった。これは「Galaxy S24」や「iPhone 15」よりも安い。サムスンがGalaxy Z Foldの廉価版を開発しているというThe Elecの記事も、この流れと一致している。
2024年の折りたたみスマートフォンには、ソフトウェアベースの興味深い新機能が搭載されるかもしれない。サムスンとGoogleは人工知能(AI)をスマートフォンのソフトウェアに積極的に取り入れてきた。その成果がサムスンの「Galaxy AI」機能であり、Googleの「ベストテイク」、「編集マジック」といった写真編集ツールだ。
折りたたみスマートフォンのソフトウェアを開発する企業には、もっと大胆に、創造的になってほしい。折りたたみスマートフォンの大きな魅力は、ポケットサイズのディスプレイが2つあり、かつ別々の用途に使えることだ。この2つのディスプレイの性能を高め、サイズや用途に合わせてインターフェースを最適化できるようになったらどうなるだろう。
サムスンのGalaxy Z Flip5とMotorolaのrazr+は好調な滑り出しを見せている。どちらの端末も、カバーディスプレイにウィジェットなどを並べ、情報を一目で把握できるようになっているが、これはスマートウォッチの設計に近い。AIが大きな盛り上がりを見せる今、各社には次の斬新な一手を期待したい。
サムスンのモバイルエクスペリエンス事業部で、エグゼクティブバイスプレジデント兼研究開発局の責任者を務めるWon-Joon Choi氏は、Galaxy AIのソフトウェア機能をデバイスに合わせてカスタマイズする可能性を示唆していた。
同氏は1月のインタビューで、「(Galaxy AIを折りたたみスマートフォンでも)使えるようにするだけでなく、折りたためるという特徴に合わせて体験を最適化したい」と語った。「ただコピー&ペーストするのではなく、折りたたみ式ならではの体験の提供を目指す」
先日、サムスンはソフトウェアアップデートを実施し、Galaxy AIの現在の機能をGalaxy Z Flip5とGalaxy Z Fold5でも使えるようにした。
折りたたみ可能なiPhoneや、ディスプレイを巻き取れる未来的なデバイスの登場を待ち望んでいるなら、どちらもすぐには実現しないだろう。
Appleは、新しい技術にすぐに飛びつかないことで有名だ。大画面スマートフォンも、スマートウォッチも、仮想現実(VR)ヘッドセットも、一番乗りではなかった。Appleが折りたたみ式iPhoneの発売を計画しているとしても、折りたたみスマートフォンに対する需要がもっと高まるまでは発売されない可能性が高い。TrendForceの調査では、2023年のスマートフォンの世界出荷台数のうち、折りたたみスマートフォンは約1.4%を占めるにすぎなかった。しかし、Counterpoint ResearchのTom Kang氏がブログ記事で指摘しているように、高級スマートフォンを買う層をターゲットにしている企業にとっては、折りたたみスマートフォンは重要な意味を持つ可能性がある。Appleは、その1つだ。
Appleがデザインを重視する企業であることを考えると、折り目の問題が解決されるまで、Appleが折りたたみスマートフォンへの進出を見送ったとしても不思議ではない。ここ数年で折りたたみスマートフォンのデザインは改善されたが、フリップ型でもブック型でも、中央の折り目は依然として目にとまる。
BloombergのMark Gurman記者によれば、Appleは折りたたみ式ディスプレイのプロトタイプを開発しているが、あくまでもテスト用だという。この2021年の記事は、Appleがこの種のディスプレイを正式に採用しようとしていることを示す情報はまだないと指摘している。
一方、Motorolaとサムスンはすでに折りたたみ端末の新たな可能性に目を向けており、すでに巻き取ったり、スライドさせたりすることでディスプレイのサイズを変えられる魅力的なコンセプト機を発表している。しかし、これらの端末はコンセプトの域を出ておらず、現在のプロトタイプがいつ正式な製品に搭載されるかは分からない。
しかしMotorolaのプロダクトイノベーション担当ゼネラルマネージャーのJeff Snow氏は、こうした新しいデザインが将来、スマートフォンの利便性を高める可能性があると指摘する。
「いずれ、7インチのガラス板をポケットに入れて持ち歩いていたなんて信じられない、と思う日が来るだろう」と、Snow氏は2023年のインタビューで語った。「このようなデバイスは、ほとんどの人のモバイル生活には適さないものとなりつつある」
2024年、折りたたみスマートフォンは小さいながらも重要な進化を遂げるだろう。2024年の夏から秋にかけて、各社から新製品が発表されれば、さらに多くのことが分かるはずだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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