「HONOR Magic V2」グローバル版レビュー：折りたたみスマホでトップクラスの魅力

　栄耀（Honor）の「HONOR Magic V2」を初めて見た時は、箱から取り出した瞬間に感動した。軽量設計、明るく広々としたディスプレイ、充実したカメラシステム、頼もしいバッテリー駆動時間など、気に入っている点はたくさんある。欧州での発売に先立ち、Honorからグローバル版を入手したので早速レビューしたい。

提供：Sareena Dayaram/CNET

　HONOR Magic V2の大きな特徴は携帯性の高さだ。しかも、ディスプレイが重なる部分をあえて指でなでない限り、これが折りたたみスマートフォンだとは思えない。HONOR Magic V2は2023年に中国限定で発売された製品だが、現在入手できるブック型の折りたたみスマートフォンの中では指折りの薄型・軽量だ。折りたたんだときの厚みはわずか9.9mm。一般的な板状のスマートフォンよりわずかに厚い程度なので、どこにでも持って行ける。参考までに、直接競合するサムスンの「Galaxy Z Fold5」は、折りたたむと13.46mmの厚みになる。

　HONOR Magic V2の重さは231gだ。サムスンの最新スマートフォン「Galaxy S24 Ultra」よりも2g軽く、Googleの「Pixel Fold」と比べると50g以上も軽い。このようにHONOR Magic V2は薄くかつ軽いため、実験的な最新モデルというより、ごく普通のスマートフォンのように感じられる（米CNETのEli Blumenthal記者が2023年にレビューした「OnePlus Open」は、HONOR Magic V2のすらりとした軽量な作りに近い）。コンパクトな形状にもかかわらず、その中には2023年に話題を集めたQualcommのチップセット「Snapdragon 8 Gen 2」、望遠レンズを含むトリプルカメラモジュール、66Wの急速充電に対応した大容量バッテリーなど、フラッグシップ機にふさわしいスペックが詰め込まれている。

提供：Sareena Dayaram/CNET

　HONOR Magic V2は確かに魅力的な端末だが、欠点もある。まず、防水・防塵性能に関するIP等級は公式サイトには明記されていない（サムスンの折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold5」はIPX8を取得しており、最大30分間、水深1.5mの淡水に浸すことができる）。ほぼすべての折りたたみスマートフォンと同様に、防塵性能もない（Motorolaの「razr+」はIP52の防塵・防水性能を持ち、埃や水滴に関しては多少の耐性を有する）。Galaxy Z Fold5やOnePlus Openと異なり、スタイラスにも対応していない。

　アプリも、HONOR Magic V2のディスプレイに最適化されていないものが多い。もっとも、これは折りたたみスマートフォンに共通する問題で、同僚の記者たちも他の機種のレビュー記事で指摘している。例えば米CNNのアプリは、ダウンロードしただけではHONOR Magic V2の内側ディスプレイでは適切に表示されない。しかし「設定」パネルで解像度を変更すれば、問題は基本的に解決する。

　HONOR Magic V2は一部の欧州連合（EU）諸国と英国で、1月26日から1700ポンドまたは1999ユーロ（約32万円）で販売される。ちなみにGalaxy Z Fold5の英国での販売価格は、最安モデルの場合、HONOR Magic V2よりも高い1749ポンド（約32万7000円）だが、ユーロ建てではHONOR Magic V2よりも安い1899ユーロ（約30万4000円）となっている。

　HONOR Magic V2が2023年に中国で発売された際に、ディスプレイとハードウェアのデザインについてはレビューしたので、今回の記事ではソフトウェア、カメラ、パフォーマンス、バッテリーに注目して見ていきたい。

HONOR Magic V2の使用感

提供：Sareena Dayaram/CNET

　HONOR Magic V2の魅力は、なんと言ってもディスプレイだ。筆者が普段使っている折りたためないタイプのスマートフォンと比べると、HONOR Magic V2の広々とした内側ディスプレイはマルチタスクに向いている。1つのウィンドウで映画をストリーミング再生し、もう1つのウィンドウで「Instagram」を眺め、さらに3つ目のフローティングウィンドウでメールを書くこともできる。「Zoom」の画面をワード文書に重ねて配置できるので、Zoomで通話しながらメモを取ることも可能だ。

　OSは、「Android 13」ベースの「MagicOS 7.2」だ。Honorによると、MagicOS 7.2にはマルチタスクを支援する機能が多数追加されているという。特に興味をそそられたのは「Privacy Call」（プライバシー通話）だ。これは人工知能（AI）を活用した「指向性音響技術」で、音漏れ、つまり通話相手の声がボリュームによらず、周囲に聞こえてしまうことを防ぐように設計されている。ディスプレイとレシーバーが連動し、さまざまな環境に合わせて、入ってくる音声の音量を調整するという。実際に試してみたが、説明通りに機能した。

　「Magic Text」機能も導入された。これは2022年の「iOS 15」で導入された「iPhone」の「テキスト認識表示」機能を思わせるもので、画像にあるテキストコンテンツを認識し、編集可能なテキストに変換する。

5つのカメラ

提供：Sareena Dayaram/CNET

　カメラは合計5つ搭載されている。うち3つは背面カメラで、5000万画素のメインカメラ、5000万画素の超広角カメラ、そして2000万画素の望遠カメラだ。ディスプレイを折りたためるという特長を活かし、背面カメラでセルフィーを撮ったり、カバーディスプレイをファインダーとして使ったりすることもできる。この3つの背面カメラの他に、カバーディスプレイに1600万画素のカメラが1つ、内側ディスプレイに1600万画素のカメラがもう1つある。実際に撮影した写真をいくつか紹介しよう。

明るい環境では鮮明な写真が撮れる
提供：Sareena Dayaram/CNET

超広角カメラで撮影
提供：Sareena Dayaram/CNET

デフォルトの設定で撮影
提供：Sareena Dayaram/CNET

2.5倍ズームで撮影
提供：Sareena Dayaram/CNET

10倍ズームで撮影
提供：Sareena Dayaram/CNET

40倍ズームで撮影
提供：Sareena Dayaram/CNET

屋内で撮影。カメラはテーブルのわずかな埃や壁にある影を捉えている
提供：Sareena Dayaram/CNET

筆者の飼い犬ロッキーは、実際にはこれより暖かみのある毛色をしている
提供：Sareena Dayaram/CNET

　総じて言えば、HONOR Magic V2で撮影した写真は十分に高画質だが、スマートフォンの最高レベルとまではいかない。明るい場所で撮った写真は問題ないが、室内や光量の少ない環境では、画像が暗めに映ることが気になった。しかしプロの写真家でもない限り、日常のスナップを撮る分には何の支障もないだろう。

　公平を期すために書くと、これはHONOR Magic V2に固有の問題ではない。折りたたみスマートフォンは、同じ価格帯の一般的なスマートフォンと比べて、カメラが弱点になりやすい。というのも、折りたたみスマートフォンの価格の大部分は、Galaxy S24 Ultraや「Pixel 8 Pro」、「iPhone 15 Pro Max」に搭載されているような最高級のカメラではなく、マルチタスクを可能にする大きくて柔軟なディスプレイを実現するためのコストだからだ。

バッテリーとパフォーマンス

　HONOR Magic V2の薄いフレームには、5000mAhのシリコンカーボンバッテリーが内蔵されている。今回のレビューでは、短時間の通話、ソーシャルメディアの閲覧、メールのチェック、「YouTube」動画や音楽の視聴など、ほどほどの負荷で使用してみたところ、バッテリーは1日持った。

　HONOR Magic V2は2023年に発売されたモデルなので、プロセッサーには当時のQualcommの最上位チップ、Snapdragon 8 Gen 2が採用されている。今回のレビューでは、「原神」のようなグラフィック重視のゲームをプレイしたり、Zoomでビデオ通話をしながらメモを取ったりしてみたが、ほぼどんなタスクも問題なく処理できた。下の表は、他の折りたたみスマートフォンとパフォーマンスを比較したものだ。

まとめ

　全体として、HONOR Magic V2は非常の出来のいい折りたたみスマートフォンだ。ハードウェアは洗練されており、これまで使ったことのあるブック型の折りたたみスマートフォンの中では最も携帯性が高い。軽快なプロセッサー、望遠撮影など多用途に使えるカメラシステム、折り目の目立たない内側ディスプレイ、急速充電など、スペック面も充実している。