パナソニック エレクトリックワークス社と福岡地所は、次世代オープンビルプラットフォーム(ビルOS)に関する実証実験を開始している。空調、照明、エレベーターなどの基本設備の操作とリアルタイムデータと蓄積されたデータ群をAPIとして提供することで、建物全体を一元管理し、エネルギー使用量の減少や清掃スタッフの仕事効率化などに結びつける。
実証実験は、2023年12月1日から2024年3月31日までの約4カ月間、福岡市中央区の「天神ビジネスセンター」で実施。パナソニックがクラウドベースのビルOSとAPI環境を提供し、福岡地所はプラットフォームの基盤となるビルの設備、データの提供を担う。
「最近、オフィスビルや病院など、非住宅の建物には『ビルオートメーションシステム(BAS)』と呼ばれるシステムが導入されている。これによって建物を一元管理し、省エネや省人化につなげることを目的だが、BASは建物ごとに完結したシステムのため、機能の拡充や短い周期でのアップデートが難しかった。今回の実証実験は、このデータをクラウド上で管理し、エネルギー管理や遠隔監視、複数拠点を一元管理していく。これにより、建物のシステム、設備だけでなく、テナントで使用されているシステムや働いている人のデータについても、プラットフォーム上でデータ化でき、それを活用することで、新たなサービスを生み出せる。オープンな形で提供したい」(パナソニック エレクトリックワークス社ソリューションエンジニアリング本部技術営業統括部の福田明史氏)と狙いを話す。
今回の実証実験では、小型ビーコンとゲートウェイを使用し、ビーコンが発信する電波をゲートウェイが受信し、4G回線を通してクラウド上にデータを蓄積することで位置情報を把握する。ビーコンは、業務用エレベーター内に両面テープで固定したほか、清掃スタッフ30名と管理スタッフ10名に身につけてもらい、スタッフの所在地やエレベーターの稼働状況を可視化しているという。
2台ある業務用エレベーターは、テナントとして入居している飲食店の食材の搬入に使われこともあり、混み合うと5~10分待たされることもあるという。将来的にはエレベーターの所在を可視化することで、清掃スタッフは待ち時間を別の作業時間にあてるなど、効率的な仕事につなげるとのこと。
また、トイレの清掃も、誰も使用していないのに再度清掃されるなどの無駄が生じていたが、清掃スタッフの位置を把握することで、必要な時にのみ清掃する、合理的なスタイルに変えられるという。
福岡地所 建築部長の田代剛氏は「今回の実証実験にあたり、いろいろなメーカーと対話したが、パナソニックとは根底にあるビジョンに共感していただき、今回のファーストステップが踏み出せた。お声がけしてから実証実験まで約1年間という期間があったが、定期的に実施ベースでのミーティングを重ねられたのも大きい」とパナソニックと手を組んだ理由を明かした。
福岡地所 アドバイザーの荒井真成氏は「私自身、米国や中国、インド、欧州などさまざまなスマートビルディングのプロジェクトに関わってきたが、どれも投資が大きいわりに結果があまりついてこなかった。こうした状況に対し、ビルに関わるみなさんがアイデアを持ち寄って、アプリなどを作れるようなプラットフォームを作ることが解決策だと考えた。このお話を福岡地所の方に話したら盛り上がり、今回の発表までこぎつけた」と実証実験のきっかけを説明。
加えて「目指しているのは、外部のソフトウェア開発者のビルアプリの開発に参画できるような環境作り。ビルの入居者、来館者、管理者がアプリを使い、自分流に快適に使える環境を提供していきたい」とした。
(取材協力:パナソニック エレクトリックワークス社)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス