2023年8月21日、福井県大野市の南六呂師エリアが、星空の世界遺産と呼ばれる「星空保護区」に認定された。これは光害対策に取り組む世界最大のNPO団体ダークスカイ・インターナショナルが認定するもの。星空保護区としては国内で4例目となり、今回はアジアで初めてとなる「アーバンナイト スカイプレイス」部門での認定となった。この認定を機材面で支えたのがパナソニック エレクトリックワークス(以下EW)社の照明機材だ。
福井県の東側に位置する大野市は、市内の87%が広大な森林ということもあり、日本でも有数のキレイな星空が堪能できるエリアだという。実際に2004年から2005年にかけて環境省が実施した全国星空継続観察では日本一に選ばれている。
大野市では2018年より、福井工業大学と相互連携協定を締結。美しい星空を活かした地域活性化の取り組みをスタート。2019年より、星空保護区の認定が受けられる可能性調査を始め、2021年に、星空保護区申請チームを編成。福井市、福井県、福井工業大学が連携して、南六呂師エリアにおいて、「星空保護区」認定を目指した。
ダークスカイ・インターナショナルが認定する「星空保護区」は光害の影響のない暗い自然の夜空を保護するための取り組みを称える制度だ。認定を受けるためには、光害対策が施された屋外照明の設置や光害と星空に関する教育活動など、さまざまな条件がある。
例えば、屋外に設置する照明は上方(空)への光の漏れが一切ないことが求められる。また、このほか色温度は3000K以下で青色光が少ない電球色であることなども条件だ。機材の条件だけでなく、実際に星空を見て、何等星まで見えるかのチェックがある。
しかし、生活する上では安全のためにも道路などには十分な光が必要となる。南六呂師が「星空保護区」を認定されるには、市民が生活しやすく、それでいてダークスカイ インターナショナルが認定する屋外照明を設置する必要があった。
そこで導入されたのが、パナソニックEW社のDarkSky認証を取得した街路灯だ。パナソニックは防犯灯や街路灯において、2020年に国内メーカーで初めてDarkSky認証を取得し、同じく「星空保護区」の認定を受けた、岡山県井原市美星町への導入実績がある。
大野市では2018年より、段階的に南六呂師の道路照明をDarkSky認証タイプに切り替えていった。通常の道路照明取り付け角度は30度の斜めになっており、広い範囲が照らせるようになっているが、その分上方にも光が漏れる。また色温度も8000K(ケルビン)と非常に明るい。
それに対して、「星空保護区」の認定のために導入されたパナソニックEW社のDarkSky認証防犯灯の取り付け角度は0度ではまっすぐになっており、上方に光が漏れない仕組みとなっている。さらに色温度は暖色系でまぶしくない、色温度3000Kを採用している。
実際に、DarkSky認証防犯灯を取り付けた南六呂師エリアを夜間に訪れたが、足元などはしっかり照らされているものの、夜空はしっかりと暗かった。訪れた日は残念ながら曇天だったため、星は見えなかったが、道路や足元を照らしながらも、空はしっかり暗かった。
六呂師高原内にあるミルク工房奥越からは福井市の町の明かりが遠くに見え、夜空と都市の明かりにコントラストが幻想的だった。都市部から近いのに星空が楽しめるのが「アーバンナイト スカイプレイス」認定の理由だ。
ミルク工房奥越では、夏場にはハンモックに包まれながら星空を観望する体験の「星空ハンモック」を実施。また、施設内ではドーム型プラネタリウムで星空の学習もできる。これらの星空の学習、啓蒙も「星空保護区」認定には欠かせないのだ。
さらに大野市は同じく高原内にある福井県自然保護センターの屋外照明もあわせて改修。星空保護区認定の条件ではないが、エントランス天井にある照明をパナソニックEW社の上方光束のない照明に切り替えることで、光害対策をしている。
福井県大野市は、現在、中部縦貫自動車道の建設が進んでおり、10月28日には勝原インターチェンジから九頭竜インターチェンジ間が開通。2026年の全線開通を目指している。環境庁(現環境省)出身の大野市市長の石山志保氏は、2018年の市長就任以降、大野市の星空保護への取り組みを積極的に発信してきた。今回の「星空保護区」認定は2018年以降の取り組みによる成果だと言える。
「2018年に市長に就任したとき、高速道路がつながるという話があった。高速道路がつながることはチャンスでもあるが、素通りされるかも知れない。なんとか大野に寄ってもらう地域資源はないか考えたときに、それは“日本一美しい星空”に選ばれたことだと考え、予算を組み始めたのが始まりだった。そうして、福井工業大学さん、パナソニックさん、多くの関係者の皆様のおかげで2023年、『星空保護区』の認定を分かち合うことができた。大野市の星空を観光資源の1つとしてアピールしていきたい。さらに大野市には、“天空の城”として有名な「越前大野城」や江戸時代から続く城下町、九頭竜湖など、さまざまな魅力的なスポットがある。これらを組み合わせて、四季の風景をストーリーとしてPRしていきたい」(大野市市長の石山志保氏)
石原市長によると、市街地である大野市役所でも晴れた日には満天の夜空が楽しめるそうだ。そして、星空保護区に選ばれた南六呂師エリアなら、さらに上方光束のない環境で星空が堪能できるのだ。
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