2023年のアップルを振り返る--予想外の発表が続いた1年

Bridget Carey (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2023年12月22日 07時30分

 2023年は、Appleのニュースに関して間違いなく異例な年だった。この1年間に同社が発表した意外な内容の多さには、筆者も感心した。それは、毎年恒例のアップグレードが施された「iPhone」や「MacBook」だけの話ではない。15年以上前からテクノロジー系の記者をしている筆者から見て、Appleはほぼいつも意外性が少ない企業だった。

Vison Pro
提供:John Kim/CNET

 同社はこの1年の間に、世の中を沸かすような決定をいくつか下した。新しい事業分野に参入する一方、すでに終わったと思われていた製品を復活させ、全く新しいソフトウェアとハードウェアで勝負に出たのだ。

 そこで、予想外の新情報が立て続いた2023年の中でも特に大きかったAppleのニュースと、これからの世界を形作りそうな流れを振り返ってみよう。

  1. 「Vision Pro」がついに現実に
  2. 「Apple Music Classical」が好スタート
  3. USB-Cの搭載、「ProRes」動画
  4. 「HomePod」が復活
  5. 「ファインウーブン」ケースをめぐる混乱
  6. スポーツ番組の配信強化

「Vision Pro」がついに現実に

 2023年のAppleに関して最大のニュースといえば、もちろん「Vision Pro」ヘッドセットだ。うわさや報道は何年も前からあったが、6月に開かれた同社の開発者会議「Worldwide Developers Conference(WWDC)」で、最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏からようやく発表があった。

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提供:Apple

 発表では、Vision Proの外観を含めたプレビューがあり、3499ドル(約50万円)からという価格も明らかにされた。装着してどんなことができるか、操作方法はどうか、装着した姿はどう見えるかといったことも分かっている。だが、Cook氏をはじめとするAppleの経営陣がVision Proを使っているところはまだ披露されていない。ごく一部の報道関係者、例えば米CNETのScott Stein記者などが、短時間のデモで体験しただけだ。Vision Proには、「visionOS」という独自のソフトウェアも用意されている。

 Vision Proが特に異例なのは、かなり前から多くの期待が寄せられていることだ。しかし、Appleの新製品に関しては、発表があってから発売まで待たされるのは今回が初めてではない。初代iPhoneは、2007年1月の「Macworld」で発表されたが、発売はその6カ月後だった。「iPad」は、2010年1月の発表から4月まで待たされたし、「Apple Watch」は2014年9月に発表されながら、発売は実に7カ月も後だった。

 この半年間には、Vision Proに関連するティーザーや開発者テストがいくつも続いた。このヘッドセットに詰め込まれているテクノロジーを踏まえれば、Vision Proは初代のiPhone、iPad、Apple Watchよりもさらに意欲的な製品だ。実際の動作など、詳細が分かるのはまだまだこれからだが、Appleに関する話題が、当面は何らかの形でVision Proを中心になされることだけは確実だろう。後は、2024年に入って発売されるまで気長に待つしかない。

「Apple Music Classical」が好スタート

 Appleは、音楽配信サービスをさらに一段強化し、「Apple Music」の登録ユーザーが利用できる追加サービスとして「Apple Music Classical」を発表した。このプロジェクトは、音楽配信の世界に伴う厄介な問題に取り組んでいる。数百年の歴史を持ち、様式も多様な500万以上の楽曲を扱いながら、クラシック音楽のライブラリーを合理的に体系化して提供する方法を見つけるという課題である。有名な作品1つだけでも何百という演奏があるうえに、ユーザーが各国語で検索できるようにしなければならないことから、プロセスはさらに複雑になる場合もある。

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提供:Apple

 このサービスが始まったとき、筆者は、Appleがクラシックファンにも、また単なる新しもの好きにも楽しめるサービスを作ったと感じた。Apple Musicとは別のアプリにしないでほしかったが、クラシック音楽は、ポップスとはデータフィールドが異なるため、独自のアプリになった。クラシック音楽に関して、Appleの手の内はこれで終わりではないだろうし、2024年に同社がこの専用アプリのサービスをどう充実させていくのか、その詳細について聞けるのかどうか、興味深く見守っている。

USB-Cの搭載、「ProRes」動画

 iPhoneでも、平素以上の変化や機能追加がいくつもあった。「iPhone 15」シリーズで、Appleは充電ポートを「Lightning」からUSB Type-C(USB-C)に移行した。これは、欧州連合(EU)がスマートフォンをはじめとするあらゆる小型デバイスについて、2024年までにUSB-Cを採用することを義務化する指令を採択したためだ。この変更によって、われわれの充電コードや関連アクセサリーの購入状況が変わってくる。

iPhone 15 Pro Maxで撮影する様子
Appleの製品発表イベント「Scary Fast」ではプレゼンテーションの動画全編が「iPhone 15 Pro Max」で撮影された
提供:Apple

 だが、2024年にはiPhoneでまた大きな変更があるかもしれない。9to5Macで最初に報じられたとおり、iPhoneは2024年から「RCS(リッチコミュニケーションサービス)」メッセージに対応するからだ。つまり、「Android」ユーザーとAppleユーザーがテキストメッセージをやり取りするときに、入力インジケーターや既読通知を表示できるようになり、セキュリティも向上すると考えられる。

 また、2023年はAppleのプレゼンテーション動画が全編、iPhoneで撮影された年でもあった。10月に開催された「Scary Fast」イベントが、「iPhone 15 Pro Max」のカメラを使ってApple ProResで撮影されたのである。Appleは、魔法のような動画を実現するためにプロ仕様の機材も多数使用したことを認めているが、「iPhone 15 Pro」シリーズで実際にここまでできるということは、iPhoneの動画撮影に懐疑的な層にも伝わったはずだ。

「HomePod」が復活

 2023年には、スマートスピーカーの「HomePod」が復活を果たすという驚きの展開も見られた。HomePodはApple初のスマートホームスピーカーとして、2018年に349ドル(日本では3万8000円)で登場した。その後、価格の引き下げを経て、2021年になるとAppleはHomePodの製造を終了し、もっとカラフルで価格も手頃な「HomePod mini」に軸足を移すと発表していた。

HomePod
提供:Chris Monroe/CNET

 ところが2023年1月、AppleはそのHomePodの第2世代を発表してわれわれを驚かせたのである。外見は初代モデルとほとんど変わらないが、内部の変更によって音質が向上した。第2世代のHomePodは、セットトップボックスの「Apple TV 4K」と連携させることで、ホームシアター環境を充実させるデバイスと位置づけられている。

 Appleではどんな製品でも復活の可能性があるということが、この一例で示された。ということは、「iPod」の復活もあるのだろうか。その可能性は捨てきれないが、形は違うものになるのかもしれない。

「ファインウーブン」ケースをめぐる混乱

 2023年、Appleは環境保護に向けても大きな動きを見せた。2030年までに全製品でカーボンニュートラルを実現すると宣言し、Apple Watchが同社初のカーボンニュートラル製品になると発表したのである。ただし、これには注意しなければならない点がある。Apple Watch用のリサイクル素材でできたスポーツループタイプのバンドを購入する必要があるからだ。

iPhone 15 Pro Maxと15 Pro
iPhone 15 Pro Max(左)と15 Proにファインウーブンケースを付けてから1週間経過した状態
提供:Patrick Holland/CNET

 また、iPhoneでもリサイクル素材の利用を増やし、革製アクセサリーの販売は停止したこともAppleは発表している。その代替として登場したのが、「FineWoven」(ファインウーブン)と呼ばれる製品だ。ファインウーブン素材のケースは、リサイクル素材を68%使用していることから、革製のiPhoneケースより環境にやさしいというのが売り文句になっている。

 だが、Appleが皮革に代わる製品を作り、それが59ドル(同9980円)するとなると期待は高くなるが、実際にケースを手に取ってみると、たちまちその期待は裏切られる。ファインウーブンケースは感触が革製ケースほど良くないうえに、触った跡がつきやすく、鳴り物入りで登場したにもかかわらず失敗作になってしまった。

 この一事でAppleの環境への取り組みが頓挫しないことを願っている。Appleにとって、製品やアクセサリーの環境適合をさらに進めるのは重要なことだ。ファインウーブンの失敗は、何よりもマーケティングと価格設定における教訓となった。

スポーツ番組の配信強化

 Appleは2023年から「Apple TV+」を米プロサッカーリーグであるメジャーリーグサッカー(MLS)の視聴拠点として押し出すために、大規模な投資を行った。その結果Apple TVは、今後10年間、MLSの全試合を放映できる唯一の配信サービスとなった。契約額は25億ドル(約3600億円)とも言われている。ただし、ここには意外なひねりがあった。

サッカーの試合を映すテレビ
提供:Bobby Oliver/CNET

 2023年6月に、サッカーの世界的スーパースターLionel Messi選手がフロリダに移り、MLSチームのインテル・マイアミに移籍することを発表したのである。前年の2022年には、アルゼンチン代表をワールドカップ優勝に導いたばかりだった。Messi選手を招くうえで、Appleがひと役買ったことは間違いない。Appleは、Apple TVの「MLS Season Pass」新規契約者からの売り上げの一部を支払うという条件でインテル・マイアミに移籍するようMessi選手を勧誘したという報道もある。

 だが、何もかも順調というわけではなかった。Messi選手は、9月に脚の筋肉を痛め、連続欠場。そのため、インテル・マイアミはプレーオフに進出できなかったのである。それでもこれは、スポーツと配信のどちらの世界においても発想を変えさせる、Appleらしいニュースであることには違いない。


この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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