筆者が所有するGoogleの「Pixel Fold」は、本体を開いても、完全に平らにはならない。まるでピースがぴったりはまらないパズルのようだ。気になって仕方がない。
YouTuberのMichael Fisher氏は5月、GoogleのエンジニアがPixel Foldの柔軟性に限界があることを認めた、と述べている。同氏がその匿名のエンジニアから得た情報に基づいて説明したところによると、Googleは「ヒンジを任意の角度にしっかりと固定できるように高摩擦のヒンジを採用した」が、その代償として、強い力を加えないと、平らに開くことができなくなったという。Fisher氏は自身のハンズオン動画で実際にその様子を披露している。
先頃、筆者はGoogleから、Pixel Foldの本体は180度まで開くことができるので、平らになるまで力を加えてほしい、と言われた。残念ながら、筆者が購入したモデルは、完全に水平に開くことはできなかった。延長保証を購入しなかったので、1799ドル(日本では25万3000円)の筐体のヒンジに無理に力を加えても、不安になるだけだ。もしかしたら、筆者のモデルは不良品なのかもしれない。米CNETの同僚であるPatrick Holland記者のモデルは平らに開けるが、同氏によると、それをするには2段階の動作が必要であるという。
Pixel Foldは、Google初の折りたたみスマホだ。一般的な板状のスマートフォンと異なり、折りたたみスマホは、通常の形に見えるスマホをミニタブレットに変身させることができる。本体を変形させられるので、より多様な用途に使うことが可能だ。タブレットとして使用する場合、画面が大きいので、読書や映画鑑賞をより快適に楽しめる。だが、この折りたたみ機能は、本体が重くなる、壊れやすくなる、価格が高くなる、といった問題点も伴う。Google初の折りたたみスマホは勇敢な試みではあるが、気になった点が多すぎて、サムスンの「Galaxy Z Fold5」のような洗練された競合製品の代わりにお勧めすることはできない。
本記事は、筆者個人のPixel Foldを長期間使用したレビューであり、米CNETの公式なレビューとは別のものだ。筆者が使用しているデバイスは、レビューのためにGoogleから送られたものではない。自分が購入したことを正当化したいという気持ちから公平な評価ができないのではないか、と思う人もいるかもしれないが、筆者の自我はそれほど強くないので、安心してほしい。
Pixel Foldは、美しい折りたたみデバイスであり、市場で最も見栄えのよい製品だ。本体を縁取るステンレス製レールと「Porcelain」(ポーセリン)カラーの背面のおかげで、貫禄のある見た目に仕上がっている。
また、パスポートのような形状によって、このデバイスは、株価のチェックやスプレッドシートの閲覧など、重要なタスクのための機能に特化しているように感じられる。
本体が全体的に薄いので(特に筆者が以前使っていたサムスンの「Galaxy Z Fold3」と比較した場合)、日常的に使用しやすい。酷使すると、日中に充電が必要になることもあるが、バッテリーは十分に持続する。本体の重さもそれほどではない。
開いた本体を閉じたときの「パタン」という音は、高級車のドアを閉めたときのような満足感がある。
筆者は、Pixel Foldの外側のデザインを高く評価しているが、ひとたび本体を開くと、話は違ってくる。分厚いベゼルと画面中央にくる折り目は、Pixel Foldが第1世代のデバイスであることを強く思い起こさせる。内側のスクリーンプロテクターはベゼルの境界線の内側に配置されているため、スワイプする時に指先で触っている感じが気になる。徐々に縁にホコリがたまっていくため、長期間使用すると、汚く見えてしまう。
ソフトウェア面では、タブレット向けアプリとの互換性が不十分であることが懸念事項だ。発売から4カ月以上経過したが、一部のアプリは全画面表示に対応していない。例えば、「Reddit」は通常のスマホで使っているときと同じように読み込まれ、両脇に大きな空白スペースができる。「Threads」や「メルカリ」など、単に引き延ばされただけのように見えるアプリもある。真のタブレット体験だと感じられるアプリはほとんどない。
サムスンは少なくとも、アプリを画面のフルアスペクト比で実行させるソフトウェア機能を組み込んでいる。公平を期すために言っておくと、おそらくGoogleもアスペクト比を強制的に調整する機能を将来的に導入するだろう。現在、「Android 14 QPR1」ベータ版アップデートで、その機能が提供されている。
通常のスマホと比べて、折りたたみデバイスが真価を発揮するのがマルチメディアだ。例えば、「YouTube」や「Netflix」のアプリの体験は素晴らしい。本体を回転させて横向きにし、90度の角度に開いて卓上に置く、つまり、本体の下半分を土台として使用するテーブルトップモードの場合は特にそうだ。NetflixやYouTubeのアプリでは、ディスプレイの上半分に動画が表示される。だが、別の動画配信サービスの「Max」に切り替えると、画面中央の折り目の上に動画が表示されるため、テーブルトップモードをやめて、本体を立てかけるために本か何かを探すことを余儀なくされる。本体を完全に開いた状態で、コンテンツを表示させなければならないからだ。
そして、筆者のPixel Foldは完全に平らに開くことはできないため、わずかに角度がついた状態でRedditや「Instagram」をスクロールすると、真ん中の折り目付近で画像が歪んで見える。
複数のアプリを並べて実行できることも、折りたたみデバイスの大きな利点だ。ただし、Pixel Foldには制限がある。画面上に配置できるアプリは2つまでとなっている。ほとんどの場合、これで十分だが、サムスンのデバイスでは、3つのアプリをさまざまなレイアウトで表示させることができる。Pixel Foldを縦向きで使用する場合、2つのアプリは横ではなく縦並びにしかならない。
ソフトウェア面で他に気になった点としては、ログイン画面でテキストフィールドに文字を入力した後、キーボードが自動的に消えないことや、自動回転が機能しない場合があることなどが挙げられる。
Pixel Foldの折りたたみディスプレイの下には、Googleの「Tensor G2」チップが内蔵されている。これは、2022年の「Pixel 7」に搭載されているのと同じプロセッサーだ。2022年の時点で、Tensor G2は性能面ですでに「Snapdragon 8+ Gen 1」に後れを取っていた。2023年の現在、Tensor G2は1800ドルもするデバイスに搭載するようなチップではない。
確かに、ドキュメントの閲覧やウェブブラウジングといった一般的なユーザーのタスクに関しては、Tensor G2で何も問題はない。「消しゴムマジック」などの人工知能(AI)を活用した写真処理機能も問題なくこなす。だが、ゲームをプレイすると、処理に苦戦する。ゲームと言っても、家庭用ゲーム機レベルのグラフィックを備えた「崩壊:スターレイル」のようなゲームではなく、多少のアニメーションを含む子供向けカードゲームの「遊戯王 マスターデュエル」などだ。2208×1840ピクセルの画面でゲームプレイを処理するのが簡単な技術でないことは理解している。しかし、メニューのアニメーションも滑らかに表示されないうえに、応答時間にも顕著な遅延が発生するため、低品質モードに切り替えざるを得なくなる。
カメラに関しては、間違いなく合格点だ。とはいえ、筆者が2023年初頭に使用していた「Pixel 7 Pro」には及ばない。高精細で鮮明な写真を撮影するPixel 7 Proの能力には、いつも驚かされていた。サムスンの「Galaxy Z Fold」のような折りたたみデバイスは通常、本体の厚みとコストを削減するために、質が少し劣るカメラを搭載している。Pixel Foldも例外ではない。Pixel Foldで撮影した写真を何枚か掲載しておこう。
どの折りたたみデバイスを買えばいいか、と聞かれたら、筆者はOnePlusの「OnePlus Open」かサムスンのGalaxy Z Fold5のどちらかを勧めるだろう。どちらも十分に洗練されたデバイスであり、ハードウェアは良質で、ソフトウェアの最適化も優れている。これらに比べると、Pixel Foldはまだベータ版のように感じられる。
「Pixel」シリーズが大好きな人は、Googleが「Pixel Fold 2」でどのような新機能を用意しているか判明するまで待つのが得策だろう。筆者は、Googleがデザインやソフトウェアの面で気になった多くの点に対処してくれることを期待している。残念ながら、Pixel Fold 2には、「Tensor G3」チップが搭載される可能性が高い。Tensor G3は2022年の「Snapdragon 8 Gen 2」のパフォーマンスにまだ追いついていない。Googleのチップ開発はそれほど後れている。
少なくとも、Pixel Fold 2が登場するまで待てば、「Pixel 8」や「Pixel 8 Pro」と同様に、7年間のソフトウェアサポートを受けられる可能性がある。現行のPixel Foldでは、5年間のソフトウェアサポートが約束されている。
だが、本当に高性能なPixel Foldを手に入れたいのなら、2025年まで待つ必要があるかもしれない。報道によると、「Tensor G5」はGoogle初の真のカスタムチップになる見通しだが、数年の遅れが生じているという。また、Googleは自社のフラッグシップチップを最初にメインのPixelシリーズで採用するため、Tensor G5を搭載したPixel Fold 4が登場するのは2026年になるかもしれない。それまでに、サムスンとOnePlusは、Googleとの差をさらに広げるチャンスがあるということだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス