スマートフォンの耐水性は、極めて重大な影響を及ぼすことがある。デバイスに飲み物をこぼしたことがある人ならご存じのように、ナプキンでさっと拭けば済むか、スマホショップまで足を運んで高い修理料金を請求されることになるか、という違いを意味するからだ。かつて、防水機能は、建設作業員やダウンヒルマウンテンバイカーなどに向けて設計された、がっしりとして頑丈な、ゴム素材で覆われたスマホにのみ搭載されていたが、現在では、「iPhone 15 Pro」や「Galaxy S23 Ultra」など、ほとんどの主流スマホが何らかの耐水性を備えている。Googleのお手頃価格の「Pixel 7a」もそうだ。
ただし、すべてのスマホが水没に耐えられるわけではなく、液体の近くで使うことは避けた方がいい機種もある。ほとんどのスマホは、プールで泳ぎながら使用すべきではないし、海の中で使用することなど、もってのほかだ。最近、スマートフォンを購入しようと思って、いろいろな機種を検討した人なら、「耐水性」や今では一般的になったIP67等級、IP68等級、IPX8等級といった用語を目にしたはずだ。だが、これらの等級は実際にどういう意味なのだろうか。そして、もっと重要なことに、購入したその新しい機種は、どの程度の防水性を備えているのだろうか。
まず、これらの専門用語について詳しく見ていこう。
侵入保護(IP)等級(国際保護等級とも呼ばれる)は、国際電気標準会議(IEC)によって定められた規格だ。IECによると、この規格は「電子機器の筐体で提供される保護の程度を分類する制度」として策定されているという。
保護等級の最初の数字は、砂やホコリなどの固形異物の侵入に対する保護の程度を表す。この保護等級は0(最低)~6(最高)までの7段階に分類される。
2つ目の数字は、湿気や液体の侵入に対する保護の程度を表し、保護等級は0(最低)~8(最高)までの9段階だ。
IPX8のように、IP等級の数字がXに置き換えられることもある。そうしたケースでは、企業がテストの詳細を公表していないため、等級の数字がXに置き換えられている。つまり、IPX8等級のデバイスは水没に耐えることができるが、ホコリなどの粒子に対する公式の保護等級は取得していない。
iPhone 15 ProはIP68等級を取得しているため、ホコリの侵入を防ぎ、一定の水没にも耐えられるということだ。Galaxy S23 UltraもIP68等級に準拠している。そう聞くと、両製品は同等の耐水性を備えていると思い込んでしまいがちだが、実はそうではない。ここがややこしいところだ。
IP等級の8を取得する条件として、IECは、デバイスが水深1m以上で30分間耐えられることを求めている。それ以上の耐水性は、メーカー次第だ。Galaxy S23 Ultraは最大水深1.5mで30分間耐えられる。一方、Appleによると、iPhone 15 Proは最大水深6mで最長30分間耐えられるという。したがって、IP68等級のスマートフォンは水深1mで30分間という最低条件をクリアしているが、ユーザー側で詳細を確認して、自分の機種の耐水性を正確に把握することが大切だ。
iPhone 15 Proは水深6mまでの耐水性を宣伝されているので、水着に入れたままプールで泳いでも問題ないと思う人もいるかもしれないが、できるだけ水に近づけないようにするのが賢明だろう。IP等級は、管理された状況下、つまり、静止した水の中でテストされている。スマホを水中で動かすと水圧が増して、水が本体内部に侵入し、修復不可能な損傷を与える可能性が高くなる。
さらに、IPの試験は真水を使って実施される。ほとんどのプールには、塩素などの化学物質が加えられているため、自分のスマホの公称の耐水性と実際の耐水性に違いが生じる可能性もある。また、海水は絶対に避けた方がいいだろう。海水は、充電ポートの金属部品の劣化など、さまざまな問題を引き起こす可能性がある。
使っているスマホが最高のIP68保護等級を備えている場合でも、緊急時の予備機能のように考えることをお勧めする。スマートフォンはシュノーケリングをしながら使うことを想定して設計されているわけではないので、スマホのカメラを使ってヒトデなどの写真を撮ろうとするのはやめよう。また、自撮りで高所から水中の深いところに飛び込む「TikTok」動画を撮影するのもやめたほうがいい。防水機能は、飲み物をこぼすといった予期せぬ出来事や、土砂降りの雨の中で電話をかけるといった緊急事態を想定して搭載されている。
企業が、自社製品がIP等級を取得していると宣伝するためには、厳格な試験を受けて、製品が要件を満たしていることを証明する必要がある。こうした試験には時間もコストもかかることが多いため、そこに資金を費やしたくないという企業がいるのは当然だろう。対象の製品が低価格モデルである場合は、なおさらだ。
一部の機種では、公式のIP等級を取得せずに、「撥水」や「耐水」といった用語を使っている。これらのデバイスの中には、水分を侵入させないために、筐体をゴムで覆っているものや、撥水ナノコーティングを施しているものもある。こうした機種は誤って水の中に落としてしまっても耐えられるかもしれないが、完全に水没させないように気をつけた方がいいだろう。ただし、雨の中で通話することについては、過度に心配する必要はない。
使っているスマホに耐水性について記載がない場合は、耐水性が全くないものと考え、液体の近くで使用するときは、できるだけ注意しよう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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