「iPhone SE」は、Appleのハイエンドスマートフォンと同じ新しいプロセッサーを受け継ぎ、2022年に最新モデルが発売された。だが、同社が「iPhone SE(第4世代)」を送り出すかどうかについては、相反するうわさや報道が続いており、著名なアナリストのMing-Chi Kuo氏は、開発が中止された可能性を示唆したことさえある。
もともと、Appleが将来の製品について話すことはほとんどなく、今後もiPhone SEの新モデルを投入するかどうか、同社はその予定を明らかにしていない。それでも、「iPhone mini」シリーズの展開が終了した今、iPhone SEが小型で安価なモデルのiPhoneとして重要な役割を担っていることは間違いない。
Appleが小型版iPhoneの改良を続ける余地は大いにある。米CNETのPatrick Holland記者は、2022年モデルのiPhone SEについて、手頃な価格で昔ながらのホームボタンも備えている点を称賛した一方、「ナイトモード」非搭載とデザインが古い点を批判していた。サムスンやGoogleなど、「Android」スマホメーカーの競合各社は近年、同様の低価格帯モデルを改良し続けている。Googleの「Pixel 7a」もサムスンの「Galaxy A54 5G」も、高いリフレッシュレートやマルチカメラなど、かつては上位機種に限定されていた機能を搭載するようになった。
Appleがどう動くのか、同社から発表があるまで正確には把握できない。だが、精度で定評のあるKuo氏の予想や、その他のリーク情報、そしてAppleのこれまでの製品リリースに基づいて、同社の次期低価格スマホに関する予想をまとめてみた。
なお、今後のiPhone SEについてAppleにコメントを求めたが、回答は得られていない。
iPhone SE(第4世代)をめぐる最大の疑問は、そもそもリリースされるかどうかだろう。Kuo氏の近年の予想は、両極の間で揺れている。2019年、Kuo氏はAppleが「iPhone XR」に似たフルスクリーンのiPhone SEを発表すると予想したことを、MacRumorsが当時報じていた。しかし、それ以降の2世代にわたって登場したiPhone SEは、いずれも古い「iPhone 8」寄りのデザインだった。そのため、Kuo氏が言及していたモデルは中止または延期されたのではないかという推測も飛び交っている。
2023年に入ってからも、iPhone SE(第4世代)に関する同氏の予想は二転三転する。1月には、当初2024年の発売予定だったモデルは中止されたと報じたが、翌2月にはプロジェクトが復活したと記している。ところが、4月にはまた読みを変え、以前言及していたモデルはAppleが社内で5Gベースバンドチップとして開発していたプロトタイプかもしれないと述べている。以前のコメントでも、iPhone SE(第4世代)にこの5Gチップが採用されることを示唆していた。
しかし、さらに新しいMacRumorsの記事によると、Appleは新型のiPhone SEを確かに開発中であり、大幅なアップグレードが予想されるという。
iPhone SEのリリース間隔は、フラッグシップモデルのiPhoneほど定例化していない。初代のiPhone SEは2016年3月に登場したが、第2世代が発売されたのは2020年4月だった。最新、つまり第3世代の販売開始は、2022年3月だ。第4世代が2024年に発表される場合、最近のパターンに準ずることにはなるが、第1世代と第2世代の間が4年空いていたことを考えると、やはり確実なことは分からない。
Appleが本当に次のiPhone SEを開発しているとすれば、最近のフラッグシップモデルと同じように6.1インチディスプレイを採用する可能性がある。現在のiPhone SEは、ディスプレイが4.7インチで、上下とも太く黒いバーが占めている。iPhone 8と同じようなデザインだ。
だが、新型が登場するとして、iPhoneのどのモデルがiPhone SEのベースになるかは、やはり明確ではない。2019年のKuo氏の予想だけでなく、リークを続けるJon Prosser氏や、Display Supply Chain Consultantsの最高経営責任者(CEO)を務めるアナリストのRoss Young氏も、次期iPhone SEではディスプレイが大型化し、iPhone XRに近いデザインになる可能性があると示唆している。一方、MacRumorsの2023年9月の記事によると、iPhone SE(第4世代)は、iPhone 14の筐体を一部変更したものが採用されそうだという。
Kuo氏が2月に投稿したツイートでは、iPhone SE(第4世代)のディスプレイにLCDではなくOLEDが採用される可能性も示唆されていた。そうなれば、iPhoneの低価格モデルとしては大きな前進となる。MacRumorsが報じた内容もこれと似ており、次期iPhone SEにはOLEDディスプレイが採用されるとしている。
OLEDディスプレイは一般的に、LCDと比べて黒色が濃くなり、コントラストも鮮明になる。Appleは今まで、このディスプレイ技術を「Pro」シリーズに限定していた。しかし、Kuo氏による4月のツイートでは、同氏が次のiPhone SEと予想していたモデルは、開発用のプロトタイプだったかもしれないと述べている。
Appleの指紋認証機能であるTouch IDのファンにとっては、残念な結果になるかもしれない。MacRumorsの報道によると、次期iPhone SEには、指紋センサーではなく、最近の他のモデルと同様、Face IDが搭載されるという。2019年に報じられたKuo氏の予想とは食い違っている。当時は、次期iPhone SEは、ノッチが小さくなってFace IDを搭載せず、電源ボタンにTouch IDを搭載するという予想だった。これは、「iPad(第10世代)」や「iPad Air(第4世代)」、「iPad mini(第6世代)」でAppleが採用したアプローチと同じで、いずれもTouch IDはトップボタンに移動した。
Appleのお財布にやさしいiPhoneの次期モデルでは、「iPhone 15」と共通する仕様が採用される可能性もある。iPhone 15シリーズではポートがUSB Type-C(USB-C)に変わったが、これは欧州における新しい規則に対応するためだったので、iPhone SE(第4世代)でも従来の「Lightning」コネクターが廃止される可能性が高い。MacRumorsも、同機にはUSB-Cが搭載されると予想している。
だがMacRumorsの同報道では、もっと驚きの予想も記載されている。iPhone SE(第4世代)には、「アクションボタン」が搭載されるのではないかというのだ。ショートカットをプログラミングできる新しいボタンのことで、今は「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Pro Max」にしか搭載されていない。アクションボタンは、新しいiPhoneの中でこの2つのモデルを標準モデルと差別化している大きな違いであるため、もしそうなったら、興味深い選択だ。
同報道では、次期iPhone SEに48メガピクセルのシングルカメラが搭載される可能性も言及されている。iPhone 15でも48メガピクセルのメインカメラが搭載されたので、そうなった場合はもう1つ共通点が増えることになる。ただし、この報道が正しいとしても、上位モデルと違ってiPhone SEには背面カメラが1つしかないことになる。iPhone 15では、標準の2モデルに広角と超広角のカメラ、Proの2モデルに広角、超広角、望遠のカメラが採用されている。
iPhone SEは通例、最新のフラッグシップモデルと同じプロセッサーを搭載する。例えば、2022年のiPhone SEは、2021年9月に発表された「iPhone 13」と同じチップを使っている。Apple製の最新モバイルチップを採用するという点は、iPhone SEの目立つ特徴だったので、Appleがこのパターンを外してくるとは想像しにくい。
ただし、Kuo氏は次期iPhone SEがApple製の5Gチップを採用する可能性も示唆している。とはいえ、同氏はその後自身の読みを修正し、想定したモデルが実は5Gチップをテストするための開発用プロトタイプかもしれないと述べているので、この予想が今も妥当かどうかは判断が難しい。MacRumorsも、iPhone SE(第4世代)はApple製の5Gモデムを搭載すると報じている。
Appleは、2019年にIntelのモデム事業を買収した。そのため、今後はQualcommからの供給に依存せず、最終的には独自の5Gモデムを開発するだろうという推測はあった。独自のチップを製造できれば、Appleは製品発表のタイミングについても製品の機能についても、はるかにコントロールしやすくなる。このアプローチは、主な製品ラインですでに進められている戦略の一環として、重要な役割を果たしている。Appleの今後の計画は明らかにされていないが、QualcommのCEOであるCristiano Amon氏は、3月に応じたCNBCのインタビューの中で、Appleが2024年に自社製モデムを使い始めることを予想していると語った。
次で第4世代となるiPhone SEは、ここ数年で最も期待の高い新型iPhoneになるのかもしれない。ひとえに、全く予想がつかないからだ。それでも、リーク情報やうわさ、各種報道が正しければ、登場が2024年になるか2025年になるかはさておき、Appleの低価格iPhoneがデザインの点でも機能と画面サイズの点でも、飛躍的に進歩することは間違いなさそうだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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