増え続ける「手元でできること」に対応できるデバイスを--ASUSに聞く日本の重要性とこれから

 台湾PCメーカーのASUSが、日本市場へのコミットメントをさらに強めている。

 デスクトップPCやノートPC、周辺機器に加えてスマートフォンを開発する同社は、すでに日本国内で大きな存在感がある。4月にはさらに、およそ90人もの日本メディアを台湾本社に招待し、100種類以上の新製品を一挙に発表した。6月14日には「Windows」ほかさまざまなゲームが遊べる携帯型PCゲーム機「ROG Ally」(アールオージー エイライ)を日本で発売した。

 世界から見れば市場としては決して大きいとは言えない日本。しかし、同社はAPACのなかでも、特に日本市場に重視した戦略をとっているという。なぜそこまで日本にこだわるのだろうか。

 ASUSに入社して約10年 、インドと韓国でゲーミングをはじめとするコンシューマー向けPC製品のマーケティングや企画を担当した後、2023年1月からはASUS JAPANで日本のコンシューマー製品全般の統括部長を務めるデビッド・チュー氏にインタビューした。

ASUS JAPAN システムビジネスグループ コンシューマ事業本部 統括部長 デビッド・チュー氏
ASUS JAPAN システムビジネスグループ コンシューマ事業本部 統括部長 デビッド・チュー氏

日本での成功はAPACでの存在感アップに

――コロナ禍を踏まえたうえで、近年のノートPC市場におけるトレンドやASUSの取り組みについてお聞かせいただけますか。

 私が把握している限りでは、コロナ禍前は、オンラインストアの売り上げはインドで30%、韓国で70%と大きな割合を占めていました。一方、日本はコロナ禍前はオフライン、つまり量販店などでの販売が強い状態でした。しかし、コロナ禍に入って全世界でオンラインの売り上げが増えてきたことに伴い、日本でもオンラインで購入する層が拡大しています。

 3年間のコロナ禍でみなさんの働き方が大きく変化し、ノートPCなどのデバイスに対する要求が高くなってきていると実感しています。特に、テレワークが広がったことでオンライン会議ツールと同時に他のアプリケーションを動かすなど、マルチタスクをこなすために自分のPCへ高いスペックを求めるようになってきました。そのため、メーカー各社がよりスペックの高いPCを開発し、価格帯もそれに応じて高くなってきています。

 もう1つ、コロナ禍でのASUSの日本における大きな変化としては、政府が推進するGIGAスクール構想の影響で、学校での「Chromebook」の導入が広がったことです。ASUSは当初から日本市場のChromebook製品に注力しており、市場調査会社のGfkの数値では、現在のChromebookの国内シェアで1位となっています。学生ユーザーが最初に触れたPCがChromebookとなることで、プライベートのコンシューマー市場でもChromebookの販売が伸びる、という結果につながっています。

 Chromebookの新機種は、現在も準備しています。2023年は量販店などでのChromebookの販売も拡大していきます。ただ、これまでは量販店様とのお付き合いが多かったのですが、量販店様自身がオンラインストアを拡充しているため、オンライン販売の面ももちろん支援していくつもりです。

――4月に日本のプレス向けの大規模ツアーを実施し、そこで100種類以上の製品を発表しました。なぜそれほどまでに日本に注力するのでしょうか。

 日本市場はアジア、APACのトレンドを代表する市場で、日本で成功すれば、APACの他の国においてもASUSの存在感を高めることができると考えています。そのためにはまず、メディアの方々を通じて露出したい、あるいはメディアの方々からフィードバックをいただきたい、という狙いがありました。ASUSは従業員1万5000人のうち、3分の1となる5000人がエンジニアです。開発力の高い、革新的な製品を生み出し続ける企業であるということをみなさんに知っていただきたかった、というのも理由の1つです。

 その場では数々のハイスペックなノートPCを発表しましたが、日本はアニメ、コミックなど世界に代表するコンテンツがあり、それに関連してクリエイターの方も多く、クリエイターニーズの高い国でもあります。そうしたクリエイターの方にも新製品は魅力あるものになっていると信じていますし、私たちにはデスクトップPCのマザーボードを長年開発してきたノウハウがあり、ゲーミングノートPC市場でも強みがあると考えています。もちろん軽量、薄型デザインでハイパフォーマンスなノートPCは、それ以外の日本のユーザー様にも適していると思っています。


――グローバルにおけるアジア地域や日本の市場としての重要性についてはどのように捉えていますか。

 2022年の実績では、グローバルにおけるコンシューマーノートPCのメーカー別市場シェアは世界4位で、販売台数は約1500万台でした。APACにおける同市場はシェア1位で、販売台数は約400万台 となっています。日本国内に限って見ると6位となっていますが、私たちにとって大事なのはシェアや売り上げの大きさだけではないと考えています。

 APACのなかで特に重要な国は日本のほか、オーストラリア、インド、韓国です。実はこれらの国ではまだシェア1位ではないのですが、先ほどお話ししたように、それらはトレンドを作っている市場であり、そこを開拓していきたいというチャレンジング精神で私たちは挑んでいます。製品には自信をもっていますから、現在それらの国々で強みを見せているブランドにいかに挑戦し、勝ちに行くかが重要です。

 そのための戦術として、たとえばキーボードを取り外してタブレットとしても使える2in1タイプのゲーミングPCなど、市場でまだあまり見たことのないもの、新しいカテゴリーのものを開拓する――現地のブランドに勝つという意味では、そういった活動が大きなポイントとなると考えています。

 6月に発売する「ROG Ally」もその1つです。この製品は、私たちとして日本市場で自信をもって展開できる、そしてユーザー様も受け入れてくれるモデルだと信じています。同じ製品でも地域ごとで売れ行きは異なりますが、ASUSが常に求めている日本での成功を達成したいですね。

3つの「TIME」を強化、魅力あるものにする携帯ゲーム機「ROG Ally」

――今後の日本市場に向けた注力ポイントや注力製品などを教えてください。

 まず、例にも挙げた新しいカテゴリーとなる携帯型PCゲーム機のROG Allyは、2023年下半期で一番注力したい1台です。私たちとして最適なパフォーマンスを発揮できるものとして、「Windows 11」とAMDのAPU(GPU内蔵CPU)を選択し、ASUSのこれまでのノウハウを詰め込んだ1台になっています。

 私たちは、日本市場ではすでにゲーミングPCのシェアが1位ですが、そこにとどまるのではなく、もっと多くの皆さんにPCゲームの楽しさを知ってもらいたい、そう思って開発しました。ROG Allyが1台あればPCゲームも、クラウドゲームも、(「Google Play Games」などを通じて)Androidのゲームアプリもプレーできます。1台のゲーム機で数多くのゲームを遊べるのが特徴の1つです。

 このモデルのキャッチコピーは「ME TIME、WE TIME、PRO TIME」です。「ME TIME」は自分1人で楽しめる時間、「WE TIME」は友人や家族と一緒に楽しめる時間という意味で、「PRO TIME」はプロフェッショナルな用途にも使えるという意味になります。

 「PRO TIME」については、「ROG XG Mobile」という外付けGPUと接続することでさらに高いグラフィック性能を発揮できますし、タッチディスプレイでタブレット的に使うこともできるので、クリエイティブワークにもフィットすると考えています。1台でそういった3つの使いこなしができるというのも、私たちとして推したいポイントとなります。

――ハイパフォーマンスなPCのニーズが高まっているとのことでしたが、高性能を追求するとどうしても価格は高くなります。一方で、日本の所得は低いままとされており、高額なPCは手に入れにくいと感じる層も増えるかもしれません。

 私たちはさまざまな製品バリエーションを展開していますので、価格帯として見ても幅広い選択肢があります。たとえば、予算が15万円であれば、他社製品を含めて比較したときでも、最もコストパフォーマンスに優れた当社のモデルを選べるはずです。また、他社と同じ価格帯の製品であってもバッテリー容量が当社の方が大きいなど、プラスアルファのアドバンテージがあることも事実です。


デバイスに求められるハイパフォーマンス--「手元で簡単にできる」ための高いニーズにこたえる

――ASUSではPCデバイスをこれからどう進化させていきたいと考えていますか。

 パフォーマンスはこれからも引き続き追求していきますが、同時にモビリティ、持ち歩きのしやすさはこの数年間ニーズが高まり続けている部分で、そこに向けた活動も展開していきます。

 また、これまでは一部のプロフェッショナルしか扱わなかったような高画質な動画編集などのタスクも、AIやソフトウェアの進化により一般ユーザーでも身近になり、簡単に触れられるようになってきました。そのようにハードルが低くなっているのに反比例して、ハードウェアスペックに対する要求は高くなっています。より多くの人がより高いスペックのPCを必要とするようになってきているわけです。

 そのため、ハイパフォーマンスでありながら1kgを切るような軽量なノートPCや、優れたユーザーエクスペリエンスが得られるデバイスなどを開発し、訴求していくことになると考えています。

 また、もう1つのポイントとしては、異なるデバイスで同じコンテンツ編集をできるようにすること。手のひらに収まるスマートフォンもハイスペックになってきていますが、それを活用することで、PCとスマートフォンのどちらでも同じようにコンテンツ編集できるようにする、ということも可能になります。

 そういったマルチデバイスを用いたクリエイティブ作業のニーズも見えてきていますので、そうした分野に向けた訴求も考えられると思います。私たちにはスマートフォンの「ROG Phone」や「Zenfone」シリーズもあり、「MyASUS」というアプリを使うことで異なるデバイス間で同じコンテンツがシェアできるようになっています。近い将来は、PCとスマートフォンで同じゲームを同じようにプレーできる、といったことも当たり前になっていくのではないでしょうか。

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