グーグルは2023年5月10日、開発者向けイベント「Google I/O」を本社横の屋外ステージで開催した。2時間ちょっとの基調講演のうち、80分近くをAI関連の発表に割くなど「AI全力推し」なGoogle I/Oであった。
実はメディア向けにはGoogle I/Oの翌日に、AI関連のラウンドテーブルやセッションが目白押しであった。中には「AIパネルセッション」というメニューが設けられ「AI関連の幹部が参加する」というメディア向けの案内だったのだが、出てきたのが最高経営責任者(CEO)を務めるスンダー・ピチャイ氏だったということもあった。
担当広報も直前までピチャイCEOが登壇するとは知らされておらず、またメディアに対してもサプライズだった。筆者は本格的なデジタルカメラを持参しておらず、慌ててiPhoneでの撮影を余儀なくされたほどだった(Pixelで撮影すべきだった)。
世間的には、昨年末に突如登場したOpenAIのChatGPT、さらに同社に出資し、ChatGPTをベースに検索サービス「Bing」やMicrosoft365を進化させたマイクロソフトに、グーグルが大きく出遅れたという印象が拭えない。
しかし、ピチャイCEOは「グーグルは長年、AIに取り組んでおり、重要な技術をベースに様々なサービスを生み出し、ユーザーの生活を支援してきた。(対話型AIの)スタートだけを見て、未来が決まったと思ってもらっては困る」と世間の見方を一蹴した。
実際、筆者は10年以上、Google I/Oを取材しているが、かつてはAndroidや検索サービス、地図など製品やサービス中心の発表が多かったが、最近ではAI関連の発表も数多く行ってきた。
「AIが実際に電話をかけて美容室を予約してくれる」といったサービスも出していたが「倫理的にどうなのか」という議論が巻き起こり、グーグルとしてはAIを全面に押し出した製品の発表に萎縮している感もあった。
そんななか、OpenAIが一気にスタートダッシュを決めた感があり、グーグルとしては「AIの老舗として、昨今のChatGPTブームに黙っていられない」として、今回のGoogle I/Oでは、自社のAI開発を余すところなく出し切ったように感じた。
今回の基調講演では、グーグルの対話型AIで、これまで英語しか対応していなかった「Bard」が日本語と韓国語に対応したことが発表された。
これまで言語を扱うサービスは、英語が最初でその後、ドイツ語やフランス語、スペイン語といった感じで拡大することが多く、日本語対応は結構、遅いというのが常識であった。
ではなぜ、Bardはいち早く日本語と韓国語に対応したのか。
ピチャイCEOによると「日本のレストランで夕食を食べていたら、テーブルの端と端の人が私が理解できない速度でスマートフォンでテキストチャットをして会話をしていた。日本や韓国はスマートフォンの普及が欧州よりも早かった。新しい技術の導入に貪欲な活気のある市場だからだ」と語っていた。
実はマイクロソフトがChatGPTをベースにしてBingを進化させて公開した際、日本からのアクセスが急上昇したという。
英語からドイツ語、フランス語、スペイン語に拡大するのは簡単な一方で、英語とはほど遠い言語体系の日本語と韓国語に対応すれば、それだけ技術力の証明にもつながる。こうした背景からBardはいち早く日本語と韓国語への対応を決めたようだ。
BingがChatGPTをベースにし、検索結果を要約した文章にして表示するようになった際、ネットでは「検索サービスの広告表示で儲けてきたグーグルの存在が脅かされるのではないか」と話題になった。
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