企画書や議事録の作成から小説の執筆に至るまで、ChatGPTを活用してできることや可能性ははかり知れない。転職や結婚の相談など、家族や友人よりも気軽で身近な相談相手としてのポジションも確立しつつある。今回は、不動産の査定サービス「HowMa(ハウマ)」を提供するコラビットでカスタマーサポートを担当する私が、家を売る際のChatGPTの活用方法や、ChatGPTの回答の正誤について解説する。
HowMaは、日本初のAIを活用した不動産のAI査定サービス。マンション、戸建て、土地の査定に対応しており、必要な情報を入力すれば、すぐに査定額がメールで届く。私はこれまで大手不動産会社の営業として不動産売買の仲介業務に携わり、現在はコラビットでハウマコンシェルジュとして、家を売りたい顧客の不動産売却をサポートしている。
ChatGPTがリリースされ使用してみたところ、その精度の高さに驚いた。付き合い方によっては、家を売る際の「良い相談相手」になると期待する一方、回答としては不足している情報も多かった。いくつか例に挙げながら、ChatGPTは本当に家を売る際の相談相手になるかどうかを紹介していきたい。
まず多くの人がまず知りたいと考えるのが、家を売る手順だろう。早速ChatGPTに尋ねてみた。
7つの手順を紹介してくれた。その中で、少し違和感を感じたのが、4番目の「宣伝をする」という回答だ。「あなた自身でも、SNSなどを活用して、家を売ることを広く知らせることができる」という詳細を記載している。
確かに、家を売却したいという旨をSNSで発信することは、もちろんできる。しかし、そこで物件に興味を持つ人が見つかったとしても、その後の対応を個人でするのは難しいのではないか。契約書を作成する必要があるし、不動産会社を通すことが銀行にとって安心材料となり、売り主にとってより優位な条件で融資を受けることができるケースは少なくない。仲介手数料はかかるが、不動産会社に任せた方が楽で安心なのは確実だ。
そのほかの回答については、概ね正しいと感じた。ただ、実際の流れとしては、「5.買い手を見つける」と「6.売買契約を結ぶ」の間に、手付金や引き渡しのタイミングなど諸条件の調整が必要になる。ChatGPTによる不動産売却の流れは、大きな問題がないと言える。
では、ChatGPTに「不動産会社や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします」と言われた通り、不動産会社に相談するとしよう。
問いかけてみたところ、4つのポイントが返ってきた。不動産会社を選ぶ上での基本となるポイントばかりだが、特に重視したいのは、「2.扱っている物件の種類」の部分で「不動産会社が扱っている物件の種類が、あなたの物件に合っているかどうかを確認することが大切です」という部分。これについては、不動産売却の経験がない人はわからないと思うため、知っておくと良いだろう。
もう1つ重要なのは、「4.手数料や費用」。「不動産会社によって手数料や費用が異なるため、複数の不動産会社から見積もりを取って比較することがおすすめです」と記載されている。
不動産売却の際にかかる費用は、会社によって大きくは変わらない。そのため、ここで記載されている「費用」というのは、物件の「査定金額」、見積もりは「査定書」ではないかと考えられる。ここで注意すべきなのが、査定金額は売却予想価格であり、査定金額が高ければよいというわけではない。その点、ChatGPTはどう考えているのか聞いてみる。
回答自体に間違いはないが、専任契約を結びたいがために、わざと高い査定金額を出す不動産会社も存在することを知識として知っておくと良いだろう。買い手が見つからず、どんどん値下げ交渉が入るケースは少なくないため、査定金額の根拠を聞くなど、その価格が適切かどうかを確認することが重要だ。
例えば、タワーマンションなどは部屋数が多く、物件の成約事例が多いのでわかりやすい。あえて別のマンションの成約事例など、条件が違う事例を用いて査定金額を出している場合は要注意だ。だからこそ、複数の不動産会社で査定してもらうことが必要だ。
最後に、不動産を売却する上で最も重要なポイントの1つである、不動産営業担当者について聞いてみた。
人によっては、人間性を重視しないという声もあるが、個人的には、大切な物件を預ける相手が信頼できるというのは重要だと考えているため、この回答には納得する。
実際に、不動産の仲介や、ハウマコンシェルジュという立場で、家を売却した顧客をサポートしてきたが、売却金額やスピードだけでなく、営業担当者の人間性や対応、コミュニケーション力などで顧客の満足度が左右されているのが事実としてある。
ここまでChatGPTの回答を見ると、総じて大きな間違いはないように感じる。最初に相談する相手としては、良いだろう。しかし、ChatGPTは質問には回答するが、その先の提案はしない。そこで必要になるのが、状況や感情を理解し、提案してくれる「人間」によるコミュニケーションだ。どちらか一方に依存するのではなく、ChatGPTで最低限の知識を経て、不動産会社の担当者に相談をするなどの使い方をお勧めする。
営業担当者の話に違和感を感じたらChatGPTに聞いてみる。営業担当者とChatGPTに対し、同じ質問を投げかけてみるのも良いだろう。そこで営業担当者がChatGPTと異なる回答、不動産会社に有利な回答をした場合には、その真偽について営業担当者に問いかけてみると、回答次第でその人の人間性がわかるかもしれない。
前述の通り、どちらか一方だけを信じて依存するのではなく、複数の意見を参考にし、最終的には自分自身で選択、決断することが重要だ。それを念頭におけば、ChatGPTは私たちの生活をより便利に、楽しく彩ってくれるだろう。
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