Hidden Doorは手始めに文学や映画の古典を手がけており、プレーヤーはその世界に好みのひねりを加えることができる。「最初に取り上げたのは、パブリックドメインになっている『オズの魔法使い』だ。(中略)当社のシステムに入ると、例えばオズの魔法使いの世界に、恐ろしい殺人を盛り込みたいとか、オズの魔法使いをやりたいが、楽しいおやつの要素も入れてみたい、といった希望を叶えられる」とMason氏。
では、このアイデアは、AIのどのような仕組みで実現したのだろうか。
Hidden Doorは、ゲーム内のナレーターを機能させるために、「膨大な数の物語」を学習させたAIを使っている。ナレーターは、ダンジョンマスターあるいはゲームマスター(GM)に当たる存在であり、状況や障害物についてプレーヤーに指示を出し、どう対応したいかを聞き出す。プレーヤーが希望する行動を入力すると、ナレーターがフルセンテンスで選択肢を提示するので、そこから選ぶ。プレーヤーの入力に応じてゲームが進行していき、ナレーターはそれに対する回答と新しい状況を生成する。Mason氏によると、プレーヤーが言葉で遊ぶさまざまな方法を提供し、適切な文脈でそれを解釈できるようにするのが目標だという。
ゲームする世界のルールは、知的財産の所有者によって枠が決められ、ゲームデザイナーとHidden Doorのライターとが協力して作られる。「この世界では必ずこういうことが起こる、このキャラクターは常にこう行動するはずだといった設定は基本的に任せている。そのうえで、根本的な設定と矛盾しないように、生成AIを使って空白を埋めていく」(Mason氏)
内部的には、このゲームは「調整の余地が大きい重みと設定」の要素がたくさんある、とMason氏は説明する。それによって、プレーヤーの体験としては制限がないように感じられるかもしれないが、制作側が実現したい内容ともっと一致するようにシステムを調整できるのだという。「ストーリーのどの段階でも、どのような結果になるかは予測できない。だが、その段階を調べて遡り、そこにどんな重みが設定されていたかは確認できる。語りのどの部分にプレーヤーたちが引き込まれるのかを確かめられる」。Hidden Doorのチームは、AIがストーリーを組み立てるために収集している言葉のライブラリーを調べ、パラメーターを設定するか、モデルを調整して、プレイ体験の改善を図ることができるのだ。
開発者が注視している1つの問題は、コンピューターが予期しないこと、あるいは誤ったことをしなかったかという点だ。ストーリーに意外性が感じられないといったフィードバックがあれば、それも調整可能な設定の1つになる。D&Dのダンジョンマスターは、プレーヤーが退屈していると思えばゲームのペースを調整できる。それと同じように、Hidden DoorのAIナレーターもゲームを調整して意外性を強められる。同社の開発者は、派手にしすぎることなくプレーヤーを引き付けておけるように、意外性の要素を調整することができる。
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