Rizrの開発チームは、クラムシェル型のrazrと、その小さな外部ディスプレイに詰め込まれた数々の人気機能からも多くを学んだ。「ユーザーの声に耳を傾けた。ユーザーが電話をいつ、どのように使うのかを知る上で本当に助けになった」と、Velasek氏は言う。その結果、Rizrは画面を巻き取ってコンパクトにした状態でも、5.5インチの小さな画面でフル機能を使えるようになった。
私が触ったRizrは、2週間ほど前に組み立てられ、初期テスターに配布された9台のうちのひとつだ。テスターたちは、これらの端末を週末に集中して使い、フィードバックを提供した。筆者は、このうちの2台を見ることができたが、OSは「Android」の標準バージョンのようだ。通話やデータ通信も可能であり、どの角度から見ても実用に耐えるように感じられた。
MotorolaがRizrの量産を開始したいと考えているとして――革新的なスマートフォンの場合、必ずしもそうとは限らない――同社が今、すべきことは何か。それはRizrがユーザーの良き相棒となれるように、大量の製品テストという試練を乗り越えることだ。週末に2日程度使っただけでは、何年も使い込んだ時の挙動は分からない。スマートフォンはポケットやバッグに突っ込まれ、固い場所にぶつけられ、時には水中に落とされる。同社は、Rizrに衝撃を与え、実際の利用環境で端末が受けるダメージのシミュレーションを行ったと言う。
「衝撃試験、サイクル試験は完了した。今は量産に向けて、やるべきことの洗い出しを進めているところだ」とValasek氏は言う。
Motorolaに残された難題は、この端末がディスプレイの巻き取りと引き出しにどれだけ耐えられるかを確認することだ。
プラスチック製のディスプレイを端末の外側に沿って回転させる仕組みを作り、画面を巻き取るという難題を解決したことは評価に値する。LGの巻き取り式スマートフォンは、画面の巻き取り時にほこりや画面から出る細かい粒子がディスプレイに入り込むのではないかと危惧されていた。この端末は、LGが2021年4月にスマートフォン市場から撤退したことでお蔵入りになった。Rizrにもほこりの心配はあるが、そのほとんどは端末のフレーム上を画面が移動する際に、画面の側面から入り込んでしまう可能性だ。しかし試作機のプラスチック製ディスプレイが引き出される様子を見た限り、画面と端末のフレームの間に隙間はほとんどなかった。
ほこりが気になったのは、2019年にrazrが登場した際、画面を折りたたんだり開いたりした時に、画面とヒンジの間に小さい空気の隙間ができることが指摘されていたためだ。この隙間は最近のバージョンではなくなっている上、同社には画面とフレームが完全にフラットになるように、デザインをさらに洗練させる時間もある。
一方、同社は巻き取り式スマホの需要に関する情報収集にも余念がない。
「今は市場のニーズを探り、さまざまな可能性に目を向け、吟味している。非常に刺激的な段階だ」とValasek氏は言う。
もし巻き取り式スマホの購入を検討しているなら、折りたたみの場合と同様に、従来型のスマホ並みのカメラがなくても、たとえ仕様面で劣るところがあっても、こうした新種のスマートフォンを試す価値はあるのかを考える必要がある。Rizrのハードウェアに関する質問について、Motorolaはコメントを避けた。カメラの性能はいたって普通だが、量産時には構成が変わっている可能性もある。
Velasek氏はRizrに絶大な自信を持っており、従来型のスマートフォンが同社の巻き取り式スマホより勝っている点はないと主張する。
「(従来型のスマートフォンに)これだけのことは到底できない。悪いわけではないが、(Rizrほどの)機会も、拡張性も、柔軟性もない。ごく平凡だ。でも――」と、Rizrの試作機を手に取りながらValazek氏は言った。「これは平凡ではない」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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