Motorola Mobilityは2月に開催された「Mobile World Congress(MWC)」で、巻き取り式画面スマホ「Rizr」のコンセプト機を披露した。これまでにない柔軟なディスプレイを持つ、この斬新なスマートフォンが実際に動いている様子が公開されたのは、この時が初めてだ。筆者は先日、シカゴで開かれた同社の説明会で、この巻き取り式画面スマホの試作機を触る機会を得た。Rizrという名前は、同社のクラムシェル型スマホ「razr」と同様に、同社が2000年代半ばに販売していた「動く」フェイスプレートを搭載した携帯電話シリーズ「RAZR」にちなんでいる。説明会では、Rizrの開発を支援したプロダクトリサーチャーとも話をすることができた。
筆者が触った試作機は、MWCで見たものと同じバージョンだったため、機能面の変化はない。Rizrは、クラムシェル型より少し大きいもののコンパクトな端末で、ディスプレイの一部が背面に回り込むようにデザインされている。ディスプレイを巻き取った状態では、前面ディスプレイのサイズは5.1インチだが、ロックボタンを2回タップすると背面に回り込んでいたディスプレイが前面に移動し、一般的なスマートフォンと同等の6.5インチになる。
MotorolaのデザインリサーチャーLexi Valasek氏は、集まった記者に試作機の機能を説明する一方で、記者の質問にも積極的に応じた。また、Rizrのどこに興味があるか、このスマートフォンで何がしたいかといった質問を自分からも投げかけ、次のバージョンに盛り込むべき機能に対する意見を収集していた。
「このような形のスマートフォンを作るのは初めてなので、開発を進めながら学んでいる。すべてが学びだ」と、Valasek氏は言う。
筆者は、巻き取り式のディスプレイを採用したことで耐久性に問題が出ないかと尋ねた。Valasek氏は「問題ない」と回答した上で、なぜ耐久性が気になったのかと逆に質問してきた。筆者が気にしたのは、2019年に発売されたサムスン初の折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold」の前例があったからだ。同機種は、メディアに配布されたレビュー機に耐久性の問題が見つかり、発売が約半年遅れた。それだけではない。Rizrは画面を完全に引き出した場合、本体の上部からディスプレイの先端が突き出す。いくら頑丈にできていても、この状態で落とせば無事で済むとは思えない。
しかし、Valasek氏の質問は同社が消費者のニーズや考えに関心を持っている証拠でもある。どんなに斬新なスマートフォンでも、壊すのが怖くて試せないのでは意味がない。
今回触った試作機に関する限り、ディスプレイの巻き取りと引き出しはスムーズだった。これは評価ポイントだ。動きは安定しており、不安定なところはない。とはいえ、手の中でディスプレイが伸びていくのは違和感があり、机の上に置いた状態で画面を引き出した時は、まるでブルドーザーのように画面と一緒に端末自体も動いてしまった。Valasek氏と同氏のチームは、(MWCで使用されたケースよりも端末をカバーできる範囲は狭かったが)Rizrにフィットするケースを何種類か3Dプリントしていた。これらのケースを装着すると格段に持ちやすくなり、ディスプレイの展開も明らかに快適になった。端末の保護だけでなく、使い勝手の面でも、ケースをつけたほうがいいと感じた端末は久しぶりかもしれない。
ディスプレイの巻き取り中は、うなるような低い音が聞こえた。この点が気になった記者もいたようだ。2019年に登場した初代razrが、開閉時に気がかりなほど大きい、きしむような音を立てていたことを思い出した人が多かったのかもしれない。もちろん、音を抑える仕組みはあった方がいいが、Rizrの音はうるさいと感じるほどではない。第2世代では、音の問題に対応する必要があるかもしれないが、今回はディスプレイを巻き取れるだけでユーザーは十分に感動し、音は気にしないのではないだろうか。
Rizrの気の利いた機能のひとつに、端末の上部から現れる自撮りカメラがある(実際には画面がわずかに沈むことで、隠れていた前面カメラが露出する)。さらに面白いのは、背面のメインカメラで撮影する際に、背面に回り込んだ画面にプレビューを表示できることだ。この機能を有効にしておくと、シャッターが切られる前に被写体が自分でプレビューを確認し、位置などを調整できる。
動画を横向き表示に切り替えた時などは、操作をしなくても画面が自動で伸びる。音声通話を始めると、画面がわずかに下がり(自撮りカメラの横にある)イヤホンジャックが露出するが、スピーカーに切り替えると画面は元の位置に戻る。こうした賢い動きは、Motorolaが画面の動くスマートフォンをユーザーの役に立てる方法を真剣に考えていることを示している。
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