2023年の「Google I/O」はGoogleにとって重要なものになるだろう。
同社は来週開催されるこのイベントに向けて準備を進めているが、依然として、OpenAIの「ChatGPT」の後塵を拝している。人工知能(AI)搭載チャットボットとして2022年末に公開されたChatGPTは、瞬く間にGoogleを追い越した。GoogleはChatGPTに対抗して、同じくらい目覚ましいものを提供しようと試みているが、苦戦を強いられている。Googleが一部の国で一般公開した「Bard」は、ライバルのChatGPTと比較すると、平凡な性能だ。また、ChatGPTが搭載され、刷新されたMicrosoftの「Bing」のAI検索は、インターネット検索分野でいくらかGoogleの牙城を崩しており、トラフィックが16%近く増加している。
Googleはおそらく自社のAI開発の説明にかなりの時間を費やすはずだが、「Pixel Tablet」の最新情報や、うわさされる同社初の折りたたみ式デバイスの披露など、新製品の詳細も発表する可能性が高い。
Google I/O 2023で発表されそうなすべてのことを以下で紹介していこう。
2023年のGoogle I/Oは米国時間5月10日から開催され、基調講演は太平洋時間午前10時(日本時間5月11日午前2時)に始まる予定だ。ライブ配信を視聴したい人は、Google I/Oの公式ウェブサイトで登録する必要がある。
2022年のGoogle I/Oでは、同社のAI開発が前面に押し出されていた。最高経営責任者(CEO)のSundar Pichai氏は、同社のモデルは議事録や大量のテキストを要約できるだけでなく、ジョークも理解できると語った。しかし、これらのプロダクトはどれもまだ一般に公開されていない。Googleの元社員が、同社のAIチャットボットに感情が芽生えたと言い始めた後、無理もないが、同社はこのAIチャットボットを一般の人々やメディアに公開することを躊躇するようになった。
しかし、その後、2022年11月にChatGPTが登場する。OpenAIは、Googleができなかったことをやってのけた。つまり、AIチャットボットを一般の人々に無料で公開したのである。Googleにそれを実行する能力がなかったわけではない。正確に言えば、そうするのは無責任なことだと同社は感じたのだ。Googleは、2020年12月と2021年2月に倫理的AIチームのリーダーを解雇し、何カ月にもわたる混乱を経て、最終的にAIチームを改革するという経緯があった。また、AIチャットボットが普及すれば、Googleの中核的な検索連動型広告ビジネスモデルが脅かされるおそれがあることにも注目すべきだろう。
しかし、こうしたAI製品には、対処すべき問題がいくつかある。BardやChatGPTなどのチャットボットは、オンライン上にある、人間によって書かれたテキストの膨大なデータセットから情報を抽出することで機能する。問題なのは、人間には一定のバイアスがあり、チャットボットがそのバイアスの影響を受けてしまうこともある、ということだ。チャットボットはオートコンプリート機能を大幅に強化したようなものなので、事実を正しく把握することではなく、適切な次の単語を生成することが重視される。そのため、「幻覚」、つまり、チャットボットが自信のある様子で不正確な返答を提示する状況が発生してしまうことがある。Microsoftは2023年2月、対話が奇妙な方向に進むのを避けるため、チャット回数の上限を1セッションにつき5ターン(質問と回答で1ターン)に設定した。BingのAIチャットボットがThe New York TimesのKevin Roose記者に対し、同記者のことを愛しているので、妻と別れてほしいと伝えたことなどが明らかになっていた。
GoogleがBardの公開でつまずき、株価が急落したこと、そして、サムスンが自社のモバイルデバイスでBingへの切り替えを検討している可能性がある(おそらく、BingにChatGPTが搭載されたことが理由だろう)と報じられていること考えると、Pichai氏とGoogleは、Google I/Oの講演の場を利用して、人々に強い印象を与えなければいけない。
The New York Timesの報道によると、GoogleはAIを利用した検索エンジン(開発コード名は「Magi」)の開発に積極的に取り組んでいるという。この情報を独自に検証することはできていないが、GoogleがMagiを披露したり、Magiに関してさりげなく言及したりするかどうかは、分からない。一般の人々に大々的に公開できる段階にはまだ達していない可能性もある。
いずれにせよ、複数の新しいAIプロダクトが発表され、自社のAIエンジンについて、同社が競合よりも優れていると考えるあらゆる点が紹介されることに期待しよう。
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