サムスンが先週開催した「Galaxy S23」発表イベントでは、印象的な発表がいくつもあった。だが、次期複合現実(MR)プラットフォームの計画に関してQualcommおよびGoogleと提携するという電撃発表は、ファンの意表を突くものだった。拡張現実(AR)と仮想現実(VR)、そしてMRの融合を表す包括的な用語として、「XR」技術という言葉が使われている。
2023年には、「PlayStation VR2」やHTCの「VIVE」、MetaのVRヘッドセットなどそれぞれ新しいヘッドセットの発売が予定されているほか、Apple初のVRヘッドセットも登場するかと予想されている。そんな年に、サムスンの製品(1つとは限らない)はゲームチェンジャーとなるのだろうか。そして、それはいつ登場するのだろうか。
サムスンが壇上で行った発表はひどく曖昧で、Googleの「Android」を統括するHiroshi Lockheimer氏とQualcommの最高経営責任者(CEO)Cristiano Amon氏が口にしたのは、新たな体験をもたらす新しいハードウェアとソフトウェアを送り出すということだった。だが、サムスンとGoogleのVR(およびAR)をめぐる歴史と、この分野におけるQualcommの存在の大きさから、ある程度の答えは見えてくる。Googleとサムスンが前回、2年前にスマートウォッチに関して発表した大型の提携からも、何か答えが見えてくるかもしれない。
2021年、Googleはサムスンと提携してスマートウォッチのラインアップについて見直しを始め、それが2022年秋の「Pixel Watch」にもつながった。サムスンとGoogleとQualcommという今回の提携も、ARとVRの分野で同じように展開する可能性がある。ただし今回の場合は、Googleもサムスンも、何年間か遠ざかっていたVR/ARの世界にようやく返ってくるという違いがある。
サムスンとGoogleがこの世界に戻ってくることは理にかなっており、しかも切実に求められている。その理由を説明しよう。
VRヘッドセットといえば、5年ほど前まではスマートフォンと連動するものだった。サムスンの「Gear VR」やGoogleの「Daydream View」が全盛の時代で、スマートフォンを安価なゴーグルにはめ込み、それがVRの画面として機能した。当時はまだ、おもしろい新製品といったところで、普及には大いに貢献したが、限界もあった。不思議なことに、2023年の今、スマートフォンと連動するVRヘッドセットはほぼ皆無だ。
私たちのほとんどがスマートフォンに依存して生活していることを考えると、これはもどかしく感じる。その一方で、VRはスタンドアロン化する傾向にある。「Meta Quest 2」は、対応アプリを介してスマートフォンとの連携を少しずつ進めているが、クロスデバイスの機能は十分とはいえない。
Qualcommは、以前からこの問題を独自に解決しようとしてきた。初期のARメガネと一部のAndroidスマートフォンを組み合わせて、アプリとAR体験を橋渡しするツールを開発しているほか、スマートフォンと直接接続するメガネのリファレンスデザインも発表している。
そうなると、Androidの公式なサポートがある方が話はずっと簡単だ。それに応えるのがGoogleであり、今回のサムスン、Qualcomm、Googleという提携は、VRヘッドセットやARメガネ、あるいはその両方でGoogleのサポートがどう機能するかを模索する鍵となりそうだ。
ARメガネを完全なものにしたメーカーはまだないが、ハードウェア部分に関しては少しずつ軌道に乗り始めている。一方、スタンドアロン型のVRヘッドセットは内蔵カメラを利用して現実世界の「パススルー」映像を表示し、そこに仮想現実の体験を重ね合わせて、ARを実現する最速のソリューションを作り出している。これは「複合現実」とも呼ばれており、「Meta Quest Pro」が一部のアプリで実現しているのがそれだ。うわさされているAppleの複合現実ヘッドセットも同様の仕組みで動くと予想され、2月に発売される可能性のあるHTCの「VIVE XR Elite」も仕組みは同じだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス