駐車場や店舗の屋根にドローン配送の拠点を設置すれば、すぐに商品を顧客に届けられるという簡単な話ではない。FAAは、空域に関してドローン配送と他の用途の間で適切なバランスを取ろうと努めている。
米国の空域に関する規則は、航空の黎明期にまでさかのぼり、単発のセスナの愛好家や農薬散布飛行機に対応してきた。ほとんどの航空機には、トランスポンダーと呼ばれる無線発信機が搭載されており、これが「ADS-B」と呼ばれる衛星ベースのナビゲーションおよび空域認識システムの鍵となっている。そのおかげで、ドローンの安全性を確保することが大幅に容易になるが、すべての航空機にトランスポンダーが搭載されているわけではない。
ドローン配送業界が目視監視者を必要としない大規模な運用に進出しようとする際に直面する空域の問題に対処するため、FAAは目視外(BVLOS)のドローン飛行を研究するグループを招集した。低高度空域では、トランスポンダーのない航空機はドローンに航路を譲り、トランスポンダーを備えた航空機に対しては、ドローンが航路を譲ることを義務づける、というのが彼らの提言だ。
ドローン企業はこのアイデアを歓迎している。
FAAは2023年にそれらの提言の一部を採用する方向に進むのではないか、とZiplineは予想している。Ziplineでグローバル航空規制問題の責任者を務めるOkeoma Moronu氏は、「そうなれば、そのような大きな規模の実現に向けた規制の道筋があることが実証されるだろう」と語った。
ルワンダやガーナでは状況が大きく異なり、Ziplineは目視監視者なしでドローンを飛ばすことができる。また、欧州では、規制当局が実際にドローン配送会社の一歩先を進んでいる、とMannaのHealy氏は述べている。1月1日に施行された規則によって、より大規模な自動飛行が実現しやすくなったからだ。
「競合のドローンやそれ以外の航空機との空域の共有に関する規則が、非常に明確かつシンプルなものになる。米国もそのアプローチに追随してくれることを願っている」とHealy氏。そのように空域が明瞭になることは、Mannaの拡大計画にとって非常に重要だ。「2024年には、1日に100万回のフライトを実施できるようにしたいと考えている」
ドローン配送による恩恵は、アイスクリームを今すぐ食べたい人の欲求を満たすことだけにとどまらない。
調査によると、Ziplineによる血液とワクチンの配送は、同社が最初にサービスを提供したルワンダで、健康上の利点をもたらしているという。例えば、ドローンで輸血用血液を届けるやり方は、遠隔地に届けるために道路を舗装するよりもはるかに簡単で低コストだ。また、医学雑誌のThe Lancetに掲載されたレポートによると、ルワンダでの血液のドローン配送は多くの場合、米国における従来型の配送よりも迅速であり、病院で血液製剤が期限切れになることも67%少なかったという。
多くの場合、ドローンは配達用トラックか、あるいは1人の人間が自動車で店舗まで行くことに取って代わるため、地球環境にもメリットがある。効率的な電気自動車を使用した場合でも、自動車はドローンよりも多くのエネルギーを消費する。ドローンよりも環境にやさしいのは電動自転車だけだとMannaは推論している。
カーネギーメロン大学の研究者が2022年8月に発表した調査結果によると、配送用ドローンの温室効果ガス排出量は、ディーゼルトラックよりも84%少なく、電動バンよりも31%少ないという。コンサルティング会社Accentureの調査では、テキサス州のダラス/フォートワース地域での大規模なドローン使用によって、大気中への二酸化炭素排出量を年間49キロトン削減することが可能だ、と結論づけている。ドローンを使用することで、交通渋滞の軽減にもつながる。
Wingが費用を負担したバージニア工科大学の2020年の調査でも、顧客の移動時間の短縮や企業の新規顧客へのリーチの拡大といった経済的利点が明らかになっている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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