「コントローラの準備完了。上空に障害物なし。若干の向かい風。『Zipline 140』発進のカウントダウンを始める。3、2、1」という声が拡声器から聞こえてくる。それから、飛行機のような形状をした翼幅10フィート(約3m)の発泡スチロール製ドローンが、カリフォルニア州ヨロ郡の静かな大牧場の上空に飛び立った。
米国のスタートアップであるZiplineは、カリフォルニア州セントラルバレー西部の丘陵地帯にある試験場で、同社の2世代目となるドローンの性能をテストしている。この試験場には、交通渋滞に巻き込まれなければ、シリコンバレーから車で2時間で行くことが可能だ。Ziplineは過去にも自社のテクノロジの一部を公開したことがあるが、今回は時速68マイル(約109km)から時速80マイル(約128km)に高速化した新モデルのドローンと、アップグレードにより1日に500回のフライトを処理できるようになった配送システムを披露した。さらに、配送完了後に帰還した各ドローンをキャッチする仕組みも初めて公開している。
AmazonやGoogle、Walmartなどの企業が配送用ドローンをテストしているが、Ziplineは既にドローンを使って事業を展開しており、ルワンダでドローン発進基地から病院に血液を運んでいる。同社はルワンダで2つ目の発進基地の建設をほぼ完了しており、ワクチンや医薬品の配送にも乗り出している。さらに、タンザニアで事業を展開するための取り組みにも着手済みだ。
道路が冠水したときや診療所が島にある場合、Ziplineの配送用ドローンを使えば、医薬品を最大50マイル(約80km)離れた場所まで短時間で届けることができる。同社の創業者でエンジニアリングチーフも務めるKeenan Wyrobek氏が、Ziplineのドローンが米国の市場にも進出できると考えるのは、そのためである。
ドローン配送の未来がどうなるのかは、現時点では不明だ。Eコマースで消費者の欲するものを即座に提供したり、温室効果ガスの排出を削減したりする可能性もある。しかし、航空機や地上の人々に新たな安全面のリスクももたらすだろう。人々やドローンが密集する地域では、特にそうだ。規制当局が慎重に事を進めているのも当然である。
だが、Ziplineは既に2つの政府を説得することに成功している。Ziplineには、米国でもチャンスがあるとWyrobek氏は考える。
Ziplineのドローンは既存の航空管制システムとも連携する。現在、同社のドローンはあらかじめ設定された航路を進むだけであり、航空機や鳥などを自律的に避ける能力は備えないが、Ziplineはそうしたスマート機能の追加に取り組んでいる。現在のところ、同社のドローンは人間によって遠隔操縦され、何か問題がある場合は、操縦者が航路を変えることができる。だが、ルワンダでは7000回のフライト中、航空管制官から何らかの処置を求められたことは1回もない。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス