ソニーはこの「グリップ付きレンズ」を複数モデル展開し、スマートフォンのカメラに使われているものより少し大きいイメージセンサーを使用した。また、「QX1」カメラというのもあり、こちらはAPS-Cサイズのイメージセンサーを採用。LEGOブロック換算だと、3×2の計6個で長方形に並べたくらいの大きさだ。フルフレームセンサーほど大きくないが、スマートフォンのイメージセンサーと比べると十分に大きい。
QX1はソニーのEマウントを採用している。つまり、Eマウントシリーズの各種レンズが使え、アダプターを介せばキヤノンやニコンのレンズも使えるということだ。QX1はBluetooth経由で制御されるので、スマートフォンに取り付けてもいいし、さまざまな場所に取り付けてリモートで写真を撮ることもできる。
ソニーのQX1カメラは、2014年に399.99ドルで登場した。これと同じような製品が今あったらどうだろう。ソニーが2022年モデルを作っていたら、筆者は間違いなく購入するところだが、残念なことにQX1は数年間販売された後に製造が終了してしまった。ちょうど、Redが「Hydrogen One」というスマートフォンを発表した頃のことだった。Redは、「ホビット」「ウィッチャー」「ミッドサマー」「ザ・ボーイズ」などの映画やドラマの撮影にも使われたシネマカメラを製造している企業だ。
世界有数のカメラメーカーが作ったスマートフォンであるにもかかわらず、1300ドルという価格だったHydrogen Oneのカメラは、700ドルクラスの「Android」スマートフォンと肩を並べる程度だった。本体の背面には各種モジュール(「Moto Mods」など)を取り付けるためのポゴピンがあり、特許に記された図面によると、大型のイメージセンサーとレンズマウントを備える「シネマカメラモジュール」も用意されていた。Hydrogen Oneとそのシネマモジュールを使えば、スマートフォンがRedシネマカメラのミニ版になるというアイデアだ。
結局、このアイデアは実現しなかった。
その後、Hydrogen Oneは製造終了となり、今では映画の中で小道具としてお目にかかるくらいだ。「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」では、主人公ドミニク・トレットが運転する車のダッシュボード上にあり、「ドント・ルック・アップ」では俳優のLeonard DiCaprioが手にしている。
Appleが、カメラレンズマウントを備えたiPhoneを製造しているといううわさはないし、Google製ミラーレスカメラの話も聞こえてはこない。だが、シャオミがプロ仕様のレンズマウントを備えたスマートフォンのプロトタイプを作った以上、Apple Parkの地下のどこかに、昔のコンセプトカメラが眠っていないとも限らない。「iOS」のようなインターフェースが動き、iPhoneと同じ「A」シリーズのチップを搭載していて、同じようにコンピュテーショナルフォトグラフィーを使うモデルがあってもいいだろう。少なくとも、筆者はそう思っていたい。
プロ仕様の専用カメラが、AppleやGoogleのスマートフォンで実装されているのと同じ処理技術を利用するようになったら、どれほど素晴らしい写真が撮れるだろうか。また、スマートフォンのようなOSを採用して、カメラから写真や動画をInstagramやTikTokに投稿できたら、さぞ楽しいに違いない。
実は、Samsungも2012年にAndroidのインターフェースをカメラに持ち込もうとしていたことがわかっている。こうしたスマートフォン用カメラのコンセプトのほとんどは、10年前に試されている。中でも、ソニーのQX-1のような機種は、本当に時代を先取りしていた。
AppleがスタンドアロンのiOS搭載カメラをリリースしたり、ライカレンズを備えたiPhoneを作ったりすることはないと思う。真実は、過去10年間でカメラが小型化されたこと。何年もの間、プロ用カメラの代名詞であったかさばるデジタル一眼レフカメラは急速に姿を消しつつあり、ミラーレスカメラの人気が高まっている。ミラーボックスのスペースを必要としないため、より小さくできる。
こうした事実から、当時の携帯電話のカメラがどれほど優れていたかを思い出すことができる。カメラ性能が横ばいになったように感じるとしても、日常的な用途においては問題がない。しかし、スマートフォンのカメラがすぐにプロのカメラを置き換えることはない。
プロ用カメラにグレードアップしたい場合は、富士フイルムの「X100V」やソニーの「A7C」のような大きなイメージセンサーとシャープなレンズを搭載し、コートのポケットに収まるカメラを見つけよう。友人とのディナーパーティーで、誰かが電話ではなくカメラで写真を撮りたいと思っても、それほどショックを受けることはありません。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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