新しいApple Watchを探しているなら、選択肢は3つある。399ドル(日本では5万9800円)の「Apple Watch Series 8」と249ドル(同3万7800円)の「Apple Watch SE」(第2世代)、新たに登場した799ドル(同12万4800円)の「Apple Watch Ultra」だ。
スキューバダイビングやロッククライミングが趣味なら、迷わずApple Watch Ultraを選ぶだろう。しかし、それ以外の人にとってはSeries 8を買うべきか、SEを買うべきかは悩ましい問題かもしれない。この2つは「watchOS 9」で動作するスマートウォッチだ。どちらも同社の最新チップに加えて、衝突事故検出機能をいち早く搭載している。もちろんApple Watchのおなじみの機能、例えばワークアウトの記録や転倒検出、「iPhone」の通知のミラーリングなども利用可能だ。
どちらが自分に合っているかは、スマートウォッチに何を求めるかによって違う。筆者はApple Watchを主に運動の記録、通知の閲覧、時間の確認に使っているので、この2機種を切り替えながら使っても、どちらかに物足りなさを感じることはない。
SEではなくSeries 8を選ぶ理由があるとすれば、手首の皮膚温や血中酸素飽和度の測定、心電図の記録といったSEにはない健康管理機能が欲しい場合だろう。Apple Watchは医療機器ではないが、心臓や呼吸器に関するデータをかかりつけの医師と共有したい場合は、Series 8の方が向いているかもしれない。
Series 8の大きなメリットは長く使っていくことで感じられるようになるだろう。新しい皮膚温センサーによって、体温の変化と体調の関係を視覚的に確認できるのは良いアイデアだ。SEにはない超広帯域(UWB)無線通信用チップを搭載していることもSeries 8の強みかもしれない。スマートフォンやスマートウォッチで車のロックを解除することが、「Apple Pay」で買い物をするのと同じくらい当たり前のことになれば、UWBチップの有無は大きなポイントになるだろう。
SEには搭載されていないが、あったらうれしい機能をあえて挙げるなら、Series 8を含めて、2019年以降の主要なApple Watchに搭載されている常時表示ディスプレイだ。SEは常時表示には対応していないので、触らずに一定時間がたつと画面が真っ黒になってしまい、魅力的とは言えない。
Series 8(または「Series 5」~「Series 7」)の場合は、手首を上げたり、本体に触ったりしなくても、常にディスプレイに情報が表示されている。しかし、Series 8に搭載されている健康機能がどうしても欲しいというのでなければ、常時表示ディスプレイのためだけに150ドル(同2万2000円)を余分に払う価値があるとは思えない。ただ、常時表示ディスプレイはすべてのApple Watchに標準装備してほしい機能だ。
Series 8はディスプレイも大きい。ケースサイズはSEが40mmと44mmであるのに対して、41mmと45mmだ。もちろん画面が大きいのは利点だが、筆者が感じたSEに対する最大の優位性は、テキストメッセージへの返信にQWERTYキーボードが使えることだ(Series 7でも可能)。もちろんSEでもスクリブル(手書き入力)、音声入力、定型文の送信などは可能だが、キーボードでさくっと入力できる方が楽だ。文字サイズを大きくしたい人も、SEよりSeries 8の方が向いているかもしれない。
また、Series 8ではケースの素材にアルミニウムより価格の高いステンレススチールが加わった。また、アルミニウムケースのラインアップに、SEにはない「(PRODUCT)RED」のケースが追加されている。
Series 8をはじめ、Apple Watchの上位機種は健康を総合的に管理できるデバイスへと進化しており、手首から心電図をとったり、血中酸素濃度を測定したりできる。Series 8とUltraには初めて皮膚温センサーが搭載され、睡眠中に手首の温度を測り、基準値からの乖離(かいり)を教えてくれるようになった。皮膚温センサーの設定には5晩かかったが、これは手首皮膚温の基準値を計測する必要があったからだ。
Appleによると、夜間の手首皮膚温は全身の体温の指標となるもので、病気や時差ぼけ、運動などの影響を受けるという。Apple WatchにはOuraやFitbitの端末に搭載されているようなその日の体調を示すレディネススコアはないので、手首皮膚温のデータから身体がもっと休息を必要としているかを判断できる可能性はある。
今後、手首皮膚温の測定結果を取り入れた機能やサービスが登場することを期待したい。現時点では、夜間の皮膚温と基準値とのずれをグラフで確認できるが、値をどう解釈するかは基本的にユーザーに委ねられている。
Apple Watchは医療機器ではないので、病気になった時に教えてくれるわけではない。このため測定値の活用方法が分かりにくい。これは筆者が血中酸素濃度をチェックしたことがない理由の1つだ。このデータも解釈に迷う。Series 8を装着して2週間ほどたつが、いまだに皮膚温データの活用方法が分からない。
筆者の場合、夜間の手首皮膚温はほとんど基準値付近だ。基準値からの変動幅は、最大でも0.2度高いか、0.3度低いくらいだが、こうした数値を変動の要因らしきものとうまく結びつけることができない。また、夜間は充電のためにSeries 8を外すことがあるので、寝る間ずっと装着したままにすることも難しい。
しかし、手首皮膚温のようなデータポイントがあれば、将来的に面白いことができそうだ。Appleには、こうした統計情報から新たな洞察や実用的なアドバイスを引き出す方法を編み出してほしい。今のところ、夜間の手首皮膚温は体調が悪いときに医師に伝えられる指標にすぎず、実際にどの程度の有用性があるのかは分からない。
現時点で、Series 8の皮膚温センサーの最大の用途と思われるものは排卵周期のトラッキングだ。Appleによると、Series 8とUltraは排卵の遡及的推定や改善された月経周期トラッキングができる。このため、Apple Watchを家族計画に利用する場合はSeries 8の方が適しているかもしれない。月経周期だけでなく、ユーザーの身体から直接得たデータをもとに排卵を推測できるからだ。
「排卵のタイミングは人によって違い、月ごとに変わる場合もあるが、(スマートウォッチを使えば)自分自身の身体から取得したデータを使える」と指摘するのは、マウントシナイ・ヘルスシステムで母体胎児医学の責任者を務める医師、Angela Biance氏だ。「排卵のタイミングは早い人もいれば、遅い人もいる」と同氏は言う。
繰り返しになるが、Apple Watchは医療機器ではないので、あくまでも参考にとどめるべきだ。妊娠を避けるために利用することもやめておいたほうがいいだろう。
ニューヨーク・プレスビテリアン病院の産婦人科医で、ワイル・コーネル医科大学助教のAlexis Melnick氏は、「(スマートウォッチの排卵予測)データには誤りがある可能性もあるため、妊娠を望まない場合は使用すべきではない」と言う。「排卵周期が不規則で、安定していない人もいる」
Appleによると、iPhoneをパスコードや「Face ID」、「Touch ID」でロックしていれば、例えば排卵予測のような女性特有の健康データを含む、同社の「ヘルスケア」アプリに保存されているデータは暗号化されるという。「iCloud」にバックアップされているデータも同様だ。
iCloudアカウントの2段階認証は必ず有効にしておこう(デフォルトでは有効になっている)。そうすれば健康データはエンドツーエンドで暗号化され、Appleがあなたのデータを読んだり、アクセスしたりすることはできなくなる。2段階認証が有効になっているかは、iPhoneの「設定」メニューを開き、自分の名前をタップして「パスワードとセキュリティ」を選択すると確認できる。
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