不思議と落ち着く。奇妙な没入感がある。あるいは、そこにあることを意識しなくなる。部屋の中で「Project Starline」のデモを30分試した後、自分がそんな言葉を口にするとは思ってもいなかった。Project Starlineとは、巨大スクリーンを使った3DビデオチャットプラットフォームとしてGoogleが試作中のプロジェクトで、現在は外部の企業数社のオフィスでテストが進んでいるところだ。相手とグータッチしたときには画像がピクセル化したが、それを別にすれば、想像以上にリアルに感じられた。
GoogleがProject Starlineを発表したのは今から1年以上前、2021年の開発者会議「Google I/O」をオンラインで開催したときのことだ。バーチャル会議がこれからどう進化しうるのか、その未来のビジョンを示すものだった。まさにパンデミックの時代に着想されたアイデアだと感じられる。実際には遠く離れていても、まるで同じ空間に座っているかのような感覚をもたらすという夢だ。
Metaをはじめとする各社は、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)に投資し、アバターを使ったVRミーティングが互いの距離を埋める手段になると想像している。VRには、ヘッドセットで自分たちの顔を隠してしまうという欠点がある。Zoomなどのビデオチャットは、ある意味で顔を合わせられるといえるものの、ノートPCの画面にへばりついていないといけない感覚がある。将来Metaのアバターは、ほぼリアルになるように作られており、顔をスキャンするカメラによって表情を操る。Project Starlineは、ユーザーの顔をリアルタイムの3Dフィードで投影するだけという、全く違う方法で同じ効果を引き出している。
Project Starlineは双方向のビデオチャットだが、AR、あるいはホログラフのように感じられたことには感心した。そして、最終的には何の仕掛けもないかのように感じたのである。
Project Starlineを使った30分間のチャットについて記事を書く前に、筆者は1日、時間を空けた。自分がその体験をどう記憶したのか、確かめたかったからだ。小さなホログラフのブースで話をしてくれたチームメンバー2人のうちの1人は、実際に直接対面して会話を交わした体験として記憶しているかもしれないと話していた。
実際、筆者がGoogleのProject Starlineチームの人々と会ったのは確かだ。Project Starlineのプロダクトマネジメントディレクターを務めるAndrew Nartker氏と、リサーチサイエンティストのJason Lawrence氏の2人である。まず実際に顔を合わせてから、2人は廊下を少し進んだ先、第2のStarlineブースが設置されている別室に移り、筆者だけが最初の部屋に残った。短い距離を空けた2つの部屋で、筆者たちはホログラフィック上のチャットを交わした。正確に言うと、3Dのライトフィールドディスプレイを介してだ。
筆者にはアバターを使うVRでおなじみとなっている、妙にリアルな存在感は同じだったが、ビデオチャットで実際に顔を見られる点は違う。
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