モンスターラボは10月7日、角上魚類ホールディングスにおける魚市場での買い付けや配送業務のDX支援をしたと発表した。魚市場の現場観察から課題を抽出し、買い付け時に使用する業務アプリ「セリ原票アプリ」の開発から導入支援までを一貫してサポート。その結果として作業時間の短縮や発注ミス、配送ミスの減少による業務の質の向上、データ蓄積による知見の平準化、紙をデジタル化したことによるペーパーレス化などを実現したという。
角上魚類は、バイヤーによる目利きによって新潟県の中央卸売市場と東京都の豊洲市場で買い付けをし、関東・信越地域に展開する各店舗へその日のうちに配送・販売するビジネスモデルを展開している。従来は各店舗からの紙の発注書を基にバイヤーが買い付けを行っており、買い付けた商品を各店舗に配送していた。しかし発注や買い付けミス、誤配送、紙の使用による事務作業の負荷が課題になっていた。
また、ビジネスの拡大に伴うデジタル・IT化の必要性もあったことから、手作業で行っている業務をシステム化することで現場の業務効率化と業務品質向上を目標とし、2021年3月にプロジェクトがスタートした。
プロジェクトを担当したモンスターラボの河西健一氏は「当社ではビジネスフェーズからデザインフェーズ、開発フェーズへ進めるやり方をしているが、その中でもビジネスフェーズにおける現状理解のための現地調査と、開発フェーズのプロブレムソリューションフィットに注力した」と語る。
「まず現状を理解するために市場で3日間の現地調査を行い、6日間かけて業務フローや動線、業務課題の可視化などの分析を実施。初期開発後にアプリを角上魚類のバイヤーに利用してもらい、改善ポイントを上げてもらいながらブラッシュアップを繰り返した」(河西氏)
現地調査を実施した理由について河西氏は次のように語った。
「1つ目は、市場での買い付けや発送はスピーディーさが求められる作業で、現場からデジタル移行に対する不安の声がとても大きかったため、不安を払拭する必要があった。2つ目は、業務効率化ポイントを第三者視点で考察する必要があった。3つ目は新潟と豊洲で異なる買い付けのフローがあったため、それぞれを理解する必要があった」(河西氏)
課題を洗い出したところ、「アナログオペレーションからデジタル移行に対する現場の心理的な壁」「業務フローが整理されていないことによる部分最適な状態」「業務や知識の属人化」という3つの課題が挙がった。
「手書きでのアナログなオペレーションを行っていた業務をアプリ化することで、メイン業務を行うバイヤーの学習コストに懸念があった。新潟と豊洲では、市場の買い付けを行う魚種によって手書きするセリ原票の記載方法が異なる。さらに、手書きのセリ原票を基幹システムに手入力する必要があった。買い付け方法は、バイヤーの個々の経験によって異なり、配送は担当者が各自の携帯電話でトラックに積み込んだ写真を撮っていたことから、データを確認するためには、担当者の携帯電話から探す必要があった。デジタル化には、まず『現場での心理的な壁』を解決しなければ次の課題も解決できないため、1つ目の課題解決を最優先とした」(河西氏)
1日に多い時は400〜500枚の写真を撮るため、目的の写真を探すのにも時間と手間がかかり、大変な作業になっていたという。バイヤーの使いやすさを重視した結果、買い付けに使用している「セリ原票」をベースにアプリ化した「セリ原票アプリ」の開発に至ったという。
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