角上魚類×モンスターラボ、魚の買い付けをアプリで変革--知見の平準化やペーパーレス化へ - (page 2)

紙の「セリ原票」フローを踏襲し、負荷低減へ

 これまでの発注から納品までの業務フローは、発注の前日18時からスタートする。各店舗からの発注データを締め、受注明細データを出力する。大まかな業務の流れは以下の通りだ。

発注から納品までの業務フロー
発注から納品までの業務フロー

 セリ原票アプリでは、できるだけ紙のセリ原票のフォーマットを踏襲した画面にすることで、利用するバイヤーの導入負荷を下げた。

紙のセリ原票
紙のセリ原票
セリ原票アプリの画面
セリ原票アプリの画面

 アプリで作成したデータは、基幹システム側に直接取り込めるようになり、従来行っていた魚種・数量などのデータを手入力する作業を削減した。過去の買い付けデータをバイヤー同士が誰でも見られるようになったのも、大きな改善ポイントだ。また、商品をトラックに積み込む際に撮影した写真もアプリによって誰でも見られるようにしたことで、検品作業をスムーズに行えるようになったという。

 「『現場の心理的な壁』については、新潟と豊洲の市場に開発チームが付き添いながら、試作版アプリで使い勝手や業務フローの検証を実施した。そこで改めて発見した課題や要望を整理して取り込み、スムーズな業務の移管を実現した。『部分最適な状態』は、バイヤーごとに異なる業務フローを現場視察によって理解し、第三者の視点で統一可能な箇所を整理。標準化されていない手書きの業務をセリ原票アプリを通して共通化していった。『属人化』の部分は、各バイヤーの買い付け情報を蓄積することで、優れた暗黙知を全体で共有・活用し、業務効率化を図った。バイヤー同士が、互いの買い付け状況や積み込み状況をリアルタイムで閲覧できるようにもした」(河西氏)

「リモート買い付け」もしやすく--セリ原票アプリを導入した効果

 セリ原票アプリを導入した効果について、角上魚類ホールディングス 関東鮮魚課 課長の呉井宏之氏は次のように語った。

角上魚類ホールディングス 関東鮮魚課 課長の呉井宏之氏(写真左)
角上魚類ホールディングス 関東鮮魚課 課長の呉井宏之氏(写真左)

 「今までは店舗からの受注明細を紙で受け取り、それを各バイヤーが持ってセリ場を歩き回り、買った魚の産地や数量、原価、売価などの情報をすべて1から書いてセリ原票を完成させていた。バイヤー1人あたり毎日4〜5枚分のセリ原票を書くことになるので、バイヤー6人だけでも毎日25枚ほどになる。週に5日の仕入れ業務で125枚、1か月で500枚、年間6000枚という枚数になる。新潟にもバイヤーがいるので、2倍以上の枚数になる。今ではセリ原票アプリを活用することでほぼゼロになったので、紙の削減に大きく貢献している」(呉井氏)

 アプリで数量や金額の計算も行えるため、「電卓を叩いて計算する作業時間の軽減だけでなく、計算の正確性も増して、トータル作業時間で感覚的には1時間ほど短縮できていると思う」と呉井氏は語る。

 商品事務担当者が毎日基幹システムに手入力していた作業時間の軽減も大きな効果だ。

 「今までは毎日、全バイヤーから送られてくる25枚ほどの紙のセリ原票を3時間ほどかけて手入力していた。週末や連休になると受注も増えるので、平日よりもさらに量が多くなる。今では各バイヤーが入力まで完結できるため、商品事務は目方を入力する程度まで負担が軽減できており、時間的には2時間ほどは削減できているのではないかと思う」(呉井氏)

 セリ原票アプリを利用することで、「リモート買い付け」もしやすくなったと呉井氏は語る。

 「全国的にコロナの陽性者数が爆発的に増えた時期に、リスク回避の観点で豊洲に来るバイヤーを半分にした。半分はリモート、残りの半分が豊洲で実際の魚を見て鮮度を確認するといったことは、このセリ原票アプリを活用することで可能になった。タブレットとセリ原票アプリがあれば、いざという時に場所を選ばず仕事ができるのは、自分たちにとって非常に心強い」(呉井氏)

 配送を担当する角上魚類ホールディングス 配送課の畑井裕樹課長は導入前の課題について次のように語った。

角上魚類ホールディングス 配送課の畑井裕樹課長
角上魚類ホールディングス 配送課の畑井裕樹課長

 「従来、前日に仕入れが確定した『前注文』の商品については、各バイヤーから事前にセリ原票を渡してもらい、検品や店舗への振り分け、写真撮影を行っていた。しかし当日の朝に仕入れを行う商品の場合、商品がピッキング場所に来る前に配送課がセリ原票をもらうことが物理的に不可能だった。そのため商品の写真撮りはするものの、検品や店舗の割り振りを確認することができなかった」(畑井氏)

 セリ原票アプリを導入したことにより、配送課でもタブレット上でリアルタイムに買い付けデータを確認できるようになった。

 「当日バイヤーが買い付けした商品も、1品1品店舗の割り振りが確認できるようになった。割り振りが違った場合には、トラックに積み込まれる前にバイヤーに確認し、現場で発見することで誤配が確実に削減できている」(畑井氏)

 まとまった数で買い付けるマアジやイワシ、サバ、サンマ、ブリ、スルメイカなどは、従来は予定数量をドライバーに伝えてどれだけ積み込んだのかを確認してもらっていたという。

 こうしてアプリを現場に導入したことで、紙の使用時に発生していた誤記入や誤配送が減少し、作業時間の短縮や業務の質の向上を実現。また、バイヤーが買い付けた情報をデータとして蓄積することで、将来的にはテータを活用したビジネス展開も可能になる。

 モンスターラボは、ワンチームを組成することでDX推進をサポートしていくとしている。

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