日本企業からイノベーションは生まれるか--SKS JAPAN 2022

 国内外のフードイノベーションに関するカンファレンス「SKS JAPAN 2022 - Beyond Community -」(主催・シグマクシス)が9月1日~3日に開催された。その中から、注目のセッションを紹介する。

 「日本企業からイノベーションは生まれるか」と題したセッションでは、スタートアップの起業家から大企業内アクセラレーター出身者、投資家、衆議院議員までが一堂に会し、日本の食産業がイノベーションを社会実装していくために重要なことについて話し合った。

会場の様子
会場の様子

イノベーションを阻害する理由とは

 日本のイノベーションを阻害している要因について、以前にパナソニックで新規事業創出プロジェクト「Game Changer Catapult」の代表を務め、現在はカーマインワークス 代表の深田昌則氏は、「大量生産・大量販売の効率化されたビジネスモデル」「同質文化」「効率化された組織」の3つだと語った。

カーマインワークス合同会社 代表の深田昌則氏
カーマインワークス合同会社 代表の深田昌則氏

 「大量生産・大量販売の効率化されたビジネスモデルが飯の種になっており、本当にいけるかどうか分からない新規事業に取り組みづらい。同じ考え方をする人ばかりが集まっているため、『家族がこういう困りごと持っている』と言ってもなかなか共感が広がらない。また、組織が効率化され、軍隊のように上司の言うことをきちっと明日の朝までにやるという人が評価されがちで、そういう人ばかりが集まる傾向がある。これが日本企業の中で新規事業が生まれづらい素地になっているのではないかと思う」(深田氏)

 大手印刷会社で新規事業創出に取り組み、現在は外食向けのアレルギー対応ITサービス「CAN EAT」を提供するCAN EAT代表の田ヶ原絵里氏は「時間とお金の使い方」だと語る。

CAN EAT代表の田ヶ原絵里氏
CAN EAT代表の田ヶ原絵里氏

 「私たちは味覚分析も合わせたパーソナライゼーションをテーマに取り組んでおり、食品メーカーや飲料メーカーなどから声はかかるものの、既存のビジネスモデルとの整合性の問題が生じて止まってしまうことが多い。今後、必ずトレンドとして来ると思っている中で、どうビジネスにしていくのかを模索するための時間とお金の使い方がすごく大事なのではないかと思う」(田ヶ原氏)

 スタートアップは大企業に比べて動きが速いと言われることもあってか、大企業は「短期的に成果を求めているところがある」と田ヶ原氏は続ける。

 「少なくとも5年は必要ではないかと思う。スタートアップの上場の傾向を見ると、短くても7年くらいはかかる。大企業がそれを3年から5年で達成できるかというと、皆スタートライン自体は一緒なので難しい。ゼロから新しいビジネスモデルに着手しようと考えると、『待つ勇気』も必要だろう。気長に育む気持ちを持つことが大事だ」(田ヶ原氏)

 フードテック関連のアクセラレーションプログラム「FoodTech Studio - Bites!-」を主催するスクラムベンチャーズのパートナーで、フードテックエバンジェリストとしても活動する外村仁氏は「オーバー・プランニング(過剰計画)」「オーバー・アナリシス(過剰分析)」「オーバー・コンプライアンス」の3つを挙げた。

フードテックエバンジェリストの外村仁氏
フードテックエバンジェリストの外村仁氏

 「スタートアップに対しても5年先、10年先までの事業計画やファイナンシャルモデルを出せと言われるが、ほぼ意味がない。何か新しいことやろうとしても、上司に過剰な分析を求められる。また、本当にこの10年ぐらい、みんなを弱気にさせているのが『オーバー・コンプライアンス』だと思う。これらをみんなが認識して、変えるアクションをしなければならないし、役人にも政治家にもしていただきたい」(外村氏)

日本の社会や会社が停滞する3つの理由
日本の社会や会社が停滞する3つの理由

 さらに外村氏は、米CIA(Central Intelligence Agency)の前身組織であるOSS(Office of Strategic Services)が第二次世界大戦中に作成したと言われる「会社をダメにする11の行動様式(Simple Sabotage Field Manual)」を紹介した。

外村氏が紹介した「会社をダメにする11の行動様式(Simple Sabotage Field Manual)」
外村氏が紹介した「会社をダメにする11の行動様式(Simple Sabotage Field Manual)」

 「これはスパイが会社や国の組織などに潜入して、その会社を駄目にするためのマニュアルだ。『そんなに慌てるといいことない』などと道理をわきまえた人のふりをするとか、『委員会を作ってそこで検討しよう』とか、一見良い風に聞こえる。『とりあえずやってみれば』ではなくて『なるべく3人がOKしないと先に進めてはいけない』とか。決まりというものはどんどんスクラップアンドビルドしなければいけないのに、それを厳格に適用するような、『道理をわきまえた人』がいる。(考え方を)フラットにするために(このマニュアルを参考にすると)いいと思う」(外村氏)

 元F1ドライバーで、医療法人さわらび会/社会福祉法人さわらび会の統括本部長として分子調理メソッドを取り入れた記念日用介護食「にぎらな寿司」の開発に携わった衆議院議員の山本左近氏は、「スパイマニュアルの話は『誰が、どこで意志決定をするのか』の判断を1人ではなく2人、3人で下した方がミスが少ない。それは『失敗を許さない文化』が(根底に)あると思う」と語った。

衆議院議員の山本左近氏
衆議院議員の山本左近氏

 「イノベーションがどうして日本から起きないのか。フードテック領域だけでなく、他の領域でも同じような悩みを抱えている。たとえば技術的には日本が優れていても、全体的に世界を席巻するようなイノベーションやクリエイティブを生み出しているのかというと、なかなかまとめきれないところがあると思う。それは結局『ストーリーをどれだけ自信を持って他の人に伝えられるのか』『そのストーリーの中にある哲学は何か』。信念や筋を通し切れていないことが、イノベーションを生みにくい環境にしていると思う。これは1人ではできなくて、コミュニティが必要になる。コミュニティの中でお互いの意見を交換し合い、そしてお互いのいいところも補完し合える環境がイノベーションを生む最大の要因だと思う」(山本氏)

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