非代替性トークン(NFT)はビデオゲーム業界で小さな足がかりを得ているが、一部のユーザーはすでにNFTにうんざりしている。デジタルトークンを導入する可能性を示唆した著名なゲーム会社がすぐさま激しい批判を浴びたことを受けて、一部のゲーム開発会社は即座に壮大な計画を中止した。
ゲーマー達は昔から、彼らのふところから現金を奪うことが目的の搾取的なコンテンツだとみなしたものに反発してきた。ダウンロードコンテンツ(DLC)からルートボックス(ガチャ)まで、ゲーム業界は製品を収益化する革新的な方法を常に模索している。ゲーマーが反発しているとはいえ、DLCと同様、ビデオゲームのNFTも姿を消すことはないだろう、と専門家はみている。このようなトークンは、大手ゲーム会社に利益をもたらす可能性を秘めているからだ。
DLCの初期の状況は、NFTの現状と多くの共通点がある。特定のコンテンツが特に大きな悪評を呼び、ビデオゲーム収益化における新時代の始まりの象徴的存在になった。
ダウンロードコンテンツは90年代後半の時点で、ある程度普及しており、最初のDLCは、PCのリアルタイム戦略ゲーム「Total Annihilation」向けに作成された。新しいマップやユニットなどのゲーム内コンテンツが作成され、プレーヤーはそれらを無料でダウンロードできる、というものだった。
状況が劇的に変化したのは2006年4月、Bethesda Game Studiosが人気ゲーム「The Elder Scrolls 4: Oblivion」向けに、あの有名なHorse Armor Pack(馬に着用させる鎧のパック)をリリースしたときのことだ。250マイクロソフトポイント(約2.50ドル)で購入可能なHorse Armor Packは、リリース後何年もの間、冗談の種となっていた。馬の見た目を変える以外の用途はなく、今日の「フォートナイト」のようなゲームで見られるゲーム内スキンの先駆けだった。
マイクロトランザクションと呼ばれるこうした低価格のゲーム内アイテムは、2005年に発売された「Xbox 360」におけるMicrosoftの新しい収益モデルの一部だった。今日では、マイクロトランザクションは当たり前のことと捉えられているが、当時の反応は瞬間的であり、劇的だった。
Horse Armor Packに対する反発は、さまざまなオンラインメッセージボードに瞬く間に広まった。多くの人は、前例ができてしまうことを心配していた。
批判があったにもかかわらず、Horse Armor PackはBethesdaに大きな売り上げをもたらした。
Bethesda Game Studiosのゲームディレクター兼エグゼクティブプロデューサーであるTodd Howard氏は2016年、IGNに対して、「信じられないかもしれないが、(Horse Armorは)当社の歴史の中でもトップクラスの人気(のあるDLCパック)だった」と語った。「面白いのは、当社はHorse Armorから離れていったが、業界のほかの企業はHorse Armorに向かって進んでいったということだ」
それ以降、マイクロトランザクションはゲーム会社の大きな収益源となり、ゲーム自体よりも多くの利益をもたらすようになった。
ビデオゲーム分析会社SuperDataの試算によると、2020年、マイクロトランザクションはゲーム業界に920億ドル(約1兆2500億円)以上の売り上げをもたらしたという。参考までに、ゲーム自体の売り上げは約120億ドル(約1600億円)だった。
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