ビデオゲームに関して言えば、NFTの果たす役割は、Horse Armorのような従来のダウンロードコンテンツとは少し異なる。NFTは主にデジタルな資産のデジタルトークンだ。そのデジタル資産は、「退屈な猿」のJPEG画像やピクセル化された鳥の画像など、どんなものでもよい。
ゲームでのNFTの例としては、「Axie Infinity」というゲームで取引できるポケモンのような生き物や、「ゴーストリコン ブレイクポイント」の装備などがある。後者はうまくいかず、2021年12月にリリースされたときの総売り上げはわずか400ドル(約5万5000円)だったという。前者は一部のプレーヤーに大きな収益をもたらしたものの(あるプレーヤーは2021年に稼いだお金で家を2軒購入している)、開発元のブロックチェーンがハッキング被害に遭い、6億ドル(約820億円)以上の暗号通貨が盗まれたことなどもあって、Axie InfinityのNFTの価値は2022年のほとんどの間、減少を続けている。
ゲーム会社はまだ適切なNFT戦略を探している段階で、これまでのところは、慎重なアプローチを選択している。
Wedbush SecuritiesのアナリストのMichael Pachter氏は、「パブリッシャーは当初、シューティングゲームの武器のように、すでにゲーム内で販売されていたものを代替するトークンとして、NFTを提示した」と述べている。「ゲーマーの反応は、販売目的で提供されるアプリ内アイテムを『NFT』と呼んでも、その本質が変わるわけではない、というもので、これは、NFTのアイデアを提示したいくつかのパブリッシャーの現金獲得戦略に過ぎない、と受け止められた。そのようなパブリッシャーはすぐにNFTの計画を中止した」
「ゴーストリコン ブレイクポイント」の開発元であるUbisoftはその後、NFTから手を引いている。ほかの大手企業では、EAとスクウェア・エニックスがデジタルトークンビジネスに関心を示したが、具体的な計画はまだ発表されていない。
これまでのところ、主要なゲームパブリッシャーのNFT計画は、ゲーマーを沸かせることにまだ成功していない。
IDCのリサーチディレクターであるLewis Ward氏は、「必要なのは、(NFTの)導入によって、ゲーマーがほかの方法では不可能なことを実行したり、体験したりできるようにすることだ。それらの体験は魅力的なものでなければならない」と話す。「NFTは、『自分にとって何か良いことがあるのか』というゲーマーの問いに答える必要がある。そして、その問いに対する答えは、クールなものでなければならない」
ゲーム開発企業でさえ、NFTには懐疑的だ。Game Developers Conferenceのレポート「State of the Games Industry 2022」によると、調査に回答したゲーム開発企業の70%はデジタルトークンに関心を持っていないという。
とはいえ、DLCのときも、懐疑論はあった。その後、マイクロトランザクションは何十億ドルもの売り上げを生み出し、完全に定着した。
「NFTは最終的には、ゲームにあって当然のコンテンツになるだろう」とPachter氏。「最初は、スキンを作るアーティストのように、ゲームを改善するためのユーザー生成コンテンツとして始まり、ブランドに拡大していくと思う。その後は、何でもありの競争が繰り広げられるだろう」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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