Elon Musk氏については、読者もさまざまな意見をお持ちだろう。語りたいことがいっぱいあるはずだ。しかし、440億ドル(約5兆7000億円)でのTwitter買収が完了すれば同ソーシャルメディアサイトを管理することになる同氏は、少なくともTwitterのサービスを実際に使用している。
Twitterの上層部は、実際に普通のユーザーと同じように同社のサービスを使用しているのだろうか。近年、同社の方向性に関して批判的な人々の多くは、そのような疑問を呈してきた。同社は、ネオナチと白人至上主義者のコンテンツを自動的に禁止するドイツ版Twitterのオプションを全ユーザーに提供するという、ハラスメントへの適切な措置はとらず、代わりにやったのは「フリート」機能の導入だ。この機能は1年も持たずに廃止となった。
この種のアプローチは、プロジェクトマネージャーがチェックリストを埋めるためのもの、といった感じだ。同社は注意が散漫になっており、自社のサービスをあまり理解していないように思える。
そうしたタイミングで、巨額の資金とTwitter改革計画を持つElon Musk氏が登場した。
「言論の自由は、民主主義が機能するための礎であり、Twitterは、人類の未来にとって極めて重要な事柄を話し合うデジタル広場だ」とMusk氏は買収の正式発表の中で述べた。「新しい機能を追加して製品を改良し、アルゴリズムをオープンソース化して信頼性を高め、スパムボットを駆除し、すべてのユーザーを本人確認することにより、Twitterをより良くしたいとも考えている」(同氏)
このわずか1段落のMusk氏の言葉には、多くの意味が込められている。言論の自由に対して以前は明らかに絶対主義的なアプローチを取っていたMusk氏でさえ、このアプローチを後退させており、言論の自由は合法である限り認められる、と話すようになった。合法的な言論の中にも嫌悪すべきものがたくさんあるが、Musk氏はそれらも受け入れるのだろう。
コロンビア大学のジャーナリズム・トラウマ・ダートセンター(ジャーナリストの外傷性ストレスに関する国際的組織)でエグゼクティブディレクターを務めるBruce Shapiro氏は先週、ABC RadioでMusk氏について、「彼は言論の自由に関して、ある意味原始的な自由至上主義の考えを持っている。本質的に、発言をする自由は、誰よりも大きな声と、誰よりも大きなこん棒で相手を打ち負かす者に帰属する、という考え方だ」と語った。
「これは実際には言論の自由のモデルではなく、弱い者いじめのモデルだ。最終的に、プラットフォームは文化戦争を嘲笑するための手段になり、多くの場合、理性的な意見が抑圧されるようになってしまう」
Musk氏の指揮下に入る将来のTwitterが考慮すべき大きな問題は、米国以外のさまざまな国や地域の法律だ。それは常に米国企業の盲点となってきたが、名誉毀損やヘイトスピーチ、独裁的な政権といった概念とソーシャルネットワークとが組み合わさると、新たな意味合いを帯びることになる。
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