言論の自由の絶対主義者を自称するElon Musk氏が440億ドル(約5兆7000億円)でTwitterの買収を提案したことで、ビッグテックのプラットフォームの規制に関する民主党議員と共和党議員の見解の違いが浮き彫りになっている。
Musk氏がTwitterの買収について同社と合意に至ったことが米国時間4月25日に報じられると、共和党議員たちはそのニュースを歓迎した。Musk氏は電気自動車会社のTeslaと宇宙開発企業のSpaceXを所有している。
米下院司法委員会の有力メンバーで、保守派の共和党下院議員で構成されるフリーダムコーカスのメンバーでもあるJim Jordan下院議員(共和党)は、「言論の自由が復活しようとしている」とツイートした。
一方、マサチューセッツ州選出で進歩派のElizabeth Warren上院議員ら民主党議員は、この買収提案について、「私たちの民主主義にとって危険なもの」と評している。
世界中のジャーナリストや政治家、活動家の間で人気があり、大きな影響力を持つソーシャルメディアプラットフォームが、世界一の富豪であるMusk氏に買収されることは、どのような意味を持つのだろうか。それに対する意見が両極端に分かれていることは、米国の巨大テクノロジー企業各社をどのように規制するのか、さらには、規制すべき理由に関しても、民主党と共和党の立場が大きく乖離していることを示すものだ。
2016年以来、両党の議員たちは、AmazonやApple、Google、Facebook、Twitterなどの巨大テクノロジー企業が持つ強大な力を警戒しており、そうした企業の力と影響力を抑制することを約束してきた。議会公聴会が何度も開かれたにもかかわらず、これまでのところ、ほとんど何も変わっていない。下院と上院の議員たちは、連邦プライバシー法、反トラスト法の改正、テクノロジー企業の法的責任を問わないとする連邦法の見直しなど、多数の法案を提出してきた。しかし、現時点で、法律として制定された法案は1つもない。
共和党議員たちは長い間、シリコンバレーの巨大企業が保守的な意見に偏見を持っており、Donald Trump前大統領など保守派を検閲しようとする一方で、リベラルな政治家のことは見逃していると不満を述べてきた。2021年1月6日の米議事堂襲撃事件を受けて、TwitterはTrump氏のアカウントを恒久的に停止した。
しかし、民主党議員たちは、新型コロナウイルスワクチンに関する偽情報、米大統領選挙の結果や米議事堂襲撃事件に関するさまざまな虚偽の情報など、オンラインにあふれる有害なコンテンツについて、ますます大きな懸念を抱くようになっている。民主党議員は、TwitterやFacebookなどのビッグテックプラットフォームが偽情報やヘイトスピーチの問題にもっと積極的に取り組むことを望んでいる。
買収後はTwitterを非公開企業にするつもりだと語ったMusk氏は、Twitterに関して、コンテンツのモデレーションに関するポリシーが厳格すぎること、そして、意見の相違や反対意見を抑圧していることを批判してきた。代わりに、Twitterのポリシーを改訂して、モデレーションをもっと寛容なものにし、より自由な言論を促進したいと述べている。
Musk氏はプレスリリースで、「言論の自由は正常な民主主義の基盤である」と述べ、Twitterについて、さまざまな問題が議論される「デジタルな町広場」と例えた。4月25日のツイートでは、「私に対して最も批判的な人々にもTwitterに残ってほしい。言論の自由とは、そういうことだからだ」とした。
Twitterやその他のソーシャルメディアプラットフォームが保守的な見解を検閲しているとして声高に批判してきたテネシー州選出のMarsha Blackburn上院議員(共和党)は、Musk氏によるTwitter買収合意のニュースを賞賛した。
同議員は25日のツイートで、「異なる見解を持つユーザーを検閲してきたビッグテックを抑制するのに、Elon Muskが力を貸してくれることを期待している」と述べた。
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