欧州連合(EU)の画期的な規制案「デジタル市場法」(DMA)が施行されれば、Meta(旧Facebook)の「WhatsApp」と「Messenger」、Appleの「iMessage」は、それぞれのユーザーが互いにメッセージをやり取りできるようにしなければならなくなるだろう。
EU加盟国と欧州議会が3月24日に暫定合意に達したこの規制案は、大規模な「ゲートキーパー」(門番)プロバイダーであるビッグテックを規制し、ビッグテックのサービス間の情報交換を増やし、弱小プラットフォームにも市場のスペースを与えることを求める。理論的には、消費者は自分のスマートフォンがどこの製品であろうと、「Siri」でも「Alexa」でも選んでインストールできるようになる。
DMAの目的は、企業の解体ではなく開放だと、フランスのデジタル担当長官、Cedric O氏は記者会見で語った。
「われわれは歴史的な第一歩を踏み出した。その効果はデジタルを超え、民主主義に及ぶだろう」(同氏)
DMAの規制対象は、EUがゲートキーパーと呼ぶ企業だ。EUはプレスリリースで、WhatsApp、Messenger、iMessageを名指しし、これらのサービスは「より小規模なプラットフォーム(Signal、Discord、Telegramなどを指すとみられる)と相互運用できるようにしなければならない」と述べた。
「そうすれば、さまざまなプラットフォームのユーザーはメッセージングアプリを横断してメッセージを交換し、ファイルを送り合い、ビデオ通話できる」と欧州議会と欧州理事会はプレスリリースで述べた。
DMAには、スマートフォン、タブレット、PCのユーザーが、ブラウザーや音声アシスタント、検索エンジンなどを自由に選べるようにする条項が加えられた。だが、欧州委員会は、それ以外の機能の相互運用性も今後検討すると述べた。
その他、以下の条項が含まれる。
DMAの規制対象になるのは、ウェブブラウザー、SNS、メッセージングアプリ、その他のオンラインサービスを、欧州域内の4500万人以上のユーザーあるいは1万以上の法人顧客に提供している、時価総額が750億ユーロ(約10兆円)以上の企業だ。
この条件を満たす企業は少ないが、Amazon、GoogleとYouTubeの親会社であるAlphabet、Apple、FacebookとInstagramを運営するMeta、Microsoftが含まれる。
注目すべきは、Appleに対してEpic Gamesのような企業に「App Store」内でサードパーティーの決済手段の使用と、App Store以外でのアプリダウンロードを許可するよう求めることになる点だ。Appleは現在、アプリ内決済に最大30%の手数料を課している。
MetaとGoogleは、ユーザーの同意なしにターゲティング広告を表示することをさらに規制され、Amazonは、プラットフォーム上のサードパーティー販売業者の製品と競合する製品の販売のために業者からデータを収集できなくなるだろう。
欧州委員会は、ゲートキーパー企業がDMAに違反すると、1回目は企業の年間総売上高の最大10%の、2回目は20%の罰金を科すことができる。ゲートキーパー企業がDMA違反を続ける場合、企業解体など、「構造的な」影響がある可能性があると、CNBCが報じた。
欧州議会の域内市場・消費者保護担当委員会のAndreas Schwab氏はプレスリリースの中で、DMAは「世界規模で技術規制の新時代を切り開く」と述べた。
DMAは「強まる一方のビッグテックによる支配に終止符を打ち」、インターネット上のより公正な競争を可能にすると同氏は続けた。
厳密には、DMAが強制力を持つのはEU加盟国内のみだ。だが、サイバースペースが地政学的境界を認識することはほとんどない。MetaやTwitterが、大陸ごとに違うプラットフォームを作成する可能性は、ほぼないだろう。
例えば、EUが2018年に一般データ保護規則(GDPR)を施行し、ウェブサイトがCookieを使ってユーザーデータを追跡するにはユーザーの許可を得るよう義務付けた際、米国のユーザーもその恩恵を受けた。
DMAはEU加盟国の合意を得てはいるが、文言は欧州議会と欧州理事会による決定と承認を必要とし、その後、27のEU加盟国が正式に採択することになる。だが、これはやや形式的なものと見なされている。
EUの競争政策責任者、Margrethe Vestager氏は、DMAは10月中に施行される見込みだとした。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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