テクノロジーの世界には、メタバースによって改善できそうなことがたくさんある。
開発者は、今日のインターネットでは孤独を感じることがよくあるという。「Facebook」や「Instagram」、「TikTok」のフィードで友達が投稿したものを見ていても、友達と一緒に時間を過ごしているような感覚にはならない。Philip Rosedale氏は、「フィードを見るときは、ほぼ100%一人ぼっちだ」と話す。そうした欠点があるにもかかわらず、ソーシャルネットワークは、Rosedale氏のチームが2003年にリリースした仮想世界Second Lifeをはるかに上回るペースで成長した。
ほとんどのメタバースプロジェクトは、毎日約20億人のユーザーが利用するFacebookに比べると小規模だ。それらのプロジェクトがFacebookと異なるのは、プレーヤーが独自の世界を作るためのキャンバスになれる可能性を秘めていることだ。
「われわれが考えるのは、『どうすればプレーヤーに没入してもらえるのか』『人々がこれらの3D環境を作り出すことを可能にするツールとは、どんなものなのか』といったことだ」。Microsoftの「Xbox」チームや大手ソーシャルゲーム企業Zyngaで働いた経験を持ち、現在はRobloxの最高製品責任者(CPO)を務めるManuel Bronstein氏は、そう述べている。Robloxでは10年以上前から、デジタルペットシミュレーターの「Adopt Me!」やパズルゲームの「Tower of Hell」など、デジタル世界を自分で作り出すためのさまざまなツールをプレーヤーに提供してきた。
RobloxやRec Room、MicrosoftのMinecraftなどの開発元は、主に自社のゲーム世界をより魅力的な場所にするためのツールを構築している。Bronstein氏のチームは、「Spatial Voice」と呼ばれる機能を導入している。これは、コンピューターのスマート機能を使用し、相手との距離に応じて他者の話し声の音量を調節する機能だ。「人々に囲まれている感覚をプレーヤーに味わってほしい」(同氏)。
メタバースはまだ初期段階にある、と多くの開発者は考えている。ゲームやテクノロジーの経験がない人にとって、これらのデジタル世界に飛び込んで長時間過ごすというのは、不快な体験だろう。メタバースのテクノロジーは、まだ十分に洗練されていないため、額にしわを寄せるといった表情やボディランゲージの社会的な合図を通して、現実世界で不可欠な非言語的コミュニケーションを行うことはできない。
ソーシャルメディアでヒットしたリズム音楽ゲーム「Pistol Whip」などのVRゲームの開発を手がけるCloudhead GamesでCEOを務めるDenny Unger氏は、「母親と話をするときや、真面目な会議をするときは、実際に会って話をしたい。その方が、話の内容や彼らの気持ちをしっかり理解できるからだ」と述べている。
一方で筆者は、バーチャルレクリエーションセンターでFajt氏と一緒に時間を過ごした際に、この部屋に十分な装飾を施せば、条約の調印や商取引などの重要な行事にも使用できるのではないか、と思った。
その答えはすぐに明らかになるかもしれない。Fajt氏によると、約50万人のプレーヤーがRec Roomでさまざまな体験を創作したり、改良したりしているという。その人数は、最も人気の高いオンライン百科事典である「Wikipedia」の編集者の約4倍に上る。
「これは、実際に何百万ものユーザーの手によって作り出された世界だ」とFajt氏。「われわれは、コミュニティーのクリエイターに、何がどのような順番で必要なのかを教えてもらえるようにしている」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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