Fajt氏は2月の陰鬱な金曜日、同氏のメタバースに筆者を招待してくれた。大学のレクリエーションセンターと子供のプレイルーム、スキー場のロッジを組み合わせたような部屋で、筆者は同氏と向き合って座った。その部屋はカラフルで、椅子とコーヒーテーブルが置かれていた。外では、春の木々がそよ風に揺れている。現実の世界では、Fajt氏と筆者は数千kmも離れたところにいた。同氏はシアトルで「Oculus Quest」ヘッドセットを装着しており、筆者はワシントンDCでコンピューターの画面を見つめていた。
Rec Roomでは、人々は他のプレーヤーと一緒に、バーチャルなペイントボールやドッジボール、フリスビーディスクゴルフなどで遊んでいる。仮想現実(VR)ヘッドセットでログインする人もいれば、スマートフォン、ビデオゲーム機に接続されたコントローラー、コンピューターのキーボードとマウスを使う人もいる。
米CNETのDan Ackerman記者は、Rec Roomが2016年に最初にリリースされてまもなく、Rec Roomのゲームをいくつか試した。Ackerman記者は当時、遊んでいる最中のボイスチャットなど、ソーシャルな体験がRec Roomを特別なものにしていると語っていた。同記者は当時、「私は何十ものVRアプリおよびゲームを試してきた」した上で「誇張ではなく、現在のVRでこれより楽しいものはない」と記している。
メタバースがSF小説の哲学上のネタだった頃、仮想世界は、未来のディストピア的世界への警告として使われることが多かった。Card氏の1985年のSF小説「エンダーのゲーム」では、コンピューターによって生成された世界が戦闘の場に使われている。Stephenson氏の1992年のSF小説「スノウ・クラッシュ」には、デジタル世界で暮らす人々の描写がある。その人々は、テクノロジーを身に付けた姿が恐ろしく見えたことから、「ガーゴイル」と呼ばれた。1999年の映画「マトリックス」では、「夢の世界」のコンピューターシミュレーションは、人類を奴隷にするための道具として描かれている。
今日では、メタバースゲームの世界は社交の場として機能している。ある人にとって、それは、Activision Blizzardの「World of Warcraft」やバトルロイヤルの要素も含むヒット作Fortniteなど、ストーリー主導のアドベンチャーゲームだろう。他の人にとっては、Minecraftのような世界を作り上げていくゲームかもしれない。ソーシャルゲームの概念はメタバースに組み込まれているが、以前から存在する。
「『何かをしたい』というよりも『そこにいたい』という気持ちの方が強い」と話すのは、Paul Bettner氏だ。 Bettner氏が開発した、単語を作っていくボードゲーム「スクラブル」風のモバイルデバイス向けゲームである「Words With Friends」は、インターネット経由で他の人と簡単にプレイできるように設計されていたため、2009年に大きな人気を博した。同氏はかつて、部屋いっぱいの仲間の開発者たちに対して、「人々は、Words With Friendsが大好きなのではなく、遊び相手のことが互いに大好きなのだ」と語ったという。「われわれのゲームは、友達と一緒に時間を過ごすための最新かつ最高の言い訳に過ぎない」
こうしたソーシャルゲームの人気が高まる中で、新規参入者たちは予想外の方法でそれらのゲームを利用するようになっている。ニューヨーク州選出のAlexandria Ocasio-Cortez下院議員(共和党)は、すでにオンラインゲームを利用して、チャリティーのための募金活動を支援している。コロナ禍で、オンラインゲームを利用してバーチャルな誕生日パーティーを開く家族もいる。
現在ではPlayful StudiosのCEOを務めるBettner氏は、「これらの新しいテクノロジーの波が到来したからといって、必ずしもわれわれが全く新しい種類のゲームを作り出す必要はない」と話す(Playful Studiosの2016年のアドベンチャーゲーム「Lucky's Tale」は初期のVRファンの間でヒットした)。「新しいオーディエンスに、新しい方法でリーチできるようになる、ということにすぎないのだ」
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