「2040年の未来」に向けたENEOSの投資事業--長い旅路の始まりとなるCVCの2年半 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2021年12月31日 09時00分

交換式車載電池、ブルーカーボンなど、これまでの投資実績

——これまでに投資してきた事例としては、どのようなものがあるか教えていただけますか。

 1つはサンフランシスコのスタートアップであるAmpleです。EVが搭載しているバッテリーを丸ごと交換する仕組みで、バッテリーが切れても短時間で走行を再開できるようにするというコンセプトです。街中の至るところにバッテリー交換用のステーションをネットワークとして張り巡らせることで、充電するのではなく、バッテリーをどんどん交換していこう、という世界を作り上げようとしています。

EVが搭載しているバッテリーを丸ごと交換するスタートアップ「Ample」(同社のウェブサイトより)
EVが搭載しているバッテリーを丸ごと交換するスタートアップ「Ample」(同社のウェブサイトより)

 タクシーや小型の宅配車両などは、一定の範囲内をぐるぐる巡回するものなので、大きなバッテリーを搭載するより小さなバッテリーで小回りよくする方が効率的だと考えられます。サンフランシスコのベイエリアなどでは社会実装もスタートしているところです。

 同様のモビリティ、バッテリー、エネルギー分野の事例としては、蓄電池制御システムをもつMIRAI-LABOへの出資が挙げられます。われわれとしては住宅やビル、工場などに向けた定置型バッテリーサービスを提供するところと、使用済みバッテリーの劣化診断をするところで協業していて、バッテリーのリサイクル部分はまた別の会社とタッグを組んで進めています。

 低炭素社会、循環型社会の領域では、ウニノミクスとの協業があります。ウニノミクスは中身が空のウニを除去することで海藻が育ちやすい環境をつくっている企業です。海藻を増やすことで二酸化炭素を吸収・隔離する、いわゆるブルーカーボンを実現できると考えられていますので、それによって低炭素社会に貢献できます。

 ブルーカーボンに持続的に取り組むとなると、事業として成り立つような仕組みになっていないと難しいものです。ウニノミクスは事業としてしっかり取り組まれていますので、持続可能なビジネスであると感じて出資を決めました。

 名古屋のウェイストボックスにも出資しています。製品を製造して輸送し、販売して消費する、それら一連のサイクルのなかで排出される温室効果ガスの総量などを示すカーボンフットプリントですが、会社全体や事業部門1つ1つで実際のところどうなっているのか、という把握は実は困難です。

 しかし、ウェイストボックスでは、そのカーボンフットプリントを把握できるようにしたうえで、カーボンクレジット化して社会で循環できるプラットフォームを構築しています。クレジット化されることでカーボンフットプリントが持続可能なものになりますし、われわれとしてもクレジットを獲得したいと思っていますので、そうした目的から出資を行っています。

 ほかには、ベトナムなどの日本国外にいる高度人材を日本企業に紹介するOne TerraceとのHR領域における協業や、無人ブースを使ったヘルスケアサービスをネクイノと共同で開発する取り組みなども進めているところです。

——そうした出資先について、ENEOSのコア事業とのシナジーはどれくらい求められるものなのでしょうか。

 たとえば今申し上げたヘルスケアに関しては、コア事業からかけ離れているように見えるかもしれません。しかし、日本全国にあるわれわれのサービス拠点、これを何らかの形で他の用途に活用するという大きな発想の転換が鍵になるとも思っています。

 ガソリンスタンドという形で約1万3000軒のネットワークがありますから、そこに無人ブースを物理的に置いておけるとなると、より広がりのある展開が考えられるのではないか、あるいは本当の意味でサービスとして提供していくことにつながるのではないか、と捉えています。

——海外企業への投資はどのような状況ですか。

 これまで投資、協業してきた28社のうち6社が海外企業で、他が日本企業です。投資額で言えば43%ほどが海外企業になっているかと思います。しかし、グローバルを見てみると、日本のイノベーションはそれに比べてすごく小さいんですよね。ですから、本来であれば出資比率や投資件数もそれに比例すべきだと思っています。つまり、海外企業への投資が多い方が自然ではないかと。

 ただ、そう思いながらも、われわれ自身が日本国内で活動していて、せっかくだから日本に投資していきたいという思いもありますから、そういう観点で件数としては日本のスタートアップの方が多くなっています。ですが、これからはもっと海外の案件にも関わっていきたいと思っています。

——研究機関との協業などもしているのでしょうか。

 マサチューセッツ工科大学とは定期的にカンファレンスコールをしていますし、そこで相談して企業を紹介してもらい、ピッチを拝見してわれわれとマッチしそうなら投資や協業をしていく、ということもあります。実際にそういう形で始めたところも低炭素の分野で1社あります。

 国内の大学とも連携して、そのつながりで企業などを紹介していただくこともあります。たとえばEサーモジェンテックという企業は大阪大学と京都大学のなかにR&D拠点がある企業で、温度差で発電する熱電素子を作っています。製油所は「これ以上は不可能」と言われるほど徹底した省エネ化が進んでいるのですが、製油所のなかで熱をもっている部分にこのデバイスを取り付けて発電すれば、これまでとは異なる視点からエネルギーの課題を解決できることになります。

ENEOSホールディングスが資本参画するEサーモジェンテックの熱電モジュール
Eサーモジェンテックの熱電モジュール

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