「2040年の未来」に向けたENEOSの投資事業--長い旅路の始まりとなるCVCの2年半

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2021年12月31日 09時00分
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 おそらく多くの人がガソリンスタンドを思い浮かべるであろうENEOS。石油にかかわるエネルギー事業がメインの同社を傘下にもつENEOSホールディングスだが、2019年4月にENEOSイノベーションパートナーズ合同会社を立ち上げ、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の活動にも力を入れている。

 3年間で150億円という、国内のCVCとしては比較的大規模な投資額を設定したことで注目を集め、スタートからの2年半で着実に投資実績を積み重ねてきた。「2040年の未来を描く」ために、環境を意識した新しい事業創造を目指す同社のこれまでの取り組みはどのような成果を上げているのか、ENEOSイノベーションパートナーズ代表の矢崎靖典氏に話を聞いた。

ENEOSイノベーションパートナーズ代表の矢崎靖典氏
ENEOSイノベーションパートナーズ代表の矢崎靖典氏

事業創造は「5つの注力領域」で

——ENEOSイノベーションパートナーズは、どういったCVCなのか教えていただけますか。

 ENEOSは石油のような化石燃料を扱う、いわばカーボンリッチな事業が主軸です。しかし、持続可能性が叫ばれるこれからの時代、ビジネス構造を大きく変えていかなければなりません。そんな中で、新たな事業創造を目指すために設けたCVCが、われわれENEOSイノベーションパートナーズとなります。

 2019年10月に発足し、2年以上が経過して、当初のチーム体制が6名だったところから現在は28名にまで増えました。今後もおおむね30名ほどの体制で進めていこうと考えています。

 CVCではありますが、われわれ独自の判断で億単位の投資決裁を可能としている点は特徴の1つかと思います。親会社の経営会議などに答申しなければいけない、というような制約はありません。

 グループの中期経営計画では、2020~2022年度の3年間に関しては150億円の枠を設定しています。直近の6カ月間では7件に出資し、2021年上半期までの累計出資規模は28社、95億円ほどという状況です。

——投資先として重視している分野などはあるでしょうか。

 基本的にはスタートアップとコラボレーションしながら事業創造していく形ですが、注力領域は「まちづくり」「モビリティ」「低炭素社会」「循環型社会」「データサイエンス&先端技術」の5つとしています。

 「まちづくり」については、持続可能なエネルギー供給ができるよう、それに資する事業を作っていきたいですし、「モビリティ」では、これまでガソリンなどの燃料供給の部分で関わってきましたが、EVのような新たなモビリティに対してもインフラを提供していくなど、モビリティの進化にともなう事業も創造していきたいと考えています。

 また「低炭素社会」に関しては、二酸化炭素を削減する取り組みも進めていきます。とはいえ今後も二酸化炭素は一定程度排出せざるを得ないところもありますので、排出されたものを取り込んで無害なものに処理する、ということも考えていかなければなりません。

 たとえば、大気中の二酸化炭素を直接取り込んで何らかの形で処理する「ダイレクトエアキャプチャー」と呼ばれるものがあります。今はものすごくコストのかかる技術ではありますが、将来的にはテクノロジーの進化で現実的なレベルになってくるのではないかと期待しています。

 「循環型社会」については、たとえばどんな廃プラスチックも元に戻せる、という世界を作っていければ。ペットボトルはすでに実現しているわかりやすいリサイクルの例ですが、実際のところ、他の多くのプラスチックはもっと複雑な形で捨てられています。

 木くずと一緒になっていたり、金属が混じっていたりして、結局それらは今のところ埋め立てられてしまっています。しかし、そういった再生困難なプラスチックも社会に循環させていかないと意味がないと思っているんです。

 われわれは製油所をいくつももっていますが、原油にはもともといろいろな不純物が混じっていて、それを製油所で分離、精製してガソリンなどにしています。そうしたノウハウを廃プラスチックに活かすことができれば、あらゆるプラスチックを再生できることになります。

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ENEOSイノベーションパートナーズが注力する5つの領域と投資先

 いずれは、今後ますますニーズが高まるだろうリチウムイオンバッテリーなども再生できるように、循環型社会に資する事業をやっていければ、と考えています。最後の「データサイエンス&先端技術」というのは、他の領域すべての背後で動いているものですから当然やっていくべきものになります。

——投資先や提携先はどのような方法で見つけることが多いのでしょうか。

 国内・国外の企業を問わず、私たちからアプローチしてエンゲージする、スカウティングのパターンが最も多いですね。加えて、現在は常時募集型のアクセラレータープログラムも実施しています。2020年から募集を始めて、これまでに105件の応募があり、そのうち3件を採択しました。

 「こういう世界を作りたい」という思いがスタートアップのみなさんそれぞれにあって、それとわれわれの思いがうまく合致するかどうかが肝になります。技術が優れているということだけでアプローチする、採択する、というようなことはありません。

——イベント型のアクセラレータープログラムを実施されていないのはなぜですか。

 2018年と2019年はイベント型のアクセラレータープログラムもやっていたのですが、今はやっていません。端的に理由を言うと「効率的じゃない」ということに尽きます。

 最初の頃はENEOSが投資事業をしていることに関する認知度が低かったのですが、しっかりとした投資実績を作ってきたことで、自分たちからノックしてスカウティングできるようになりました。

 イベント型のアクセラレータープログラムはすごく手間がかかるので、それよりは常時「相談してください」という形でウェブで募集した方がいい。少なくともわれわれの今のフェーズは、イベント型で実施するタイミングではないと考えています。

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