「2040年の未来」に向けたENEOSの投資事業--長い旅路の始まりとなるCVCの2年半 - (page 3)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2021年12月31日 09時00分

CVC活動は始まったばかりの「終わりのない長旅」

——スタートアップにとって、ENEOSと組むことの意義やメリット、魅力はどんなところにあると考えていますか。

 5つの注力領域について、われわれ自身が変えていきたい、やりとげたいという気持ちがあって、そもそもスタートアップの方々もその領域に強い思いをもっているわけなので、一緒になってスムーズに伴走できるというのはあると思います。

 そのうえで、スタートアップにとってはスケール感のある形で進めなければいけないという課題感もあります。全国にガソリンスタンドという拠点があって、エネルギーインフラを担っており、資金力も一定程度あるわれわれに対して、企業として信頼していただけているのかな、とも感じています。

 とりわけ日本全国にスケールしていくときに膨大な拠点があるというのは、スタートアップとしてはユーザーとのタッチポイントを作りやすいと考えるところもあるのかもしれません。

——ここまで約2年半の成果を、矢崎さんご自身ではどのように評価されているでしょうか。

 事業創造という観点でいくと、ようやく事業化フェーズに入りつつあるものがいくつか出てきています。たとえばAIベンチャーのPreferred Networksに対し、2019年に当時のJXTGグループ(現ENEOSグループ)として出資しましたが、2021年6月にはさらに共同出資でPreferred Computational Chemistryという合弁会社を作って、原子レベルでの材料探索を行うクラウドサービスの提供を始めています。これはある意味、投資のイグジットの1つのスタイルではないかなと思います。

 最近は、自分たちの投資ポートフォリオを財務的にも見ています。最初のラウンドで出資して、その後ユニコーン企業になったAmpleのように、財務的な価値が膨らんでいるものもあります。自分たちのポートフォリオそのものが成長しているわけなので、この2年半でやってきたことは、平均的なCVCと比べるとだいぶ進んでいるところもあるかもしれません。

 ただ、そうはいっても、こうしたCVCの活動は終わりのない長い長い道のりです。目標としている事業創造にどうやってつながったか、というのはこれから問われるところでしょう。が、少なくとも最初のつかみに関しては、すんなり入れただろうなとは思っています。

——今後の展望について教えてください。

 昨今の社会的な要請や、足下の可能な技術のなかでいろいろな活動をしていますが、究極の姿としてはカーボンニュートラルな世界になっていくことなので、そこに向けてどんどん先へ進めていかなければなりません。

 事業創造という形でも取り組んでいますので、5つの注力領域に資するアイデアをお持ちの会社さんにはどんどんアプローチしてきてほしいと思っています。実証実験を始めましたではなく、この事業を実際に始めましたという具体的な事例を1つでも2つでも出していきたいですね。

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 今のところ弱いと感じているのは、低炭素のディープテック領域です。お金もかかるし、ものすごく難しい分野ですから、日本の企業で関わっているところは少ない。もちろんわれわれも取り組んでいきますが、その領域でのプレーヤーはまだまだ必要ですね。

 電動モビリティについては、すでに多くのプレーヤーが存在していますが、問題はそれをどうやって根付かせるのか。たとえばインフラが足りていないという課題があって、それを解決するにしても、きちんと考えないと意味のない、使われないインフラを作って終わってしまう可能性もあります。スタートアップのアイデアも必要ですが、どうやって成立させていくかという事業アイデアも重要になってくると考えています。

——150億円の枠というのは2022年度までの計画ですが、2023年度以降はいかがでしょうか。

 そこは経営判断なので、第3次中期経営計画の範ちゅうになってくるかと思います。ただ、当社の責任者として私が思うところは、先ほども申し上げたようにCVC活動、イノベーションの世界というのは終わりのない長旅であること。その間にテクノロジーも変われば社会情勢も変わるわけですから、延々とアップデートし続けていかなければならないことなのですよね。

 他社のCVCも長い歴史をもっていますし、私たちの活動もそれと同じことなのだなと思っています。ウェブサイトでは「2040年の未来を描く」という風に言っていますが、その頃にはまた誰もが予想のつかない世界になっているでしょう。いずれ時代が変われば、そもそもCVCとしての事業のやり方も変わるかもしれません。いろいろなことがどんどん変化していく終わりのない旅であるというのは、常々私が感じているところですね。

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